コンピュータ以上? 無駄なものを覚えない人間の脳プレゼンがうまい人の「図解思考」の技術(1/2 ページ)

人間の脳はパターン化によって効率を上げることが得意です。コンピュータの強みである数字や文字列の処理能力と人間の脳の良いところをうまく組み合わせることで、より効果的な学習効果が得られるでしょう。

» 2012年05月11日 15時05分 公開
[永田豊志,Business Media 誠]

 脳の記憶のメカニズムは、よくコンピュータ(電脳)に例えられます。実際、脳もコンピュータも短期記憶で作業を行い、長期記憶に格納しておき、必要なときに取り出すという意味では非常に似ています。コンピュータのメモリ(RAM)に当たる部分が人間の海馬で、HDDに当たる部分が大脳皮質です。

デジタル+アナログが人間の脳の特徴

 脳の仕組みは皆さんご存じのようにニューロンと呼ばれる神経細胞が電気信号を伝えることで情報をやりとりしています。これも、コンピュータの電気信号と同じ信号が「1(ある)」「0(なし)」のデジタル情報という意味では同じです。ただし、ニューロンとニューロンの間で情報を伝えるシナプスは化学物質なんです。つまり、情報が伝わる過程で、何度もアナログ回路を通るわけで、これが人間の脳の特徴となっているのです。

 どういうことかというと、何度やりとりしても何十年保管していてもデジタルは正確無比で変異することがないのに比べて、人間の記憶はあいまいだということです。最初は黒だと思っていたものも数年経つと「あれはグレーだったのか、もしかしたら白に近かったのかもしれない」と思うくらい不正確です。しかし、これは何も人間の脳がコンピュータに劣っているということではないのです。

無意味なものを覚えない効率的な人間の脳

 人間の脳は実は非常に効率的なのです。何に対してかというと、「無駄なもの、無意味なものを排除しようとする」ことに対して効率的なのです。無駄なことを覚えておくと、それにより脳は無駄なカロリーを消費することになります。限られた容量をうまく使いこなすために、本当に必要なものだけを選別して、長期記憶に残そうとします。一番重要なのは生命にかかわることなので、危険な目に合ったり、快感も含めて激しい感情を伴う体験は記憶に残りやすいといえます。

 一方で、数字や文字の羅列のような無意味(学習上は無意味でないとしても)なものは、なかなか受け付けてくれません。そのため、何度も繰り返すことで脳に刺激を与え、この情報の「優先順位」を上げるしかないのです。これが、勉強における「復習」のメカニズムです。

  電脳(コンピュータ) 脳(人間)
短期記憶の保管 メモリ 海馬
長期記憶の保管 HDD 大脳皮質
伝達方法 デジタル(電気信号) デジタル(電気信号)+アナログ(化学物質)
正確性 正確(それ以外はエラー) あいまい(不正確なものも受け入れ)
伝達される情報 全て 必要なものだけ優先順位の高いもの
パターン認識 苦手 得意(未知の問題解決能力が高い)
記憶の種類 知識記憶 経験記憶(感情や感動がセット)

 一方、コンピュータに復習は必要ありません。ゴミ情報も、大事な情報も優先順位などは一切ありません。そのまま、HDDに丸ごと保存され、必要に応じて検索され、取り出されます。数字や文字の羅列をしまうにはもっとも適したシステムです。しかも、最近ではAI(人口知能)による学習機能をもったシステムも一般的になり、自律的に改善していくこともできるようになっています。

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