スマホ前提時代、スマート文具の役割はどうなる?スマート文具サミット(1/2 ページ)

最近話題のスマートフォン連係文具や文具業界の未来について語る座談会の第2回。ショットノートなど、現状のスマート文具はどのような用途に向いているかなどの話が飛び出しました。

» 2012年04月20日 16時20分 公開
[上口翔子,Business Media 誠]

 文房具やガジェット好きの6人に、昨今話題となっているスマート文具について語ってもらう座談会。第1回では、手書き文字をスマートフォンで撮影してデジタル化するノートやメモ帳は現状どのようなものがあるかという話から、ドキュメントスキャナを使った電子化についての議論展開となりました。

 第2回は座談会参加者が現在のスマート文具に対して持っている率直な感想や、周辺の人のスマート文具の使い方の話を交えながら、現状でのスマート文具やその将来性についてざっくばらんに語った内容を紹介します。

 スマート文具

参加者紹介
参加者 氏名・肩書・文具とのかかわりなど
shk_sz01b.jpg 高畑正幸(たかばたけ・まさゆき)さん
文具メーカー勤務・文具王

「TVチャンピオン」(テレビ東京系列)の文房具通選手権に過去3回参加し、全て優勝した“文具王”。「未来の普通は無理して買え」をポリシーとし、既存の文具のみならず、次世代の文具やガジェットも積極的に使う。
shk_sz01f.jpg 美崎栄一郎(みさき・えいいちろう)さん
著述家

会社員時代から文房具が好きで、文具術や仕事術に関する書籍を複数出版し、勉強会なども主催。2011年にフリーランスとなり執筆や全国で講演活動などを行っている。
shk_sz01d.jpg 土橋 正(つちはし・ただし)さん
文具コンサルティング

文具の展示会「ISOT」の事務局を経て、土橋正事務所を設立。文具メーカー、文具ショップのコンサルティングをはじめ、文具ウェブマガジンの発行、数々の執筆活動やテレビ、雑誌にコメントを寄せている。
shk_sz01c.jpg 竹村 譲(たけむら・ゆずる)さん
富山大学非常勤講師

DOS/V生みの親の1人であり、32年間の日本IBM勤務中に約20年ThinkPadのほかIBMのパソコンに携わった。現在は大学の非常勤講師としてブランドデザインやメディアリテラシーを教えている。ツバメノートの別製「Thinking Power Notebook」の発案者。
shk_sz01e.jpg 舘神龍彦(たてがみ・たつひこ)さん
手帳評論家

手帳評論家として手帳の活用術などに関する書籍出版や講演活動を行っている。スマートフォンと手帳、また電子ペンといったアナログとデジタルの融合についても探求。
shk_sz01a.jpg 清水敬輔(しみず・けいすけ)さん
会社員

会社員として勤務する傍ら、さまざまな朝活に参加するようになって5年。最近は、休日の朝カフェに集まりお薦めの文具を持ち寄って紹介するという「文房具朝食会」の運営にかかわっている。

 話はまず、キングジムの「SHOTNOTE(ショットノート)」が発売から約1年で累計販売冊数100万冊を突破した話題から始まります。

これからの文具は、スマホ持っている前提!?

高畑正幸さん ショットノートが100万冊売れましたね。これはすごいことですが、恐らくその背景にはiPhoneなどのスマートデバイス端末が普及したことがあると思います。というのも、これまで手書き文字をデジタル化する製品といえば、数万円くらいする電子ペンなどを購入する必要があり、手を出すハードルが少し高かったですよね。それがショットノートが出てきたことで、スマートフォンを持っていれば、数百円払うだけでそれができるようになりました。

 2010年まではスマートフォンユーザー自体が世の中では全然マイナーな存在で、メーカー側も「そんなのスマートフォン持っている人だけの話でしょ」だったのが、2011年には「スマートフォン持っていますか? ならこんな製品(ショットノートなど)があるんですよ」と言えるようになり、2012年にはもう「みんなスマートフォン持っているよね、だからそれ前提で製品を作るよ」という風に変わってきているのだと思います。

清水敬輔さん 確かに手書きのデジタル化というものにとっつきやすくなったのはありますよね。それで私も先ほど(座談会第1回)言ったように買ってみた1人です。ただ、そのうち僕自身が別にショットノートでなければいけないというシーンがなくて……こうすれば使い続けられるというような将来像はありませんか?

舘神龍彦さん 私の知り合いで記録物は全部「CamiApp(キャミアップ)」にしたという人がいましたね。ただその人がどういう意図でそうしたかは分からないですが。

土橋 正さん 私はお気に入りのノートがあるので、手書き文字を書いた紙をデジタル化する場合にはそれをドキュメントスキャナで取り込むという方法をとっていますね。

高畑さん この座談会に参加している人はまさに先をいっているので、将来的にはきっと清水さんのようにノートは何でもよくって後はアプリで取り込むとか、土橋さんのようにスマートフォンではなくスキャナで電子化するという方向に向かっていくんでしょうね。

今持っているノートでデジタル化が当たり前に時代に

美崎栄一郎さん 私などは最初「スキャンノート」(各ページを切り離せるミシン目付のノートで、切り取り後、まとめてスキャンする用途に向く)を見たときに、別に普通のノートでも切れるじゃんと思ったんですよね。もしくはそもそも1枚すつ分かれているルーズリーフでいいじゃん、と。

竹村 譲さん でもきっと何かの市場調査の結果でスキャンノートのように切れるノートがいいとなったんですよ(笑)。

舘神さん キングジムはスキャンノートを足掛かりにルーズリーフ市場に殴り込みをかけようとしているとかね。

竹村さん きっと一般の人は美崎さんと少し違う感覚で、普通の紙をスキャンする人ってあまりいないと思うんですよ。だから紙やノートをスキャンする、という方法を大衆に知らせるエントリーポイントとしては、ピンポイントでスキャンノートのような製品があっていいと思います。ただきっと、長続きはしないですよね。そのうち皆さんのように、普通の紙で良いって誰でも気付くでしょう。

高畑さん 皆がスキャンするのが普通というフェーズまで行くと、スキャンノートのような製品はいらなくなりますね。きっと10年後には「スキャンノートってものが出ていたよね」という話になると思います。分かりやすい例で言えば、携帯電話の出始めのころって「携帯電話ってこう使うんですよ」というグッズがあったはずなんですよ。今出ている製品は「紙をスキャンできる」とか「手書き文字をデジタル化できる」というのを解説したグッズということです。つまりはまだ手書きのデジタル化や紙の電子化ということが過渡期だという証明でもありますね。

舘神さん ScanSnap(PFUのドキュメントスキャナ)のCMにAKBか何かを出せば、紙のスキャンは一気に一般化しそうですけどね(笑)。というのは冗談で、CD-ROMが出てきたときも「大容量データを使うためにこういうことができる」と、知らせるための製品として動く絵本とかがありましたね。きっとそんな感じでしょう。

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