電子文具の未来を占う――スマホで手書きのデジタル化は一般化する?スマート文具サミット(1/2 ページ)

文房具やガジェット好きの6人に、昨今話題となっているスマート文具について語ってもらう座談会。第1回はショットノートなどスマートフォンと連係するノート、メモについて議論してもらった。

» 2012年04月16日 09時45分 公開
[上口翔子,Business Media 誠]
スマートフォンと連係する文具

 2011年のヒット商品といえばスマートフォンだ。文具業界もその波を受け、スマートフォンと連係するグッズが数多く世に出た。

 例えば「SHOTNOTE(ショットノート)」。これはキングジムが発売した手書きメモをスマートフォンで撮影してデジタル化する製品だが、誠 Biz.IDでも紹介したところ、またたく間に1000ツイート獲得するなど、注目度の高さがうかがえる。

 ショットノートに追随するように各メーカーから類似製品も続々と登場している。そこで今回、誠 Biz.IDではこうしたグッズを「スマート文具」とし、業界の有名人たちと一緒にこのスマート文具について議論する場を設けた。これから全6回にわたり、その模様をお伝えする。どうなる、スマート文具――。

 スマート文具
座談会に参加した皆さん(左から舘神龍彦さん、竹村 譲さん、美崎栄一郎さん、清水敬輔さん、土橋 正さん、高畑正幸さん)
参加者紹介
参加者 氏名・肩書・文具とのかかわりなど
shk_sz01b.jpg 高畑正幸(たかばたけ・まさゆき)さん
文具メーカー勤務・文具王

「TVチャンピオン」(テレビ東京系列)の文房具通選手権に過去3回参加し、全て優勝した“文具王”。「未来の普通は無理して買え」をポリシーとし、既存の文具のみならず、次世代の文具やガジェットも積極的に使う。
shk_sz01f.jpg 美崎栄一郎(みさき・えいいちろう)さん
著述家

会社員時代から文房具が好きで、文具術や仕事術に関する書籍を複数出版し、勉強会なども主催。2011年にフリーランスとなり執筆や全国で講演活動などを行っている。
shk_sz01d.jpg 土橋 正(つちはし・ただし)さん
文具コンサルティング

文具の展示会「ISOT」の事務局を経て、土橋正事務所を設立。文具メーカー、文具ショップのコンサルティングをはじめ、文具ウェブマガジンの発行、数々の執筆活動やテレビ、雑誌にコメントを寄せている。
shk_sz01c.jpg 竹村 譲(たけむら・ゆずる)さん
富山大学非常勤講師

DOS/V生みの親の1人であり、32年間の日本IBM勤務中に約20年ThinkPadのほかIBMのパソコンに携わった。現在は大学の非常勤講師としてブランドデザインやメディアリテラシーを教えている。ツバメノートの別製「Thinking Power Notebook」の発案者。
shk_sz01e.jpg 舘神龍彦(たてがみ・たつひこ)さん
手帳評論家

手帳評論家として手帳の活用術などに関する書籍出版や講演活動を行っている。スマートフォンと手帳、また電子ペンといったアナログとデジタルの融合についても探求。
shk_sz01a.jpg 清水敬輔(しみず・けいすけ)さん
会社員

会社員として勤務する傍ら、さまざまな朝活に参加するようになって5年。最近は、休日の朝カフェに集まりお薦めの文具を持ち寄って紹介するという「文房具朝食会」の運営にかかわっている。

 ショットノートに代表されるスマート文具が普及を続けているのは確かだが、果たしてこの流れは、定番のものになるのだろうか。それとも一時的なものなのだろうか。まずは文房具朝食会を開催するなどして、文房具ユーザーの草の根ネットワークを築いている清水さんが口火を切った。

ショットノート、使ってますか?

清水敬輔さん ショットノートは発売当初に買って使ってみたのですが、いまいち使い道が分からずその後買い増しはしていません。私のような人もいると思うのですが、皆さんの周りではどうですか?


ショットノート。専用のスマートフォンアプリ「SHOT NOTE App」を起動し、メモ書きしたノートを撮影。アプリがショットノートの四隅のマーカーを読み取って台形補正や色補正し、スマートフォンの画面ぴったりに取り込める

高畑正幸さん ショットノートにしてもコクヨS&Tの「CamiApp(キャミアップ)」やナカバヤシの「スマレコ」シリーズにしても、今発売しているスマート文具と言われる製品は、スマートフォンなどのガジェットを使い慣れている人からすれば、実は他の機器やアプリで代用できるものばかりですよね。例えば撮影した画像を台形補正をしてくれるアプリや、その画像をデータとして取り込むアプリは既にありますから。

 デジタル化の仕組みを単なる画像データとして保存するのではなく、テキスト部分をOCR(光学式文字読み取り装置)処理してテキストデータに変換するオーリッドの「KYBER」について言えば、ノート付(KYBER SmartNote)を買わなくてもKYBERにお金を払えば自分が普段使っているノートでもテキストをデジタル化できます。

 逆に言うとそういうことに慣れていない人、スマートフォンで取り込んでデータ保存しておく習慣がない人向けのものだと思います。スマートフォンで取り込むのがありだというのが皆にまだ定着していないところに、メーカー側が「こういうやり方があるんだよ」というのをパッケージ化した。そういう製品といえるのではないでしょうか。

ノートをスキャンするという方法を教えてくれた

美崎栄一郎さん キングジムの「スキャンノート」(各ページを切り離せるミシン目付のノートで、切り取り後、まとめてスキャンする用途に向く)とかもまさにそうですよね。別にスキャンノートを買わなくても、普通のノートをただ切り取ってスキャンすればいいわけですが、それを分かりやすく提示している。

土橋 正さん 高畑さんの意見はすごく納得感があって、私自身、ショットノートのおかげでノートやメモをスキャンしてデジタル保存することを整理して教えてもらいましたね。「あ、こういうやり方があるんだ」と。今はショットノートがなくても、自分のノートとドキュメントスキャナで同じことができています。

舘神龍彦さん  ノートはスキャンされてもいい――ショットノートはこういうメッセージそのものを商品の形にした点がある種画期的だったかもしれませんね。

 ただ、高畑さんも指摘したように、メーカーが提示している“先進的なイメージ”は既存アプリなどの組み合せで十分に実現可能といえば可能なわけです。ユーザーは、ショットノートという製品を買うことで「スキャンするノート」の使い勝手とイメージにお金を払っているんじゃないかと思います。

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