コーチングは「逃げ」? 徹底的に構造化してますか?説明書を書く悩み解決相談室(1/3 ページ)

上司が部下を指導する際に重要となるスキルの1つが「コーチング」。ただしこのコーチング、必要な説明をしないまま安易に使うと、ただの逃げになってしまうのです。

» 2012年03月21日 11時00分 公開
[開米瑞浩,Business Media 誠]

 文書化支援コンサルタント、開米瑞浩の「説明書を書く悩み解決相談室」第20回です!

 上司の立場から部下指導をするに当たって重要だといわれるビジネススキルの1つが「コーチング」。「ああしろ、こうしろ」という指示命令ではなく、「君はどう思う?」といった質問を通じて相手の気付きを促し、自発的な行動を引き起こすマネジメント方法です。日本でも10年ぐらい前から知られるようになりました。

 聞くところによると、米国で2つのコーチ養成団体「Coach University」と「コーチ21」が設立されたのが1992年、今から20年前です。私自身は94年ごろに、日本でコーチングの導入をしている団体の関係者に会ったことがありました。

 その後1999年に日産自動車社長に就任したカルロス・ゴーン氏は自ら「私は日産のコーチである」と自認し、コーチング的マネジメントを社内に広めたとされています(参考書籍『カルロス・ゴーン流リーダーシップ・コーチングのスキル』)

 これが1つの契機となり、日本でもコーチングというビジネススキルが流行し始めましたといわれています。

 ところが、先日ある会社の役員氏と1杯飲んでいたところ「俺、コーチングって嫌いなんだよね〜」という話題になりました。詳しく聞いてみると、コーチングという手法そのものは役に立つことを認めるものの、コーチング信者的な人物がかもしだす独特の雰囲気が肌に合わないというような話でした。

 実は同様の話を他にも複数の人から聞いています。うち1人は実際に現場でコーチング的手法をバリバリ使っているはずのコンサルタント氏であり、もう1人はコーチングに関する連載記事を某ビジネス雑誌で担当していた編集者でした。

 そこで今回はコーチング的手法を安易に使うのは「逃げ」かもしれないという話を書きます。

 コーチングは、「質問を通じて相手の気付きを引き出す方法」と一般に言われています。それ自体は間違いではないし、有益な場面も多々ありますが、一方で安易な乱用がされやすい方法でもあります。それは一体どういうことなのでしょうか?

必要な「説明」を十分しないままコーチングに逃げていませんか?

 本来、上司が部下に業務指示をするときには、説明しなければいけないことが数多くあります。「○○をやってくれ」という直接の指示だけでなく、それを必要とする背景事情や、それによって問題が解決する理由など、いろいろと説明しなければいけないはずなのです。

 ところが、本連載も「説明書を書く」ことだけをテーマに連載20回目を迎えるように、「説明する」のは簡単ではありません。ですので、「指示命令ではなく質問をしよう」と、説明しないことを正当化するような理屈があると、思わずそちらへ逃げを打ちたくなっても無理はないわけです。

 しかし、実際には「質問だけで全てが解決するはずはない」のです。説明をして、指示することが必要な場面は確実にあります。そんなときは、説明から逃げてはいけません。

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