今までの分はとりあえずアーカイブ、過去の「寝た子は起こさない」あなたの不安、見積もります

デジタル化するとデータが膨大になりますが、新しい整理法を実行に移す際は、過去のデータを精密に分別するのはやめた方がいいです。

» 2012年02月17日 15時25分 公開
[佐々木正悟,Business Media 誠]

 何か「上手な整理の方法」を思いつくと、その方法に沿って整理したくなるということがあると思います。iTunesの中身や写真、自炊した雑誌、Gmailの連絡先、Evernoteの中身……。整理する対象は何でもいいのですが、上手な整理法を考えたなら必ず「今から未来のデータだけ」か、せいぜいここ1カ月以内に入手したデータから始めるといいです。過去分はアーカイブして「将来の課題」としましょう。

 なぜこんな話をするのかというと、最近、家計簿に関する質問をいただいて仰天したからです。「佐々木さんは、収支を全部1円単位で記録して、残高との差異がないようにしているそうですが、過去分も全部そうするべきですか?」との質問です。確かに私自身、小学校1年生の時からお小遣い帳をつけていて、当時のノートをかき集めれば「今日まで、使途不明金はゼロです」と言うことも可能かもしれません。ですが、私はたぶん例外的な人間で、他の人までそうするべき理由はまったくありません。

 過去分の明細など気にしないようにしましょう。家計簿には「今日の残高」だけを明らかにして「今日以後を正確に」すればいいのです。そしてこのことは、メールの受信トレイだろうとiTunesだろうと同じことだと思います。

インボックスゼロを頑なに守りつつ……

 「今日の残高」という基準線を1つだけにするのがポイントです。これのみを墨守するようにするのが、この手の「面倒ごと」を継続的にメンテナンスするコツなのです。

 例えば私のGmailのラベルやフィルタリングのルールは、たぶん混沌としているでしょう。「深層の方」がどうなっているのかさっぱり分かりません。でも私は毎日受信トレイをゼロにできます。それで十分なのです。

 そもそも交友範囲が狭く、大事な方からの連絡はあまりメールでやってこない私は、こちらからも極力メールしないようにしています。とはいえ、これは私の個人的な事情であり、その人その人の事情にしたがって「どの箱をゼロにすればいいか」「それにどのくらいの時間をかけるか」を決めればいいのです。

 何百通と受信するメールを相手にするのが仕事であるという人は、こんなやり方ではすまないでしょうし、ゼロにもならないでしょうが「何かをゼロにすること」を毎日続けていれば習慣が継続し、仕事が回ると思える方が楽です。

寝た子は起こさない

 例えば私の実家には私の子供のころの写真がアルバムに眠っていますが、あれを掘り起こす気にはとてもなりません。でも、日々撮影している最近の写真は毎日EvernoteとPicasaで整理できています。これも「インボックスゼロ」です。

 私にはこうした処理すべきインボックスが7つくらいあって、毎日回遊して「ゼロにする」というのが習慣です。これだけをやっておけば、後で振り返るのに困らないからです。もちろん「インボックスゼロ」をはじめる以前の「眠っていたデータ」は眠ったままですが、それを含めて新しい整理システムに組み込もうとすると大変なことになってしまいます。

 これから先の人生、写真も音楽もたくさん入手するはず。うまく整理できるなら、その時から先だけを扱っていけばいいのではないでしょうか。家計簿は、思い立った日以後のものだけを相手にしましょう。「現在残高」から出発し、挫折しそうになったらまた「所持金と合うように」残高調整という項目を追記すればいいのです。


筆者:佐々木正悟

 心理学ジャーナリスト。専門は認知心理学。1973年北海道生まれ。1997年獨協大学卒業後、ドコモサービスに派遣社員として入社。2001年アヴィラ大学心理学科に留学。同大学卒業後、2004年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。2005年に帰国。著書に、『スピードハックス』『チームハックス』のほか『ブレインハックス』、『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』、『やる気ハックス』などがある。「シゴタノ!−仕事を楽しくする研究日誌」にて「心理ハック」を連載中。ブログ「ライフハックス心理学」主宰。


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