使い方はさきの動画のとおりで、本体手前のガイド部に原稿を差し込み、専用アプリのスキャンボタンをタップするだけ。読み取ったデータはJPG形式でカメラロールに保管され、原稿はそのまま背面にストレート排出される。背面に排紙される場所がないと、原稿がグチャグチャに曲がってしまいかねないので気を付けたい。このあたりの注意点は、一般的なポータブルスキャナと基本的に同様だ。
カメラロールに保存した画像は、メールで送信したり、プリントしたりと、カメラロール側の操作でさまざまな用途に使える。EvernoteやDropboxなどのアプリで開いてアップロードすることももちろん可能だ。このあたりは普段使っているアプリの機能をそのまま使えるので馴染みやすいとも言えるし、アプリを切り替える手間がかかるぶんマイナスとも言える。一長一短だ。
ドキュメントスキャナと比べた場合に注意したいのは、本製品は読み取り形式がJPGのみで、かつ片面のみという点。本製品と本体サイズがほぼ等しいPFUの「ScanSnap S1300」や、キヤノンマーケティングジャパンの「DR-P215」は、読み取り形式はJPGのほかPDFが選べ、また両面同時に読み取りが行える。
速度についてもかなりの差がある。冒頭の動画では、1枚の原稿をスキャンしてカメラロールへの保存が完了したというダイアログの表示まで、29秒だった。給紙に要する時間を抜きにしても、およそ毎分2枚というペースだ。これはポータブルスキャナの中でも速度が遅かった従来モデルの「スキャミル」よりもさらに遅い値だ。
さらに「ScanSnap S1300」や「DR-P215」などコンパクトタイプのドキュメントスキャナは読み取り速度がおよそ毎分4〜6枚で、両面読み取りということでその2倍の面を時間内に読み取れる。加えて本製品では原稿は1枚ずつセットしなくてはならないため、原稿の枚数が増えれば増えるほど、トータルでの所要時間の差は蓄積されていく。逆に言うと、そうした使い方が許容できる人向けの製品、ということになるだろう。
また、300dpiという解像度はスペック上は必要十分に思えるが、同じ解像度でScanSnapで取り込んだ原稿と比較してみると、クオリティにはかなりの差がある。ScanSnapで取り込んだ原稿はまったくの無補正でもまず問題なく使えるが、本製品で取り込んだ原稿は文字がぼやけたようになっており、重要な書類をデータ化して他の人に送るには少々つらい。ただしEvernoteにアップしてテキスト検索するのに支障はなかったので、個人的に使うには問題ないとも言える。
それよりも気になるのが、ほかのポータブルスキャナと同様、地肌が真っ白にならないことだ。読み取りがカラーモードなので色が多少乗るのは仕方ないにしても、ふつうのコピー用紙でありながら地肌がグレーがかってしまうのは、少々いただけない。付属のキャリブレーションシートを使ってみたが、見る限り改善した様子はなかった。さきの文字がぼやける問題と合わせて、読み取ったデータを他人に送るのであれば、別途色味を補正したほうがよいだろう。
一方、写真などのカラーベースの原稿は全体的に色が付いていることもあって、これら地肌の色はほとんど目立たず、実用レベルに達しているといえる。このあたり、ビジネス文書よりも写真などに向いたチューニングがなされているように見える。iPadで使うのだから色鮮やかな原稿のニーズのほうが高い、という考え方なのかもしれない。
むしろ問題なのは、その構造上、原稿が斜行しやすいことだ。給紙のガイド部は原稿の幅に合わせて左右にスライドさせるのだが、すこし力を加えればズレてしまうほど軽く、斜行補正の役割を果たしていない。
一般的にポータブルスキャナは斜行が発生しやすい機種が多いのだが、それでもガイドにしっかり沿わせればミスの発生は最小限に抑えられる。しかし本製品はそのガイドがしっかり固定できないことから斜行を誘発しやすく、一発できちんと読み取るのが非常に難しい。ハードソフトひっくるめて、どこを真っ先に改善すべきかと問われると、筆者はおそらくここだと答えるだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.