アプリを選ぶ基準は人によって異なるが、ITジャーナリストの星暁雄さんの場合は「シンプルで使いやすく、動作が速い」ことがポイントだ。今回はそんな星さんにお薦めのアプリを10個教えてもらった。
仕事柄スマートフォンをよく使っていて、端末やアプリについて詳しいビジネスパーソンに、お薦めのアプリを10個聞いていくというこの連載「仕事でも使えるスマホアプリ」。第2回はITジャーナリストでコモンズ・メディア代表の星暁雄さんに話を聞いた。
星さんはAndroid関連の記事を多く執筆していて、今はNTTドコモの「GALAXY NEXUS SC-04D」(サムスン電子製のAndroid 4.0端末)をメインに使用している。ちなみに過去には「iPhone 3GS」(ソフトバンク)も使った経験があるそうだ。まずは星さんご愛用のAndroidアプリを紹介。その後、星さんがこれまでどのような端末を使い、普段スマートフォンをどう使っているのか、なぜAndroidに注目しているのか――その理由に迫った。
星さんがお薦めするアプリは、以下の10個。アプリを選ぶ基準は、操作感が軽くて、使いやすいこと。「Androidは無料でいいアプリがそろっていて、取りあえず無料でいろいろ試せるのが魅力の1つ。グーグル製の公式アプリにもおおむね満足しているので、よく使っている」のだという。
アプリ名 | カテゴリ | 料金(2012年1月時点) |
---|---|---|
twicca | ソーシャルネットワーク | 無料 |
ATOK | 仕事効率化 | 1500円 |
Gmail | 通信 | 無料 |
Calendar Pad | 仕事効率化 | 無料 |
Simple Battery Status | ツール | 無料 |
ピンポイント天気ウィジェット | 天気 | 無料 |
東京のお天気レーダー | 天気 | 無料 |
Google Sky Map | 書籍&文献 | 無料 |
QuickPic | 写真 | 無料 |
乗換案内 | 交通 | 無料 |
Android向けのTwitterクライアントアプリ。「シンプルだがセンスが良いデザインと、Web版の本家Twitterサイトの機能追加にいち早く対応し続けてきた素早いアップデートが魅力」と星さんは紹介する。URLの自動短縮(bit.ly)や、リストの作成/編集、話題のトピック、地域のトピックなどの機能にスピーディに対応した。プラグインも充実していて、自分好みに拡張できる点も魅力だ。
星さんがtwiccaを選んだ最も大きな理由は「軽くて高機能だから」。個人の開発者が作っているアプリで、「開発者の思い」を感じる点も重要なポイントだという。「twiccaがあるからAndroidを使っている、と言ってもいいぐらい」と太鼓判を押していた。なお、twicca自体は無料だが、開発者に寄付ができる「twiccaサポーターズ」というシステムがあり、ユーザーが開発者を支援できる。
PC版でも定評のある日本語入力システム「ATOK」のAndroid向けアプリ。高い変換精度を誇るだけでなく、ケータイ入力、フリック入力、ジェスチャー入力、2タッチ入力(※)など複数の入力方法に対応している。PC版のATOKで登録した単語をAndroid版のATOKに反映することも可能だ。
(※)かなと英文字1文字を送信するために2つの数字を組み合わせて打ち込む入力方法。ポケベル方式/入力とも言う。
ATOKユーザーである星さんも「使い慣れているので入れている」という。少し重い(動作が遅い)のが難点だが、やはりいつもの変換精度で入力がしたいので、手放せないとのこと。ちなみに、無料アプリをどんどん試すという星さんが今回唯一選んだ有料アプリがこのATOKだ。Androidで文字入力をする機会が多く、高い変換精度を求めるユーザーにお薦めのアプリといえるだろう。
メール受信を知らせるプッシュ通知、PC版との同期、スレッド表示、検索などの機能を備えたGmailの公式アプリ。Android端末の多くはこのアプリをプリインストールしているので、知っているという人も多いことだろう。仕事でGmailを使う星さんは、プッシュ通知が信頼性があって「使える」こと、それにメールをスレッドにまとめる機能や、メールを用途や差出人などで分類できるラベル機能をモバイル環境でも使える点を特に便利と感じている。
イメージとしては、プッシュ通知が基本の携帯電話版メールに、検索やスレッド表示というPC版の機能が付いたメールといえる。Android Marketでも高評価を得ていて、Gmailユーザーはもちろん、Androidの購入を機にGmailを使い始めたというユーザーにも重宝するアプリといえそうだ。
Googleカレンダーと同期するアプリ。月、週、1日ごとや、週と月を組み合わせて予定を確認できる。ウィジェットとしても機能するので、アプリを起動しなくても、ホーム画面などから常に予定を確認することも可能だ。
数あるGoogleカレンダーアプリの中から星さんがCalendar Padを選んだ理由は「シンプルだから」。表示が見やすく動作が軽快な点がいいのだという。タスク管理アプリ「Things To Do」とも連携するので、スケジュールとタスクを一元管理することも可能。別途、色を変更できる240円の有料版もある。
バッテリー残量計アプリ。ステータスバーの通知エリアに電池残量を表示する。スマートフォンを利用していて気になるのがバッテリーの持ちだが、このアプリを使えば、常にバッテリーの残量が何%かを数値で確認できる。
星さんはステータスバーに表示してバッテリー残量をチェックしている。Simple Battery Statusが良いのは、他のアプリと同じく「シンプルなこと」。カスタマイズ要素としては通知アイコンのデザイン変更のみで、後は残量をチェックするという用途に特化している。
(編集注)初出時、Simple Battery Statusではなくシンプルバッテリー(Simple battery)と紹介していましたが、正しくはSimple Battery Statusです。お詫びして訂正いたします(2012年2月2日)。
星さんが「派手さはないけど便利」と紹介するのがピンポイント天気ウィジェット。ウィジェットなので、アプリ起動などの操作を必要とせず、画面を見るだけで天気予報を確認できる。3時間おきの天気と週間天気予報を表示するものだ。地域は、全国ほぼ全ての市区町村をカバーしている。
表示サイズは1×2〜4マスで設定でき、気温、降水量、湿度、風向、風速の中から2つ選んだ情報を常に表示する。ウィジェットをタップすれば、1日分の全ての情報を確認できる。設置するウィジェットの数に応じて複数の地域の天気をチェックする、といった使い方も可能だ。
都内近郊で「今どこで雨が降っているか?」が分かるアプリ。東京都下水道局が2002年から無料公開している都内の降雨情報サイト「東京アメッシュ」(10分ごとに更新)の情報を基に雨雲の動きを表示する。
星さんは、特に2011年夏ごろに多発した「ゲリラ豪雨」の局所的な雨雲の動きを見るときに重宝したと話す。「雨雲の移動をビジュアルで見られる点がよい」と話していた。東京のお天気レーダーを見ながら、今自分がいる場所はいつごろから雨が降りそうか、もしくはいつごろやみそうかをチェックする際に便利だ。
今いる場所の空に、どんな星座があるかをいつでも確認できるAR(拡張現実)アプリ。拡張現実なので、実際に星が出ていない昼間でもアプリを起動して端末を空にかざせば、その方向にある恒星や月、星座を名前付きで見ることができる。
「子供に『あの星は何?』と聞かれたときに使う」という星さん。星を調べたいときはもちろん、会話の種としても使えそうなアプリといえる。
何しろ動作が速い写真管理アプリ。Android Marketのコメントでは「読み込み速度が速い」「動作が軽い」など、速度について評価しているものが多い。星さんがQuickPicを選んだポイントも同様だ。
多くの端末が搭載しているAndroidの標準ギャラリーアプリでは、インターネット上の写真ギャラリー「Picasa」と端末に保存した写真の両方を閲覧できるが、QuickPicはiPhoneの標準ギャラリーアプリのように、端末に保存した写真を見ることに特化している。「iPhoneの写真アプリに慣れた人には、QuickPicの方が分かりやすいかもしれない」と星さんはコメントした。
路線検索の老舗ジョルダンが提供するアプリ。起動して乗車駅と降車駅を入力すれば、数秒で経路や運賃、所要時間、周辺の宿泊情報などが分かる。星さんは「移動時には必ず使う」のだそう。Web版もよく使っていて結果表示の仕方に慣れていたのと、無料なので使い始めたという。
また、Android版の乗換案内は、さりげなくAR機能を取り入れていて(「出発地入力」→矢印ボタン→右肩の「AR最寄」ボタン」)、技術的に面白い試みをしているな、と思った部分もあるのだという。実際にはこの機能を実用で使う局面は今のところないようだが「ちょっと応援してあげたいという気になった」と話していた。
以上、星さんお薦めのアプリ10選を紹介した。その他、番外編として紹介してくれたのが日本語入力をサポートする「Simeji」とQRコードで読みとった文字列をTwitter等に投稿する「QR2Tweet」だ。
日本語入力アプリとしてATOKを紹介したが、実はATOKを使う以前はSimejiをよく使っていたのだという。星さんの場合はPCでずっとATOKを利用しているので、慣れた文字変換が手放せなくて今はATOKを使っているのだそうだ。
星さんはSimejiの方がATOKよりもいい点として「軽くて、『マッシュルーム』と呼ぶ一種のプラグインが充実している。それに加えて、操作性では他のIMEをリードしている部分がある」と話した。また以前、開発者の足立昌彦さんとデザイナーの矢野りんさんをインタビューした際、Simejiの開発や方向性がとても面白く、好感を持っていたのだという。Simejiは2011年12月に中国検索大手のバイドゥが買収し、足立さんと矢野さんは同社に入社した。「驚いたが、Android開発者のコミュニティーではそういう結果もあったのか、と話題になっていた。フリーの開発者が評価されて企業に入社する、とても面白い事例だと思う」(星さん)
QR2Tweetは、星さんのTwitterでのツイートがきっかけで生まれたアプリだ。「起きたらほしいアプリがあった」と星さんは紹介する。詳しい経緯はトゥギャッター(togetter)にまとめられているが、QRコードで読みとった文字列をそのままTwitterに投稿できるアプリが欲しいと発言したら、それを見た開発者達が議論をして一晩で作ったという事例だ。
こうしたことが実現できた理由として星さんは(1)活発なAndroid開発者のコミュ二ティーがあった(2)他のアプリの機能を呼び出せる「インテント」という仕組みがAndroidにはあった(3)Twitterがあった――の3点を挙げた。ちなみにこれは2010年2月の事例だ。Androidアプリだからこそできた面白いアプリだといえる。
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