次に媒体別の広告費の推移を見てみましょう。インターネット広告はラジオ、雑誌、新聞を抜いて、テレビを射程圏内に収めています。何もインターネットが普及しているからという単純な理由ではありません。全体の広告費が増えているわけではなく、旧メディアの広告がネット広告に流れ込んでいるのです。
これは、インターネット広告の「費用対効果が見える」からです。つまり、商品やサービスを選ぶ眼が、とても厳しくなってきていることを示しているのです。
例えば、雑誌広告とインターネット広告ではこんな風に違います。雑誌の場合、「誰が」「いつ」「どこで」商品を購入したのか分かりません。読者層の特定をアンケート葉書などに頼るほかないため、マーケティング的には非常に曖昧な情報しか引き出せません。それから、どれだけ売れたのかも公開されていません。
インターネット業界はその逆です。誰が、いつ、どこで商品を購入したかを追跡できます。そのとき買わなくても、その後購入したら把握できます。どのような商品とセットで購入しているのかも把握できます。非常に子細な顧客の購入データから、費用対効果の高いターゲットのみに広告を訴求することができるうえ、広告出稿時に料金を払わなくとも、成功報酬型によってリスクのない広告出稿が可能です。
つまり費用対効果を明確に提示し、それによって購入するかどうかを決めるシビアな世界なのです。費用対効果が不明瞭な場合は、採用されません。
あなたは、自分の仕事の価値について、その費用対効果(もちろん、顧客にとっての)について、真剣に考えたことはありますか?
下の表は、スイスの大手金融機関UBS が調査・作成しているリポート「Prices and Earnings」の2009年版に掲載していた「世界の都市別賃金水準(ニューヨークを100とした場合)」から、アジア各国の数字を抜粋して作ったものです。
これを見ると、ソウル(韓国)や香港、台北(台湾)が東京の2分の1程度の賃金水準で、以下、上海(中国)が5分の1、バンコク(タイ)が6分の1程度、ムンバイ(インド)に至っては10分の1以下という安さです。
この数年、こうした国々の人件費が急騰していると言われていますが、それでも日本人の水準とは比べようもありません。また、日本のライバルといえる国の人件費が経済成長とともに上がったとしても、アジアの他の地域やアフリカには、もっともっと人件費の安い国が待ち構えているのです。人件費のコスト競争に終わりはありません。
つまり、私たちの仕事は恐ろしく高性能なコンピュータと圧倒的に安いオフショアの人件費にはさみうちになった状態なのです。自動化による効率性、安いオフショアリソースによる低賃金圧力という、下りのエレベータを降りなければ、仕事の突然死という事態に陥りかねません。あらためて、自分の仕事について、顧客価値を見直すべき時です。
年明けの次回は「お金の大問題」です。
本連載の内容は、2011年12月に発売された『人生の大問題を図解する!』をもとに作成しています。
「図解思考」シリーズでおなじみの著者・永田豊志が、これから始まる“とんでもない未来”に、私たち日本人が生き残るための「5つの戦略」を、豊富な図解で解説します!!
本書は、これから生き延びていくために重要な5つのテーマ、すなわち「お金」「英語(語学力)」「仕事」「家族」「思考力」のそれぞれについて、ショートストーリー、関連データ、アクションプランの3部立てで図解し、一緒に考えてもらう構成になっています。
「何となく危ないのは分かるけど、本当のところはよく分からない」という問題も、できるだけ分かりやすく描いてみました。 (冒頭の挨拶文より)
知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。
リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。その後、デジタル業界に興味を持ち、デスクトップパブリッシングやコンピュータグラフィックスの専門誌創刊や、CGキャラクターの版権管理ビジネスなどを構築。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。
近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』『プレゼンがうまい人の「図解思考」の技術』『ノート・手帳・メモが変わる絵文字の技術』(中経出版刊)がある。
連絡先: nagata@showcase-tv.com
Webサイト: www.showcase-tv.com
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