「構造→性質→用途」がポイント――文章に頼らず説明する説明書を書く悩み解決相談室(1/2 ページ)

専門的な内容が多く含まれる説明書などは、内容がある程度理解できなけれ改良するのもば難しいもの。文章を構造としてとらえてうまく情報を整理することが大切です。

» 2011年12月01日 11時00分 公開
[開米瑞浩,Business Media 誠]

 「説明書を書く悩み解決相談室」第5回です!

 私はもともと大学は中退しましたが理系の出で、職歴もITエンジニアだったこともあり、技術職の人を対象とする文書化能力向上研修の依頼を頂くことがよくあります。

 「分かりにくい説明書」にもいろいろ種類があります。専門的な内容であればあるほど、添削をするのが難しくなってくるのが悩みの種。例えばベテラン技術者から新米技術者への教育用テキストを作るようなケースで、ベテランの作るテキストが分かりにくくて教育効率が悪くなっているケースがあります。

 しかし、そのテキストの改良は、内容がある程度理解できなければ難しいもの。「一文は極力50字以下に」とか「主語述語の係り受けを明確に」「文体を統一しましょう」といった、一般的な文章作法の指導であれば何も理解していなくてもできますが、これだけでは現実には大して役に立ちません。内容を理解した上でないと、現場で役に立つ改善提案はできないわけです。

 今回もそんな説明書の1つを紹介しましょう。相談者は、あるメーカーで新人研修の1コマを任されたという江藤さん(仮名)。自社の取扱素材について教えるための資料を作りたいとのことですが――。

開米 はじめまして、江藤さん。どういった文書でお困りですか?

江藤 実はこういうものなんですが……。

 (例文)素材Xはミクロの粒子がつながって伸びた繊維状のものが絡み合って3次元構造となっているもので、主な用途は液体の粉末化。内部に空間が多いためこの空間に液体を吸い込む性質があるためで、同じ性質が印刷インクが紙の裏に抜ける現象を防ぐので、軽量紙へ配合されることもある。

 断熱材として使われることもあり、また、繊維の絡み合い構造の結合強度が強く、粒子が硬いこともあり、補強剤としてゴム製品にも配合されている。

開米 ふむふむなるほど、これはご自分で書かれたものですか?

江藤 ええ、そうなんです。ちょっとその、文章書くのが苦手なもので読みづらいかと思いますが……。

開米 いやいや大丈夫ですよ、確かにちょっと文面ギクシャクしてて文章を書き慣れてない感じがありますけど、別に商業出版で出す原稿じゃないですし、たたき台としてはこれで十分です。で、これをもっと分かりやすくしたいんですね。

江藤 そうなんです。取りあえず自分の知ってることを書いたらこうなったんですけど、もうちょっと何かうまい書き方がありますよね? きっと。

開米 そうですね、ただこういう説明書は文章を直そうとしてもダメなので、書かれている内容そのものの特徴的なパターンを見つけて図解化、視覚化するといいです。例えば。

江藤 例えば……?

開米 「繊維状のものが絡み合った3次元構造」だから「内部に空間が多い」。だから「その空間に液体を吸い込む」だから「液体の粉末化に使われる」……と、これ、一連の流れになってますよね。つまりこういうことですよね?

江藤 あ、そうそう、そういうことです。

開米 これと同じパターンで、他の情報も整理できませんか?

江藤 あ……できますね。ええ、できます。

開米 やってみましょう!

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