4種の情報タイプ | |
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トレンド | ・オンライン上で流行っている話題 ・現実世界で流行っている話題 |
専門分野 | ・自分の所属している業界に関すること ・自分のターゲット創が関心を持っている業界に関すること |
自分 | ・自分の作成したコンテンツに対する感想・批評・中傷 |
アイデア募集 | ・自分が困っている事柄に対する解決策の募集 |
「情報収集能力」とは、検出した標的を捕捉する力です。どれほど高感度のレーダーを正しい方向に向けても、捕捉できるミサイルが10機のうち1機では意味がありません。この能力では網羅性を向上させることが重要です。
情報収集力を向上させるためには、前述した「一般的な情報感度の高め方」と「専門分野の情報感度の高め方」を踏まえつつ、右表にある4つの情報のタイプを意識して収集するのが効果的です。
4種の情報タイプとは、世の中で起こっている流行り廃り、それに左右されない専門的な情報、自分に関する評判、そして最後は、自分が困っている事柄を解決してくれるアイデアの募集です。そうした情報を満遍なく拾っていけば、偏りのない情報収集になります。そのために活用できる便利なツールと使い方をいくつか紹介します。
目的 | サービス名 |
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●自分の周辺のトレンド収集 | |
自分がフォローしている人がRTしたつぶやき | |
自分がフォローしている人が“ふぁぼられた”つぶやき | Twistar |
自分がフォローしている人の1日のつぶやきを新聞にして読む | paper.li |
自分の友達の「いいね!」 | LIKESTER |
●Web全体のトレンド収集 | |
“ふぁぼられた”つぶやき | Favotter |
RTされているつぶやき | viratter |
twimpact | |
流行っているキーワード | Buzztter |
Googleトレンド | |
流行っている討論 | Togetter |
流行っているURL | TweetBuzz |
ソーシャルWeb検索 | TOPSY |
ソーシャルブックマーク | はてなブックマーク |
上の表に挙げたツール群は、トレンド情報の収集に有効です。これらは「リアルタイムWebサービス」と呼ばれることもあります。Twitterで流行っているキーワードやURLの抽出サービスを活用すれば、トレンドの収集に効果的です。
この種のサービスを利用するときは、大きく以下の2つの方向に分けて、トレンドをつかみます。
1つは、Web全体でのトレンドをつかむ方法です。新聞やテレビで報道されるような、より多くの人が関心を寄せている事柄を知ることができます。
もう1つは、自分の周辺のトレンドをつかむ方法です。これはTwitterでどんな人をフォローしているかによって、人それぞれ流行が異なってきます。例えば仲の良い友達ばかりをフォローしているのであれば、友達の間で話題になっている情報をつかめます。業界の専門家ばかりをフォローしているなら、その業界で今注目すべき情報を収集できるでしょう。
専門分野の情報を集めたいときは、Web上で検索したいキーワードを「Googleアラート」に登録し、そこで抽出したサイト情報を「Googleリーダー」に配信します。これにより、重要な情報はもちろん、些細(ささい)な情報も見逃さないようにします。
こちらの表に、私がGoogleアラートに登録する主なキーワードの種類を例示します。
まず、情報感度を向上させる方法で紹介した「ターゲット層が欲しがる情報」をキーワードとして登録。登録キーワードを考える際のポイントは、専門用語ばかりにならないよう心掛けることです。専門分野に関する用語だけを登録していたのでは、視野が狭くなってしまい、市場に隠れたニーズ等を見逃すことがあります。そういった事態に陥らないために、Webで流行っている1見関係のない事柄を表わすキーワードも、いくつか登録しておきましょう。
自分に対する良い評判が流れていれば、感謝することで、より好感を持たれますし、批判的な意見が流れていれば、原因を考え、必要なら謝罪し、改善することで、あなたの評判が上がります。そうした評判もGoogle検索を使うことで、効率よく調べることができます。
Googleのトップページで画面の上方にある「もっと見る」をクリックすると、検索対象を探すためのメニュー項目を表示できます。その中の1つを選択し、自分に関連する検索キーワードを指定することで、ネット上の自分の噂を効率よく知ることができます。
選択メニューの「ニュース」を選ぶと、新聞社が運営するニュースサイトなどから、指定したキーワードを含む記事を検索できます。「ブログ」を選ぶと、アメブロなどのブログサイトの中から、指定したキーワードを含む記事を検索します。下の表は、自分に関する噂や評判を効率良く検索するためのキーワードの例です。
こういった情報を日々収集し、自分に対する良い評判が流れていれば、感謝の気持ちを積極的に伝えましょう。ソーシャルコミュニケーションでは「自分は凄い」と高言するよりも、人から「凄い」と言われている人の方が信頼されます。あなたが相手に対して感謝の気持ちを伝えることで、あなたの周囲の人には、あなたは「人から認められる凄い人なんだ」と感じてもらうことができます。
不運にも、自分の悪評を見つけてしまったとき、大切なのは「悪評をゼロにしよう」とは考えないことです。ソーシャルメディア上にはさまざまな立場の人が大勢います。全ての人から支持され、共感され続ける事は不可能です。どんな人でも多少の陰口は囁かれます。なぜ、そういった悪評が立ったのか、自分なりに原因を考え、必要と判断したときには誠意をもって謝罪し、改善するよう努めましょう。そうすれば、あなたの悪評は自然と治まっていくでしょう。
ソーシャルメディアには、多数の人々から瞬時にアイデアを取得できるというメリットがあります。あなたが何か調べ事をしたいと思ったとき、例えば「渋谷界隈で焼酎の美味しいお店を知っている人はいますか?」とTwitterでつぶやけば、誰かが教えてくれるかもしれません。フェイスブックのクエスチョンを利用してみるのも良いでしょう。「人の知恵を借りる」ということも、重要な情報収集の手段なので覚えておきましょう。
ソーシャルコミュニケーションにおける「情報分析」とは、捕捉したミサイルがどこから飛んできたのか(誰から発信された情報か)、どこに向かっているのか(誰宛に発信された情報か)、なぜ飛んできたのか(どういう意図で発信されたのか)を考えることだと言えます。こうしたことを考えれば、情報発信者の意図を読み取り、情報の信憑性を判断し、関連する他の情報に気づくことができるようになります。
この種の能力は、1つの情報を深堀していく経験を積むことで、成長させることが可能です。情報を深堀するために有効な手法と言われる「なぜなぜ5回」を紹介します。
「なぜなぜ5回」とは、トヨタ自動車の業務改善活動で提案され、今ではさまざまな企業で活用されている問題解決手法の1つです。本来はトラブル発生時等の根本的な原因解決方法を検討するために用いられる手法ですが、1つの事象を論理的に深掘りしていく実施方法は、情報分析能力を向上させる上でも有効です。
「なぜなぜ5回」を実施する方法は簡単です、1つの事柄に対して「なぜ」という問いかけを5回繰り返すのです。以下は「なぜなぜ5回」を実施するための記入シートです。
まず、記入シートの「ステップ1」の欄に、深掘りしようとする事象を記入します。「ステップ2」の欄には、何のためにその情報を深掘りするのかを記入します。次に、第1回目の質問を記入し、その質問に対する自分なりの解答を記入します。そして、そこで導き出した解答に対し、さらに質問を投げかけます。このようにして、出てきた答えをどんどん深掘りしていきます。これを5回繰り返すことで、論理的に考える力が鍛えられていきます。また、その過程で色々なことを調べることになるので、情報の引き出しが拡がっていきます。
そして質問と回答が5回に達した時点で、総論として「何が言えるのか」をまとめます。本来、最後に記載するのは「実践可能な問題解決手法」となるのですが、ここでの狙いは論理的な思考を養い、分析能力を向上させることなので「総論」を記載することにしましょう。
記入の仕方の実例を挙げると、以下の図のようになります。1つの情報を深掘りする過程では、細切れの情報をいくつも調べる必要が生じるはずです。それらの情報を1つの総論にまとめてアウトプットすることで、バラバラの情報群があなたの頭の中で「価値ある情報」に変わります。
この訓練を行うにあたって「第1回目の“疑問”が思いつかない」という人が多いと思います。そうした場合には、前述した「情報感度を向上させる方法」を実施することで、気づく力が養われ、疑問を感じることができるようになります。
「総論」はせっかく苦労して作成したのですから、ブログに書いて、ニュースのURLと一緒にTwitterでつぶやいてみましょう。そうすることで、簡単にフィードバックを得ることができます。そのフィードバックから「新たな気づき」を得ることもあります。そうなれば、あなたの情報感度はますます向上するでしょう。
本連載は書籍『ソーシャルメディア実践の書』から抜粋したもの。人と人の“絆”を紡ぐソーシャルメディア――。個人が自力でネットデビューし活躍できるときがきました。本書では、Facebookページのファン数ランキングで国内4位(2011年2月)。の著者が秘けつを全部公開。Facebook、Twitter、Ustreamなどの使い方に止まらず、共感を呼ぶブログの書き方、ファンとの対話、日ごろの情報活動など、個人でできるブランディング活動のヒントがいっぱいです。
「ITmedia オルタナティブ・ブログ」に執筆を続けるITジャーナリスト。SNSビジネスの論客として、NHK教育テレビ「ITホワイトボックス2」に出演。2011年2月時点で日本語Facebookページのファン数ランキング第4位。ソーシャルメディア関連のビジネス系イベントとしては最大級となる「SOCIAL CONFERENCE 2011」を主催するなど、精力的に活動中。IPv6普及・高度化推進協議会メンバー。MCPCシニアモバイルコンサルタント、米国PMI認定PMP(Project Management Professional)などの資格を所持。
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