3時間前倒しするだけ――早起きをさまたげる3つの誘惑朝シフト仕事術(2/2 ページ)

» 2011年07月27日 11時50分 公開
[永井孝尚,Business Media 誠]
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インターネットは時間を占有する

 朝シフトを阻む2つ目の誘惑。それはインターネットです。

 現在、日本でも米国でも、テレビの視聴時間は減っています。その代わり、ブロードバンドの普及にともなって増えているのがインターネットの利用時間です。米国の調査会社IDCは、2008年2月、ネットを頻繁に利用する米国人992人を対象に調査した結果を発表しました。これによると、ネット利用時間は週32.7時間で、あらゆるメディアの利用時間の合計(週70.6時間)の半分近くを占める、という結果が出ています。なお、テレビ視聴時間は週16.4時間でした。

 テレビは何もしないでも情報が勝手に流れてきます。だから、他のことをしながらテレビを見る、ということが可能でした。しかし、インターネットは文字情報が中心なので、自分で意識して読まなければ意味を理解することができませんし、そもそも自分から情報にアクセスすることが前提です。そのため、テレビと比べて時間の占有度合いは高くなります。

 今、見ている番組や番組の切り替わりのタイミングで、おおよその時刻がつかめるテレビとは異なり、時間感覚がつかみにくいのもインターネットの特徴です。TwitterFacebookYouTubeなどを見ていて、気がついたら何時間も経っていてビックリしたという経験をお持ちの方も多いのではないかと思います。

 また、仕事でもプライベートでも、メールやTwitterで連絡が入ってくると、どうしても気になってひんぱんにチェックしてしまいます。そのたびに、関係ないニュースサイトを見にいったり、Twitterのタイムラインを眺めたりして、時間がどんどん経ってしまうのです。しかし考えてみてください。インターネットも、あなたにとって、満員電車の1時間と引き換えにしてもいいほど、大切なものでしょうか?

寝る直前までネットを見ていると寝つきが悪くなる可能性も

 寝る直前までPCやインターネットを使っている人は、睡眠が浅くなって、翌日に悪影響が出たという経験がありませんか? 私の友人は「なかなか寝つけない」と心療内科で相談したところ「睡眠の2時間前以降は、メールなどの文書作成は控えたほうがよい」というアドバイスをもらったそうです。インターネットを使うと、本来休むべきときに脳を活性化してしまうのかもしれません。

 そこで最近、私は11時に就寝する場合は、9時にはノートPCを閉じてしまい、翌朝まで使わないようにしています。やることが多いときでも、10時には閉じています。たったこれだけのことでスムーズに睡眠に入ることができるようになり、睡眠の質は向上しました。何よりもインターネットをダラダラ見ることがなくなり、より早い時間に就寝できるようになります。

 9時以降にメールをチェックすることはできなくなりますが、これは「決め」の問題です。ほとんどの場合、メールを見るのが翌朝になっても、何も問題はありません。

 私自身、「ネットにすみついている」と言われるほどのヘビーなネットユーザーです。ブログを毎日書いていますし、TwitterやFacebookもやっていて、自分のホームページもいくつか持っています。しかし、それらは空き時間に書くようにしています。ネットを使う時間も意識的に上限を設けていますし、Twitterなどでの返事も最小限にとどめています。

 今の時代、インターネットをいっさい使わないのは現実的ではありません。だからこそ、仕事の時間以外では、1日1時間なら1時間と上限を決めて使うことが求められます。

職場の飲み会はどうしてもマンネリ化する

 朝シフトを阻む3つ目の誘惑。それは同僚との夜のおつき合いです。

 同僚と飲み屋に行って、仕事の話をするのは楽しいものです。いつも一緒に仕事をしているわけですから、お互いに気心が知れています。愚痴を言ったり、悩みを打ち明けたり、あるいは新しい仕事への夢を語ったり……。心ゆくまで同僚と語り合うのは素晴らしいことだと思います。

 しかし、会社の仲間との飲み会も、毎日のようにあると、同じような話ばかりでマンネリに陥ってしまいます。

 私自身がそうでした。30代は、郊外の研究所に勤務していたので、一緒に飲む相手は同僚ばかり。みないい仲間でした。お酒が入ると、誰でも本音が出てきます。私も上司や同僚と徹底的に飲み屋で話し合ったことはとても勉強になっています。しかし、同じメンバーで週2、3回も飲んでいれば、いつかは話すネタが尽きてきます。帰りはいつも午前様で、翌朝10時に何とか二日酔いの頭で出社、という日々を繰り返していました。

 よく考えてみると、お酒が入らなければ本音が言えない、本音が聞けないというのもおかしな話です。

 確かに酔っぱらった状態だとつい本音が出てきます。でも、そんな状態で話をしても、ほとんどの場合、その場かぎりの出来事です。酒席で出た話題にきちんと対応してくれる人はあまりいません。よくて「とりあえず本音を聞いてもらった」「とりあえず本音が聞けた」という安心感が得られるだけなのではないでしょうか。

 仕事上の悩みは本来、勤務時間内に、職場の中で解決すべき問題です。お互いにシャキッとした頭で、抱えている問題点を話し合い、本音でアドバイスをし、必要なら具体的にサポートするというのが本来の姿です。

どうせ行くなら社外の交流に参加する

 会社の仲間とのつき合いは大切ですし、私もそれは理解できます。しかしなかには、同じメンバーでしょっちゅう飲むのは気が向かないなと感じている人がいるかもしれません。そういう人は、飲み会に参加する回数を減らしてみてはいかがでしょうか。

 週に1回、半月に1回、1カ月に1回……と減らしてみても、実はそれほどコミュニケーションに不具合は生じないのではないでしょうか。場合によっては「少々つき合いの悪いヤツ」と思われるかもしれません。しかし、失うのはその程度のものにすぎません。

 一方で、社外の人たちとの交流は、今まで知らなかった世界を知るきっかけになりますし、新しい出会いや発見があるので、積極的に参加するとよいでしょう。

 私はアイティメディアのオルタナティブ・ブログというサイトでブログを書いていますが、ここでは毎月定例で夜にブロガー会議を開催し、懇親会も行っています。若手.シニアを問わず、IT業界の現役ビジネスパーソンや経営者が、上下関係なくつき合える会なので、毎回参加して刺激をいただいていますし、私の人生にとっても大きな存在になっています。

 職場の上司、部下、同僚との飲み会はできるだけ減らす一方で、社外の人たちとの交流には月に数回と回数を絞りつつ積極的に足を運ぶことをおすすめします。

朝シフトのためにあきらめるもの

 人生はトレードオフ。選択の連続です。そして、その選択は他人ではなく、自分自身が決めることができるのです。朝シフトして何かを得ようと思ったら、早く起きるために何かをあきらめなければいけません

 夜のテレビも、インターネットも、同僚との飲み会も、自分にとってはとても重要だという人もいるでしょう。そういう人は、あえて切り捨てる必要はありません。しかし、それによって、朝シフトで得られる多くの可能性も、知らない間に切り捨てていることは知っておいてほしいと思います。

 どちらを選択するか決めるのは、あなた自身です。

連載「朝シフト仕事術」について

 本連載は7月16日発売の書籍『残業3時間を朝30分で片づける仕事術』から抜粋したもの。“朝活”が大ブームの今、医者、起業家、脳科学者が書く朝活の本も売れているが、本書は日本IBMに勤務する現役ビジネスパーソンが現在進行形で朝時間を有効活用していることが特徴だ。その成果・効果を大公開。実体験を元に、朝は夜の6倍生産性があがる理由を分析した。

 著者自身も20代30代のころは、仕事の忙しさが残業に反映されていると思い込み、“残業自慢者”でもあった。しかし、残業 → ストレス → 飲む → 寝坊 → 満員電車 → ぎりぎり出社 → 仕事の山という負のサイクルにどっぷりとはまっていたことに気づく。それをきっかけに、時間の使い方、仕事のやり方を研究しはじめ、朝時間にシフト。家族と過ごす時間、自分のための時間が増え、ライフワークをしっかりと楽しんでいる。そんな朝時間の有効性を共有する「朝カフェ次世代研究会」を主宰し、朝時間仲間をどんどん増やし、仕事とプライベートを充実させる啓蒙書。生活を見直したいと考えるビジネスパーソンにおすすめの1冊だ。



著者紹介 永井孝尚(ながい・たかひさ)

 日本IBMソフトウエア事業部マーケティング・マネージャー。1984年3月、慶應義塾大学工学部卒業後、日本IBM入社。製品開発マネージャーを担当した後、現在、同社ソフトウエア事業部で事業戦略を担当。2002 年には社会人大学院の多摩大学大学院経営情報研究科を修了。朝時間を活用することで、多忙な事業戦略マーケティング・マネージャーとして大きな成果を挙げる。一方で、ビジネス書籍の執筆や出版、早朝勉強会「朝カフェ次世代研究会」の主宰、毎日のブログ執筆でさまざまな情報を発信。さらに写真の個展開催、合唱団の事務局長として演奏会を開催するなど、アート分野でも幅広いライフワークを実現している。主な著書に『バリュープロポジション戦略50の作法 - 顧客中心主義を徹底し、本当のご満足を提供するために』などがある。


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