問題解決において一番重要なのは、問題点の発見や対策を系統だって考えられるかどうか。今夏の電力不足問題について、ロジックツリーで問題解決を考えてみましょう。
問題解決において一番重要なのは、問題点の発見や対策を系統だって考えられるかどうかです。図解思考による問題解決では、ロジックツリーを描くことでヌケモレのない、分かりやすい対策を検討することができます。今回は、震災の影響で不足しそうな夏場の電力問題をロジックツリーで考えてみたいと思います。
福島第一原発の停止による首都圏の電力不足は深刻です。震災直後の計画停電では、多くの人が不便かつ不安な時を過ごしました。さらに、計画なのか無計画なのか分からない優柔不断な停電計画に、製造工場などは終始翻弄(ほんろう)され、生産性が極度に低下しています。
それでなくても、中国などに追い上げをくらっている製造業で生産が落ちるのは国家としても危機。そして、電力需要のピークを迎える夏場、最大で1500万キロワット足らないと試算されている中、どのような対策が可能なのか。「問題解決のためのロジックツリー」を描きながら、一緒に考えてみましょう。
まずは、ロジックツリーがどのようなものかを復習しておきましょう。
ロジックツリーは、1つの要素からどんどん枝分かれしていきます。最初に結論(A)を述べて後から理由(B、C、D)を述べるケースや、最初に概要(A)を述べて後から詳細(B、C、D)を述べるケースなどがあります。
夏場の電力不足の問題はどのように考えればよいでしょうか? まずは「電力不足の解消をどんなタイプに分けられるか」を考えましょう。何かの「不足」は「需要と供給のギャップ」という問題ですから「需要を減らす=節電」と「供給を増やす=電力を作り出す」の2つに大別します。
夏場の電力不足はピーク時の問題でもあります。供給が5000万キロワットあるとすれば、平日の日中10時から21時までが需要が供給を上回りそうなのです。なので「需要を減らす=節電」と「供給を増やす=電力を作り出す」に加えて、日中に使う電力を深夜帯に使えないか、つまり「平準化」というのも対策の1つとして重要です。
大項目ができたところで、各々のトピックをさらにドリルダウン。例えば、供給を増やすのは東電しかできません。東電が供給量を増やすには、ほかの電力会社から電力を送ってもらう「電力融通」、火力発電など休眠発電所を再稼働させたり、その能力を高める「既存発電所の増強」、まったく「新しい電源」を確保すること――などが考えられます。
さらに、「節電」「平準化」などについては「企業」と「個人」が各々努力する必要があります。さらに「広報」「PR」などの面で「政府」が推進できることもあるかもしれません。ここでは、主体者によって3つのタイプに分けておきます。
次に、中項目をさらにドリルダウンして詳細項目を追加していきましょう。同じ要領で、「節電」「平準化」のカテゴリにおいても、「企業」「個人」「政府」など主体者別に詳細トピックを追加していきます。そうして、できあがったものが下記の図です。
いかがでしょうか? 電力不足の問題解決として、供給力のアップ、需要の削減、ピークをおさえる平準化という3つの視点から、ロジックツリーにて対策を整理してみました。
電力不足問題に限らず、このような図解で情報を整理すると頭がスッキリして、なおかつ第三者に分かりやすく伝えることができます。情報の錯綜を避けることができ、順序立てて、行動計画に落とし込むことができるのです。あなたなら、どのような問題解決を解いてみますか?
パワポの前に「図」で考える――。ベストセラー『頭がよくなる「図解思考」の技術』の第2弾となる本書は、プレゼンテーションの根幹とも言える「メッセージをどう作り、どのように伝えるのか」を図で整理する方法を解説しています。
「見栄えのいいスライドを作ること」や「説得力のある話し方をすること」も当然大事ですが、プレゼンの目的(メッセージ)そのものが洗練されていなくては、聞き手の心には届かないからです。営業プレゼンテーションや講演に限らず、ちょっとした説明や商談、または報告などにも応用可能で、あらゆるビジネスシーンで活躍するはずです。
知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。
リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。その後、デジタル業界に興味を持ち、デスクトップパブリッシングやコンピュータグラフィックスの専門誌創刊や、CGキャラクターの版権管理ビジネスなどを構築。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。
近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』(中経出版刊)がある。
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