「もうすぐ70歳です。追伸:iPhone4を買いました」――老後とライフワーク夫婦で始める“エクストリームコミュニケーション”

1年後、5年後の将来の見通しすら立てにくい現代において、30年後、40年後の年老いた自分を想像することはかなりの難作業。老後に明るい展望を持ちにくい、世知辛い世の中ではありますが、だからこそ意識してイメージしてみましょう。

» 2011年04月08日 11時30分 公開
[シックス・アパート 中山順司,Business Media 誠]

 夫婦間のコミュニケーションは難しいもの。付き合いも長いと、話題もなくなります。年中一緒に暮らしていれば、会話のネタも尽きてきますよね。そこで、ごくごく普通の夫である私が試行錯誤の上に発見した、ちょっと変わった夫婦間の「エクストリームコミュニケーション」をご紹介しています。今回のエクストリームコミュニケーションは「老後とライフワーク」です。

 いよいよ終盤を迎えつつありますこの連載、今回は「老後とライフワーク」です。次回最終回は「死」をテーマにする予定。老いも死もちょっと考えただけで、気が滅入りそうなテーマですが、「死」ほどその人の“価値観の幹”が赤裸々に表れるテーマもないのではないでしょうか。今回と次回は、覚悟してコミュニケーションしてみようと思います。

 ちなみに各テーマの数字は連載記事共通の通し番号。これまでのエクストリームコミュニケーションも参考にしてみてください。

テーマ114:こんなじいさん、ばあさんになりたい

 理想のおじいさん、おばあさん像ねえ……。あなたは、どんなおじいさんになりたい?

 定年後とか、孫が生まれたらって話だよね。遠い先のこと過ぎて、実感が分かないよ。

 じゃあ、お互いの両親とか、身近にいるシニアな人たちを思い浮かべてみたら? 「ああいうふうになりたいな」ってのない?

 うーん、住む場所とか財産の大小もさることながら、絶対に外せないのは「健康」だな。何はなくとも、健康なじいさんでいたい。心身ともに健康なら、どんな状況でも前向きに生きていられると思うんだよね。

 それは同感。まあ、私たちってどっちも健康には人一倍敏感というのもあるけど。このご時世的にあまりバラ色の老後生活って思い描けないよね。高齢化社会とか、年金とか、自分ではどうにも解決できない問題もある一方で、健康管理はせめて自分の意志でコントロールできるものだから、大事にしたい。

 加えて、太りたくない。「太る」−「動くのが億劫」−「出不精」って流れになるはずで、出不精は社会とのつながりを失うキッカケになる気がする。

 そのためにも、足腰は大事にしないと。健康意識があっても、足腰が動かなければ、運動できなくなるわけだから。

 健全な足腰は、文字通り軽いフットワークを生むだろうな。

 だから私は、ジョギングとかエアロビはずっと続けるつもり。純粋に好きっていうのもあるけど。

 僕は自転車で走り続ける。じいさんになっても、趣味と実益を兼ねてロングツーリングに行くよ。自転車さえあれば、満足だから(笑)。

 肉体的な足腰の健全さもそうだけど、心のフットワークも軽くしておくのがいいと思う。何かに誘われたら「ハイハイ、行くよー!」って言えるようでありたい。

 そういうお声がかかるような人間でもあり続けたいね。いるじゃない? 家に閉じこもって誰とも話さない、若い人と口を聞かない偏屈な老人って。ああいう風にはなりたくない。

 孫から煙たがれるパターンだね。それ以外では、好奇心旺盛なおばあさんになりたいな。新しいモノを使ったり、行ったことない場所にあえて出かけていく探究心を持っていたい。

 そう言えば、うちのオトンがこないだiPhone 4を買ったって。四捨五入すれば70歳のおじいちゃんなんだけどね。

 えええっ!? 携帯のメールの送り方すら知らないって以前言っていたよ。どういう風の吹き回し?

 僕が使っているのを見て、欲しくなったらしい。あと、弟がiPadを買って、それにも影響されたみたい。とりあえず、使いながら覚えるってさ。まだSMSの送り方すら分からないってボヤいていたから、解説本を送ったよ。

 でもさ、その歳で積極的に最先端のデジタル製品を使おうとする感覚ってスゴくない? ふつうは煙たがるものなのに、心が若い証拠だと思う。

 使いこなせるかどうか、ちょっと心配だけどね(笑)。


 試してみて分かりましたが、自分自身の老後を鮮明にイメージするのは、実感がわかなくて難しいです(老いた自分を想像するのを無意識に避けているような気もしますが)。代わりに「あんな老人になりたい」と思えるロールモデルをイメージしてみると話しやすくなると思います。


テーマ115:ボランティア活動の参加意向、興味の対象

 夫婦ともに「いくつになっても人の役に立ちたい」「家に閉じこもったり、人と交流のない老後は送りたくない」という共通認識があったので、ボランティア活動の話では盛り上がると思っていました。

 しかし、じゃあ具体的にどんな活動をしたいのかとなったとき、何一つ思い浮かばなかったことに愕然としました。リストアップできたのは、民生委員と町内会の役員くらい。いかに薄っぺらなイメージでしか語っていなかったかに気づかされて、恥ずかしく思いました。

 ボランティアを検索できるサイトってあるのかな? と探したところ、たくさん見つかりました。便利なサービスがあるものです。


 「趣味の無いまま定年を迎えて、いざ定年したらやることが見つからない」なんて話を笑っていたものですが、われわれも人を笑っていられないなと痛感しました。「定年になって時間もできたし、ボランティアをしたいんだけど、何をしたらいいか分からない」とならないよう、今のうちからリサーチをしておこうと思いました。


テーマ116:生涯続けたい趣味やライフワーク

 当然と言うべきか「いま楽しんでいる趣味を、年老いても続けたい」という発想になってしまいます。ただ、中にはそれなりの体力と気力があるうちしか続けられない趣味もあるわけです。

 われわれはジョギングやサイクリングなど、身体を動かす趣味がメインなので、ことさらにそう思いました。このままでは、車椅子生活になったとたんに、途方に暮れる可能性が大です。楽器、書道、料理、図書館の本を1冊残らず読破するなどを候補にあげてみましたが、どれもしっくりこないので、引き続き模索して行くことに。


 インドアでも楽しめる趣味も持っておくことの大切さもさることながら、いくつになっても新しい物事に興味を示すことのできる「心の若さ、柔軟さ」は失いたくないものです。逆にそういう心さえあれば、どうとでもなるような気がします。


テーマ117:何歳まで生きたい?

 誰だって長生きしたいに決まっているので、この質問は意味が薄いかもしれません。そこで、いったい何歳で死んだら「えー神様、お迎えにはまだちょっと早くないですか?」と文句の1つも言いたくなるかをお互いにあげてみました。

 私は日本人男性の平均寿命である79.19歳(厚生労働省)を越えられたら「元が取れたと思える♪」と具体的な年齢をあげたに対し、妻は「娘の第一子が生まれるまで生きられたらいつ死んでもいい。年齢は重要ではない」と予想外の回答。

 息子の第一子ではなく、娘の第一子でなければいけないのが「男のアナタには、絶対に分からない感覚よ」と言われてしまいました。


 平均寿命を超えたら得、そうでなければ損という考え方は……子供っぽいなあ。夫には「母の感覚」というものが理解できないようで、ずっと首をかしげていました。


テーマ118:何歳まで働きたい?

 いつまで働こうか? という話をしていたつもりが、いつのまにか「現実はそんな悠長なこと言っていられなくて、生きるために否応なしに働き続けなければいけない老後を迎えているんじゃなかろうか?」という話に。それでは話が悲しい方向に行ってしまうので、経済的事情はあまり触れない方が良さそうです。


 数十年後の日本では「働かない」という選択ができる老人は、実はすごく恵まれた人々にのみ与えられる特権になっているかもしれないと、真剣に思ってしまいました。別に働きたくないわけではないですが、選択の余地があるのとないのとでは、雲泥の差ですね。


テーマ119:老後は施設に入りたい?

 テーマが暗いです。雰囲気がよどんできて、声のトーンも下がり気味に。

 本音を探っていくと「そりゃあ、元気なうちは自宅に住みたいし、何かあってもなるべく住み慣れた家で身内に介護してほしい」という不変の思いはあるものの「義理の家族の負担になってしまうのが忍びない」という葛藤も生じます。

 かといって「施設のお世話になれるだけの金銭的蓄えが、リタイア後に持てているのかどうか。さもないと、(負い目を感じつつ)家族の世話になる道しかない」というこれまた気の滅入る話になってしまうのでした。


 筋金入りの楽観者のつもりの私ですが、そんな私ですら、明るい老後を思い描くのがこんなに難しいなんて……。先の見えないことで、不安感はいくらでも増幅してしまうんですね。ということは、正しい知識を知ることが大切なのかも。


テーマ120:財産は残す? 使い切る?

 「そもそも、残せるだけの財産が持てるのか?」というツッコミを夫婦同時でして、そして一緒に軽く落ち込みました(笑)。とはいえ、まさか裸一貫ということもないでしょう。それなりに不動産なり、いくばくかの預貯金が残った状態で寿命が見えてきたという仮定で話しました。

 根が貧乏性だからでしょうか、売却して遊興費にしてしまうという発想はあり得ず、少ないなりに持てるものすべてを遺族に残そうという結論に落着。それにたぶんですが、死期が見えた状態で、のんきに遊ぶなんてコトはできないだろうと思います。


 「カネは天国に持っていけないんだから」とばかり、使い切ってしまうという考え方もあるでしょうが、不思議とそういう感情は芽生えませんでした。もしも自分が大富豪だったら、真逆の考え方をしたかもしれませんが(笑)。


テーマ121:二世帯住宅に住みたい?

 夫と妻では、息子夫婦と同居することへの抵抗感に大きな差がありました。妻に言わせると、嫁姑どちらの立場になっても、同居するのは心理ハードルがあるそうです。姑なら立場が上(なんとなく)なのだから、嫁よりもはるかに負担が少ないのではと予想していたのですが、姑は姑の辛さもあるそうです。「まったく、男は気楽でいいわねっ」といやみを言われる始末……。


 家の構造によるところも大きいですけど、たとえどんなに考え抜いて作った二世帯住宅であろうとも、嫁姑の独特な感覚を100%解消してくれることはありません。よって、夫のように諸手をあげて賛成とはなれないんですよね……。



No. 今回のテーマ
114 こんなじいさん、ばあさんになりたい
115 ボランティア活動の参加意向、興味の対象
116 生涯続けたい趣味やライフワーク
117 何歳まで生きたい?
118 何歳まで働きたい?
119 老後は施設に入りたい?
120 財産は残す? 使い切る?
121 二世帯住宅に住みたい?

 以上「老後とライフワーク」についてでした。

 「老後=死期が近い」という連想をしてしまうからでしょうか。初めのうちは重い空気になりました。ですが、意識して明るい話題を出すよう心がけたせいで、後半は盛り返せたようです。

 それにしても、自分が老人になっている姿って、想像するのが難しいですね。どんな体型? 頭髪は? 身体の衰えはどこから来る? どんな持病を抱える? ――などと考え出すと不安が積み上がっていくので、マジメになりすぎず、ほどほどで切り上げておくのがよいかもしれません。


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著者紹介:中山順司(なかやま・じゅんじ)

 シックス・アパート株式会社 / スキナヒト製作所 所長。1971年生まれ。Covenant College(米国)卒業後、携帯電話キャリアでマーケティングと営業に携わり、2000年にネット業界に転身。旅行予約サイト(現楽天トラベル)で観光旅行コンテンツビジネスを立ち上げ、その後始めた個人ブログがキッカケで、ブログソフトウェアベンダーのシックス・アパートに(現職)。

 2010年12月、フツーの男女のフツーの出会いをプロデュースすることに特化した、世界一マジメな恋愛インキュベーション・プロジェクト「スキナヒト製作所(β)」を設立。


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