スライドのラフを描かずに、PowerPointやWordでいきなり提案書を作っていませんか? 何事も、アウトラインを固めてから作業に移ったほうが、最終的に効率がよくなるものです。今回はグラフを書くときの注意点を紹介します。
ラフスケッチ(下描き)は、ハイクオリティな提案資料づくりに欠かせないスライドの設計図です。前回は、グラフで数値データを示す場合のラフを紹介しました。今回は、グラフでメッセージを表現する場合のポイントを紹介します。
どのような目的に、どのようなグラフを用いるのがベストか、ということは前回解説しました。グラフをチョイスしたら、次はメッセージに合わせてグラフのどの部分を見せるのか、どの部分にフォーカスするのか、を検討します。メッセージに無関係な情報は不要なだけでなく、理解の妨げになります。言葉で説明したほうが早いようなグラフ表現は失格。グラフに語ってもらう、そのための注意すべきポイントをいくつかピックアップしてみます。
2つの図のうち、共通する指標があるのであれば、必ずまとめましょう。同じ時系列の変化なのにグラフが2つに分かれてしまうと、視点が分かれて関連性が把握が難しくなってしまいます(下図NG例)。
グラフを1つにする場合は、左右で異なる目盛りを持たせれば、分かりやすいでしょう。複数の図を時間軸を切り口に統合することで、例えば「3期目の売上が上がったのになぜ利益率が下がったのか」というように問題点を発見しやすくなります。
複数のグラフでのセオリーは「共通する項目はまとめる」こと。これは円グラフでも同様です。ただし円グラフは構成比しか表せませんので、複数のデータを項目ごとに比較するのには不向き。
2つのデータを項目ごとに比較するのであれば、左右対称の横棒グラフが適しています。共通項目ごとに左右の長さを比べれば一目瞭然です。
絶対値が大きい場合、変化量が同じであっても相対的に小さくなるため把握しにくい場合もあります。変化している部分にフィーチャーしたければ、目盛りの設定は柔軟に考えるべき。変化のない部分は省略し、変化のあるところに意識が向くように工夫しましょう。
「商品Aが大ヒットして売上が大幅に伸びた」など数値と解説を結びつけたい場合があります。しかしレイアウトを分けてしまうと、視線が泳ぎ理解を妨げます。
メッセージを伝える場合、同時に理解すべき情報は必ず物理的にも同じ場所にあるべきです。上図のように、吹き出しと棒グラフがセットになれば、一目で数値結果と関連を把握することができます。
さて、4回(前編、後編、グラフ編)にわたりスライド作成前の「ラフ描き」を紹介しました。ポイントは、いきなりPowerPointを作らないことです。「ラフ描き」というプロセスをはさむことで、トータルとしてはクオリティの高いプレゼン資料が短時間で作れるのです。
パワポの前に「図」で考える――。ベストセラー『頭がよくなる「図解思考」の技術』の第2弾となる本書は、プレゼンテーションの根幹とも言える「メッセージをどう作り、どのように伝えるのか」を図で整理する方法を解説しています。
「見栄えのいいスライドを作ること」や「説得力のある話し方をすること」も当然大事ですが、プレゼンの目的(メッセージ)そのものが洗練されていなくては、聞き手の心には届かないからです。営業プレゼンテーションや講演に限らず、ちょっとした説明や商談、または報告などにも応用可能で、あらゆるビジネスシーンで活躍するはずです。
知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。
リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。その後、デジタル業界に興味を持ち、デスクトップパブリッシングやコンピュータグラフィックスの専門誌創刊や、CGキャラクターの版権管理ビジネスなどを構築。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。
近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』(中経出版刊)がある。
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