今回は、社会問題という個人ではどうしようもないテーマを扱います。テーマの特性上、楽しい話し合いというより、疲労感が残りましたが、これまで決して見せることのなかった一面も発見できました。
夫婦間のコミュニケーションは難しいもの。付き合いも長いと、話題もなくなります。年中一緒に暮らしていれば、会話のネタも尽きてきますよね。そこで、ごくごく普通の夫である私が試行錯誤の上に発見した、ちょっと変わった夫婦間の「エクストリームコミュニケーション」をご紹介しています。今回のエクストリームコミュニケーションは「社会問題」です。
今回は、社会問題という個人ではどうしようもないテーマを扱います。正直に言いますと、このテーマは「できれば、やらずに済ませたい」と思っていました。というのも、絶対にネガティブな雰囲気に支配されると予想していたからです。実際に話し合った後も、すごく疲れましたし、楽しかったと言ったらウソになります。しかし、予想外の収穫もありました。
ちなみに各テーマの数字は連載記事共通の通し番号。これまでのエクストリームコミュニケーションも参考にしてみてください。
一概に社会問題といっても、「自分に関係のあるモノ」と「無関係なモノ」の大きく2つに分けることができます。自分が当事者である場合は、言いたいことがたくさんあるでしょう。そこで、妻の故郷である沖縄について、いろいろと聞いてみました。
夫 当事者って話では、キミの出身地である沖縄は話題には事欠かないよね。夫婦で話すことはほとんどなかったけど。
妻 そーねー、話せば長くなるねえ。
夫 僕にとっても、以前はリゾートでしかなかった沖縄が、結婚を機に第二の故郷になったしね。だから他人事ではない意識はある。
妻 ありがとう。ただ、沖縄人の故郷に対する思い入れは、本土の人にはなかなか分かってもらえない部分もあるんだ。
夫 思い入れってことだと、キミって高校野球の沖縄県代表をものすごい勢いで応援するよね。母校でもないし、野球にも興味はないはずなのに。
妻 あれは私の郷土愛がそうさせているの。野球じゃなくても、例えば芸能人やスポーツ選手やミュージシャンは、沖縄出身なら無条件で応援したい気持ちがある。
夫 そうなの?
妻 そうだよ。以前、名古屋グランパスに喜名(哲裕)っていたでしょ? 沖縄出身の選手だからすごく好きだったんだ。あと、我那覇(和樹、FC琉球)もがんばってほしい。芸人だと小島よしお、ハム、ガレッジセールが好きだな。スリムクラブの芸風は嫌いだけど、応援はしているよ(笑)。
夫 サッカーに関心のないキミが喜名を知っているだけで、思い入れの強さが分かるよ。
妻 この感情は、沖縄の人に共通すると思うよ。
夫 芸能人と自分の出身地が同じというだけでは、僕は何も感じないなあ。
妻 それが普通じゃない?
夫 で、沖縄のいろんな問題やニュースについてなんだけど、膝を突き合わせて話したことはないね。キミの両親とも話したことはないけど、僕から話しかけるのはタブーかな?
妻 タブーではないし、聞けば答えてくれるとは思う。でも、積極的に話すことはないだろうな。
夫 やっぱりそうなんだ。
妻 長い歴史の上に今があるわけで、今起きている表面上の現象を追いかけるだけじゃ本質は見えないからね。
夫 そっか。僕は身内ではあるけれど、部外者であることに変わりはないからね……。
妻 当事者意識を共有できないのは、仕方ないことだよ。別にあなたが悪いわけじゃないから、気を悪くしないでね。
夫 うん。
夫婦の両方(もしくは片方)が問題の当事者である場合、重くはなりますが真剣な話ができます。当事者でない私に対しても、妻は面倒くさがらずに心の内を吐露してくれました。何の問題解決にもなりませんが、聞き役に徹することで多少は気が楽になったようです。ちなみに、ここには書けない衝撃的な話をたくさん聞けました。
沖縄の諸問題は生まれたときからずっと生活の一部だったので、語り尽くせないのが正直な気持ちです。まあ、夫が聞き役になってくれたのはよかったです。
関係なくはないけれど、問題として認識しにくく、よってどこか当事者意識が持ちにくいです。われわれは2人の子供をもうけたので、一応は少子化対策に貢献したような気もします。そこで、より当事者意識を持つべく、「もう1人、子供が欲しいか」と質問を変えてみました。家族がにぎやかになって楽しいのは認めつつも、いろんな現実的なことを考えると、諸手を挙げて賛成にはいたりませんでした。
子供を持つことをそろばん勘定で計算すると、経済的には負担増に決まっています。でも、子供がいない方がお金があって幸せか、というとそういう単純なものでもなかったりしますよね。
既婚であるためか、これについてもどうしても当事者意識が持てず、真剣な話し合いになりませんでした。そこで、もしもわれわれが独身だったとして思いを馳せてみたところ、可処分所得の多さと購入できたであろうさまざまな商品やサービスに気づき、軽くへこみました。今より少し豪華な住宅、今よりワンランク上の自家用車、今より……と挙げていたら、妻に叱られました。
独身だったらできた(買えた)であろうことを想像するのは、ただの「ない物ねだり」にすぎないと思います。ていうか、晩婚化問題と何の関係もないし……。
夫婦そろって身近にそういう人がおらず、メディアが流す以上の情報には疎いことが分かりました。いつもやっているように、「もしもわが子がなってしまったら」と考えてみたのですが、自分たちでは対処の方法がまったく分からず、すごく不安になりました。発生のメカニズムも未知だし、予防策や起きた後の対策も知識がありません。何の根拠もなく、「自分たちにはきっと関係がない(に違いない)」と思い込もうとしていたことが分かり、ちょっと途方にくれてしまいました。
起きてもいない問題をあらかじめすべて把握できるわけにもいかないので、なんとも難しい話です。
たばこすら吸わないわれわれにとっては、完全に他人事でしかなく、話すことはないのですが、モノのたとえで「もしも麻薬が合法になったら、吸ってみたいか?」とか「オランダに行ったら、大麻をやるか?」という話をしてみました。2人とも健康オタクな面があり、健康を害するものはビビって近寄らない習性があるので、たとえ全面解禁になり、自販機で買えるくらいポピュラーなものになったとしても、一切ノータッチでいようと合意しました。
薬物ではないですが、コーヒー好きなのでカフェインにはかなり依存しているかも。コーヒーが非合法になったら耐えられるか心配です(笑)。
無縁社会は、NHKのドキュメンタリーで、昨年一躍クローズアップされはじめた単語です。結婚していて子供がいると、無縁社会とは無関係に思われるかもしれません。でも、必ずしもそんなことはありません。例えばですが、仮に家族が乗った車が事故に遭い、一人だけ生き残ったとして、(兄弟や祖父母がいるとは言え)一瞬にして大部分の縁を失うことになります。
私はかつて家族全員が乗った車で事故を起こし、車を廃車にしてしまった経験があります(シートベルトをしており、全員無傷)。今は笑って話せますが、事故の瞬間が鮮明に思い出せるほどのトラウマになっていて、半年は寿命が縮みました。そんなこともあって、家族の死については、リアルに想像ができてしまうのです。
親子のつながりが(寿命で)いつか切れるのは、べつに今に始まったことではなく、受け入れるしかないものだと思います。それに、肉親のつながり以外にも社会との接点はあるはず。悲観する暇があったら、接点を持つ努力をしようと言い聞かせてみました。
いじめはしたくもないし、されるなんてもってのほか。できれば無関係でい続けたいと願うのが、親の正直な気持ちだと思います。が、いじめは決してなくならないのも事実で、どうすれば無関係でいられるかを議論してみました。
親としてできることは、
――なのかなという結論に落ち着きました。
男女ではいじめ方にも違いがあるようで、お互いの子供時代に流行ったいじめの方法にまで話は及びました。スポーツができる子って、男女関係なく不思議といじめの対象から外れるような気がします。あれ、なぜでしょうね。運動神経は子供のリスペクトの対象なのかなあ。
自分で自分をモンスターと自覚する人はたぶんいないような気がします。われわれだって、まさかモンスターではないと信じています。しかし、自分だって状況を把握しようとせず、カッと頭に血が昇ってしまったり、相手方のところに怒鳴り込むようなことが起きないとは断言できません。「こんな目に遭わされたら冷静でいられるか?」「この仕打ちはキレるんじゃないか?」「こういう時はむしろ毅然としたモンスターになるべきじゃないか?」などと例を挙げつつ、互いの堪忍袋の緒が切れるラインを確認しあってみました。
たいていのことはドッシリ構えていられる自信がありますが……。娘の顔に傷を付けられたら、怒りが爆発してしまうかも。
No. | 今回のテーマ |
---|---|
87 | 自分たちが当事者である社会問題を掘り下げてみる |
88 | 少子化&高齢化社会 |
89 | 晩婚化 |
90 | ひきこもり・ニート |
91 | 薬物・依存症 |
92 | 無縁社会 |
93 | いじめ・ハラスメント |
94 | モンスターペアレント |
以上、「社会問題」についてでした。
今回のテーマはどれもが自力では解決できないし、果たして自分が正しい知識や意見をもっているかどうかも分からないままの話し合いになってしまいました。やってみて分かったのは、当事者意識のない(あるいはすごく薄い)社会問題については、ほとんど語ることが思い当らなかったということ。海外の問題にも目を向けてはみたのですが、黙り込んでしまいましたからね。
話せば話すほど別の課題が見えてきたりして、どんどん袋小路に迷い込んでいくようなストレスを味わいました。今回の収穫は、夫婦間でも深く話したことのなかった沖縄問題(と歴史)に触れられたことです。われわれはたまたま妻の「出身地」をキッカケにしましたが、それ以外にも社会問題と自分との接点はあると思います。
楽しい会話にはなりにくいかもしれませんが、お互いをより深く理解できる場として生かしてもらえればと思います。
筆者の中山順司さんが運営している「スキナヒト製作所」。フツーの男女のフツーの出会いをプロデュースすることに特化した、世界一マジメな恋愛インキュベーション・プロジェクトです。ただいまβテスト中につき、利用は完全無料。
このたび、スキナヒト製作所おひとり目となる独身男性をご紹介することになりました(パチパチ)。IT系プログラマ(26歳)の痩身な方です。今風に言うなら、草食系男子でしょうか。
「この人に興味あるかも」と思った方、ぜひご連絡を! 「知り合いのあの娘に教えてあげよう」などなど、ぜひTwitterでつぶやいてみてください。
シックス・アパート株式会社 / スキナヒト製作所 所長。1971年生まれ。Covenant College(米国)卒業後、携帯電話キャリアでマーケティングと営業に携わり、2000年にネット業界に転身。旅行予約サイト(現楽天トラベル)で観光旅行コンテンツビジネスを立ち上げ、その後始めた個人ブログがキッカケで、ブログソフトウェアベンダーのシックス・アパートに(現職)。
2010年12月、フツーの男女のフツーの出会いをプロデュースすることに特化した、世界一マジメな恋愛インキュベーション・プロジェクト「スキナヒト製作所(β)」を設立。
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