「フレームワーク」は時代とともに形を変えるもの中小企業診断士の思考術

「3つのC」は「4つのC」へ、「QCD」は「QCDE」へ、「AIDMA」は「AISAS」「SIPS」へ――。崩壊しない神話はありません。フレームワーク神話というものがあるとすれば、いつかはフレームワークも変わっていきます。時代とともに変化するフレームワークを考えてみましょう。

» 2011年03月02日 16時11分 公開
[井上龍司,Business Media 誠]

 以前「『フレームワーク』は作れるようになろう」と話ましたが、今回も「フレームワーク思考」についてのお話です。

 私が仕事でよく使っているフレームワークを15個選びPDF化してみました。フレームワーク思考の学習に役立てていただければ幸いです。

 そして、今回はこのファイルから「フレームワークは時代とともに変わっていく」という話をしていきます。画像のサムネイルは表示しますが、ぜひ、ダウンロードしたファイルを見比べながら読み進めてください。

 以前の記事で「神話はいずれ崩壊する」という話を書きましたが、「フレームワーク」も神話の一種と言えるかも知れません。私たちは「3つのC」や「4つのP」というフレームワークをよく使いますが、これらのフレームワークも絶対不変のものではありません。

 例えば、

1:3つのC

「3つのC」は顧客(Customer)/自社(Company)/競合(Competitor)から構成されていますが、近年では他社との戦略的提携の重要さを鑑みて「協力者(Co-operator)」を加えた「4つのC」で分析すべき、という考え方が出てきています。

2:4つのP

 また、マーケティングの「4つのP」は、商品(Product)/価格(Price)/流通(Place)/販売促進(Promotion)から構成されていますが、これに対して顧客価値(Customer Value)/コスト(Cost)/利便性(Convenience)/コミュニケーション(Communication)という「顧客視点の4つのC」と同じから検討すべき、という考え方が出てきています(先ほど1で挙げた「4つのC」と混同しないようにご注意ください)。

 他の例も挙げてみましょう。

3:QCD

 工場の生産管理の分野などでは「QCD」(品質/コスト/納期)というフレームワークが用いられますが、近年の環境問題への意識の高まりを考慮し「E」(Environment)を含めるべきという意見も出てきています、

4:ヒトモノカネ

 ヒトモノカネ、と言えば企業の経営資源を示すフレームワークですが、近年の情報社会へのシフトを踏まえ、「情報」を加えるべき、と言われています。確かに、情報やノウハウも大切な経営資源ですね。また、同様に「顧客(との関係性)」や「ブランド(企業に対する信頼)」という声もあがっています。

5:AIDMA

 また、(今回のフレームワーク集には含まれていませんが)マーケティングの世界では「AIDMA(アイドマ)」(注意/関心/欲望/記憶/行動)という、消費プロセスを示したフレームワークが有名です。

 しかし、インターネットが普及した結果、近年では「AISAS(アイサス)」(注意/関心/検索/行動/共有)という、インターネットによる検索や口コミといった特性を考慮したプロセスが提唱されています。最近では「SIPS」(Sympathize:共感する/Identify:確認する/Participate:参加する/Share & Spread:共有・拡散する)という言い方も出てきました(いずれも電通が提唱しています)。

 私の好きな本の1つに『99.9%は仮説』というものがありますが、(これまで見てきたように)フレームワークもあくまで「仮説」の1つであって「真理」ではありません。時代とともに形を変えていってもおかしくないものなのです。

 既存のフレームワークを学ぶことはとても意義のあることなのですが、一方でそれらは絶対不変のものではないということも心に留めておいてください。既存のフレームワークを絶対視し、それを疑うことなく使い続けてしまうと、いずれ時代や状況にマッチしないものを使い続けることになってしまう可能性があるからです。

 そうならないためには、先日書いたように「フレームワークが自分で作れるようになる」ことが大切だと考えます。自分でフレームワークを作れるようになってくれば、既存のフレームワークを絶対視することも自然となくなってきますし、自分なりのフレームワークに改良するアイデアが見つかるかも知れません。

 既存のフレームワークを疑ってみましょう。「4つのC」や「SIPS」に比肩するような素晴らしいフレームワークを次に生み出すのは、これを読んでいるあなたかも知れません!

※この記事は、誠ブログ「Think! Think! Think! 〜中小企業診断士イノウエの思考術〜:『フレームワーク』は時代とともに形を変えるもの」より転載しています。

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