生きていく以上、避けて通れないのが病気やケガです。医療技術がいくら進歩しようとも、平均寿命がどれだけ延びようとも、この悩みから逃げることはできません。
夫婦間のコミュニケーションは難しいもの。付き合いも長いと、話題もなくなります。年中一緒に暮らしていれば、会話のネタも尽きてきますよね。そこで、ごくごく普通の夫である私が試行錯誤の上に発見した、ちょっと変わった夫婦間の「エクストリームコミュニケーション」をご紹介しています。今回のエクストリームコミュニケーションは「健康・病気」です。
独身時代は自分の健康さえ気をつかえばよかったのが、家族を持ったとたんに意識を人数分に分散させねばならなくなります。ひとりの不健康が家族全体に悪影響を及ぼしますので、独身時代よりもはるかに体調管理や予防活動を心がけるようになりました。ちなみにテーマの数字は連載記事共通の通し番号。これまでのエクストリームコミュニケーションも参考にしてみてください。
以前、育児の回で「わが子の臓器提供ができるかどうか」で意見が分かれた我々でしたが、今回さらに紛糾したのは「子供の余命宣告をするかどうかの選択」でした。しかも、感極まった妻に異常事態まで発生するというオマケつきでした。
夫 考えるのもおぞましいのだけど、もしもわが子が不治の病に冒されて余命が半年と医師に告げられたとするよ。その事実を子供に伝えるべきかな?
妻 ……その前に、私たちのことからクリアにしない?
夫 じゃあ、僕から。僕は伝えてほしい。ぜったい隠してほしくない。
妻 私も同じ。「ただの胃潰瘍だよ、すぐ治る」とかウソついたら恨むからね。
夫 了解。じゃあ、僕らはお互い「余命告知してくれ」でファイナルアンサーだね。
妻 異議なし。
夫 で、子供なんだけど、自分が宣告されたいなら、子供にも伝えるってことでいいのかな?
妻 いや、それは年齢によるよ。例えば、中高生なら受け止める精神力があるだろうけど、小学校低学年くらいだと耐えられないと思うんだよね。だから、むしろウソを突き通すのが愛情じゃないかしら。
夫 そうかな……。だってキミが宣告してほしい理由は、自分で死ぬ準備をしておきたいからでしょ? 遺言とか、お世話になった人への挨拶や、子供へのビデオレター、治療方針の確認、保険手続き、葬式、お墓をどうするか――。そういうのを意識がしっかりしているうちにすませておきたいんだよね?
妻 そう。でもそれは私が大人だからであって、子供には酷すぎる。病気のことはおくびにも出さず、普段の生活を送り続けるのってダメ?
夫 死ぬ瞬間までだまし続けるのはムリだよ。病気は悪化して入院して体はボロボロになって、子供心にも死を意識するって。絶対バレるって。
妻 じゃあ、あなたは宣告するの?
夫 する。いや、すべきだよ、子を思えばこそ。例えば中学受験の勉強をしていたら、さっさとやめてもっとほかの……家族の思い出作りの旅行をしたりとか、行きたい場所に連れていったりとか、そういうことに時間を費やすよ。短いなりに、充実した人生を送らせてやりたいじゃない。
妻 いやー、分かるけど、それはどうかしら。全員が死のカウントダウンを共有して生きてくって、正気を保っていられる自信がないよ。
夫 でも、一番大切なのは死にゆく子供自身が幸せだったと思って息を引き取れることじゃないかな。そのために、親は歯を食いしばってでも尽くすべきだと思うんだ。すげー辛いだろうけど。
妻 でも、宣告されたことで子供がパニックになる可能性もあるよ。もしそうなったら取り返しがつかないよ。
夫 いや、子供だろうが大人だろうが、最終的には死を受け入れるものだと思うよ。それより怖いのは、仮にだまし続けられたとしても、最終的に死ぬ瞬間に子供が「ちくしょう、だましたな! 死ぬって分かっていたら、あんなことこんなこともしたかったのに。パパとママのバカ〜」って恨みながら死ぬことじゃない?
妻 ……。(うつむいたまま、じっとしている)
夫 どうした?
妻 (突然涙を流しながら)……もう、この話しやめようよ……。ダメだ……あたし、辛すぎて続けられないよ……。
突然、妻が泣き出してしまいました。架空の話しなのにリアルすぎて、現実世界にオーバーラップしてしまったようです。それを見ていたら、私もつられて涙ぐんでしまいました。
子の臓器提供よりもリアルに悲しすぎて取り乱してしまいました……。すみません。
健康診断や人間ドックを楽しみにしている人はいません。で、つい検査を先送りにして、大病の兆候を見逃したりしてしまうのだと思います。
妻と確認してみたのですが、意外にも互いの健康診断歴は把握していないもので、「やばいじゃん。予約しておきなよ」という確認もできました。ほかにも「胃カメラは痛いのか」「いや、意外にイケるよ」という話もできました。
自分の意志だけで健康管理を試みても、恐怖心が先立つものですので、強制的にスケジュールに落としこむ仕組みとか、双方間のリマインドの必要性を痛感しました。
バリウム経験が夫だけにあり、胃カメラ経験は私だけでした。片方がすでに体験済みということで、若干ですが恐怖心が和らいだ気分です。病気の恐怖も、夫婦で分け合えば怖くないかも?
食べ物や花粉症、ハウスダスト、色々なアレルギーがあります。健康診断の結果を共有して健康状態を把握しあう以外にも、アレルギーも話しあっておきたいものです。
仮にアレルギーがなくても、ふつうの人と比べて弱い部分とか発症しやすい症状(敏感肌、お腹を下しやすい、車酔いしやすいなど)を知らせておくだけでも、心強くなれますし、気を使うべきポイントがはっきりします。
たとえ健康体であっても、すべて平均値以上な人はいません。正直に弱点を夫に知らせておくと、先回りして心配してくれるので、助かります。
私はサッカー、妻はエアロビを趣味にしていて、さらにいっしょにサイクリングと筋トレもするので、年相応以上の体力はあると自負しています。「これだけやっていれば、運動不足にはならないでしょー」とアッサリ話は終わりました。
そこで、食生活や日常生活における健康への取り組みを確認。特に食事のこだわりが未確認部分だったので、米の種類(玄米、五穀米など)、サプリに頼るべきか否か、肉と魚のバランス、不足しているであろうビタミンやミネラル、(身体によくないので)口にしないと決めた食物や添加物のリストアップをしてみました。
曲者なのが「特定の食材を盲目的に信じている」ケース。「これさえ食べておけば無病息災だから(さっさと食べろ/買え)」と押し付けてくる迷惑な人がたまにいますが、互いにそういう何かの信者でないかも確認しました。
スポーツのことはもっぱら夫、食事や栄養面は私――と大まかな役割分担を決めて、情報収集を助け合っています。
「衰えさせたくない、大切にしたいボディパーツ」を考えてみました。すり合わせの結果、
となりました。衰えて構わないパーツなど1つもありませんが、とくに失うと日常生活すらおぼつかなくなってしまうのがこの3つ。1位は運動でカバーし、2位は海産物からのカルシウム摂取とこまめな歯磨きでOK。3位の視力は……分からないので答えなし、となりました(どなたか視力を維持する効果的な方法を教えてください!)。
日本が長寿大国であるのはけっこうなことだとは思うのですが、不健康な長生きはむしろ辛いかもしれません。いくつになっても“それなりの健康”を保てるよう、今のうちからコツコツと努力です。
わざわざ結婚前や学生時代のケガや病歴を話す人は少数ではないでしょうか。だからこそ驚きに満ちた話し合いになります。
妻が「高校生のとき、腰にメスをいれてさあ……」と言ったときは、「ええっ!?(腰が悪かったなんて知らなかった)」と仰天しかけたのですが、腰にあった小さなホクロをぷちっと取っただけと聞いて、ずっこけました(笑)。
ただ、妻が私の子供の頃の病歴から入院歴までをほぼ熟知していたことに、飛び上がらんばかりに驚愕しました。知りえるはずのない私の病歴、手術歴をいったいどこで入手したのかを問いただすと、犯人は私の母親であることが判明。
結婚前に母子手帳を妻に見せ、「この通り、うちの息子は大丈夫ですから。きちんと健康でヘンな病歴もないですよ」とか説明していたらしいのです(今の今まで知らなかった……)。
夫はそうとうショックだったようです。病気やケガ以外にも、私がさまざまな情報を握っているのではないかと、ビクビクしているようです。
私以上に私の病歴に詳しい(ことが判明した)妻ですが、さすがに互いの家族や親戚の話になるとほとんど知りません。そこで家族と親戚の病歴を、現在から若いころに遡りながら話し合ってみました。
なんとなく見えてきたのは、「若い頃の日常的な食生活(とか偏食)が数十年後の病気に影響しているのでは?」という点。もちろん医学の知識はないので、感覚でしかないのですが、「そういう食生活が、○○○につながったのかもね」というのは、まったくの見当違いでもないような気がします。
1つ驚いたのが、夫婦であるにも関わらず、「夫の食べていたモノ」と「妻の食べていたモノ」にけっこうな差があったこと。同じ食卓を囲んでいるのに、口に運んでいるモノが違うこと(片方は好物の肉ばかり食べ、もう片方は肉の調理はするが魚と野菜しか食べないなど)。
食生活の偏りは夫婦そろって起きるのではなく、あくまで本人の食習慣のみが反映されるという、当たり前の事実に気づかされたのでした。
一人の人間の歴史をずーっとさかのぼっていく作業って、意外に経験がなくて、新鮮に感じました。病気に関しては、遺伝や環境も影響しているでしょうから断言はできないですけど、そうはいっても毎日の食生活の積み重ねが10年、20年先に大きく影響しているのは間違いないと思います。
どんな病名を挙げても怖いです。「これならなってもいいかな」と思える病気なんて(当たり前ですが)1つもありません。患ったことのない病気がなぜ怖いのかを冷静に話し合った結果、「どんな治療があり、いかなる苦しみが待っていて、どれだけの経済的負担をもたらすのか」が分からないからだと理解できました。
病気そのものも怖いですが、残される家族の精神的、肉体的、経済的負担を考えると、とてつもなく気が重くなりますね……。
ただ闇雲に怖がっても意味がないし、いろんな情報に振り回されてしまう可能性もでてくるわけなので、病気に対する正しい知識を持つことの大切さを感じました。
夫婦のどちらかが(余命宣告型の)ガンになってしまったとして、抗ガン剤治療を受けたいかどうかの確認をおこないました。妻は、「できればしたくない」とのこと。私は抗ガン剤治療に無知だったのでレクチャーしてもらい、妻と同じ結論にとりあえずなりました。実際にガンを患ったときに、その姿勢を貫けるのかどうかは見当もつきませんが、そう考える理由は少なくとも理解できました。もし意識を失ってしまって、治療方法を本人確認できない場合は、このときの会話を思い出そうと思います。
抗ガン剤の効果だとか副作用云々よりも、話の核となったのは、死のカウントダウンが始まるくらい差し迫ったときに、自分は「(抗ガン剤でも何でも)手段は問わずに延命を追及するのか」、それとも「寿命が多少縮んでもかまわないから、好きなように過ごすのか」という点でした。
No. | 今回のテーマ |
---|---|
58 | 子供に余命宣告するか |
59 | 最後にやった健康診断 |
60 | 持っているアレルギー等の症状 |
61 | 健康のために取り組んでいるコト |
62 | 健康面の心配 |
63 | 過去の病気、入院歴、手術歴 |
64 | 家族と親戚の病歴と死因 |
65 | 患いたくない病気、恐れている病 |
66 | 抗ガン剤を使うか |
以上、健康・病気でした。
妻が泣いてしまった余命宣告のテーマが、今回もっとも重たかったです。どんな選択も完璧ではなく、どこかに悔いが残りました。宣告しようが、しまいが、「本当にこの判断は正しいのか? 子供はわれわれの選択をどう思うだろうか?」という自問自答に苛(さいな)まれるような気がします。
結論は出ませんでしたが、この話し合いはけっしてムダではなかったと思います。
筆者の中山順司さんが運営している「スキナヒト製作所」。フツーの男女のフツーの出会いをプロデュースすることに特化した、世界一マジメな恋愛インキュベーション・プロジェクトです。ただいまβテスト中につき、利用は完全無料。
このたび、スキナヒト製作所おひとり目となる独身男性をご紹介することになりました(パチパチ)。IT系プログラマ(26歳)の痩身な方です。今風に言うなら、草食系男子でしょうか。
「この人に興味あるかも」と思った方、ぜひご連絡を! 「知り合いのあの娘に教えてあげよう」などなど、ぜひTwitterでつぶやいてみてください。
シックス・アパート株式会社 / スキナヒト製作所 所長。1971年生まれ。Covenant College(米国)卒業後、携帯電話キャリアでマーケティングと営業に携わり、2000年にネット業界に転身。旅行予約サイト(現楽天トラベル)で観光旅行コンテンツビジネスを立ち上げ、その後始めた個人ブログがキッカケで、ブログソフトウェアベンダーのシックス・アパートに(現職)。
2010年12月、フツーの男女のフツーの出会いをプロデュースすることに特化した、世界一マジメな恋愛インキュベーション・プロジェクト「スキナヒト製作所(β)」を設立。
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