スピード感のある企業が持っている「叩き台文化」の採り入れ方中小企業診断士の思考術

「スピード経営」という言葉が生まれて久しいですが、現代は次々に企業としての打ち手を講じていかなければならない時代です。そんな中、「意志決定の早い企業」と「そうでない企業」とがあります。意志決定の早い会社の企業文化はなんでしょうか。その文化の採り入れ方とは――。

» 2011年01月31日 16時30分 公開
[井上龍司,Business Media 誠]
誠ブログ

 突然ですが、われわれ中小企業診断士がよく参考にしている情報源である「中小企業白書」(中小企業庁作成)から、1つのデータを紹介してみます。これは「ヒットした商品が、売れなくなるまでの期間」について中小企業の経営者に対して調査を行ったものです。

 同調査によると、1970年代までは「1度当たれば5年は安泰」と6割の企業が回答していたということになります。しかし、2000年代には、その割合は5.6%にまで下がります。逆に「1年未満」「2年未満」という企業が5割を占めるようになります。

 「スピード経営」という言葉が生まれて久しいですが、このようなデータを見ても1回の成功に安穏としていることはできず、次々に企業としての打ち手を講じていかなければならない時代であることが見て取れます。

 今回は、そのようにスピードが求められる時代において「どのようにすれば機動力のある企業になれるか」についてのアイデアをお話ししてみたいと思います。

意志決定が早い会社と遅い会社、企業文化に違いあり!

 私が関わってきた企業にも「意志決定の早い企業」と「そうでない企業」とがありました。例えば、小規模企業で経営者がワンマンでものごとをズバズバ決めていくような企業はやはりスピード感があります(もちろんワンマン経営には良し悪しありますが……)。

 しかし、比較的規模が大きく経営者がワンマンでないような企業でも、意志決定の速い企業に出会うことがときどきあります。そして、そういった機動力のある企業の多くは「叩き台文化」を持っていることに気づきました。

 例えばビジネスプランなどを考える際に、当事者の1人がその叩き台(試案)を作ってくるのです。コンサルティングやシステム開発などの現場ではよく使われる方法なのでご経験のある人もいるかも知れませんが、叩き台があるとないとでは、議論のスピードが変わってきます。叩き台がないと「各自が好きなことを言って終わる会議」になりがちですが、叩き台があれば議論はそこにフォーカスしやすくなります。そして、その差が企業のスピード感の差になってくるのです。

 ちなみに、上記の理由で「叩き台を作る」ことがコンサルタントの仕事になることもあります。顧客企業内部の人だけでは叩き台を作るスキルが足りないとか、忙しくて作れる人がいないといった場合にコンサルタントが叩き台作成を引き受けることがあります。その意味では、コンサルタントの仕事の1つは「企業の意志決定を迅速化する」ことであると言えるかも知れません。

叩き台文化を採り入れる3つのポイント

 もしみなさんが「どうもウチの企業、腰が重いんだよな……」と感じられているのであれば、この「叩き台」の考え方を採り入れてみることをおすすめします。ポイントは以下の3点です。

叩き台作成には仮説思考力が必要

 「叩き台を作る」=「ゼロの状態からある程度の形に仕上げる」ということであり、不十分なインプット情報から最終形をイメージしていくスキルが求められます(そこが叩き台を作ることの難しさであり、多くの企業において叩き台を作ることのできない理由でもあります)。

 仮説思考力についてはいずれ本ブログでも述べていきたいと思いますが、叩き台文化を醸成していく上ではまずこの「仮説思考力」というスキルを意識してください。

叩き台を叩くのはよいが、作ってきた人を叩いてはいけない

 前述したように「叩き台」は大きな意味を持っています。その点で、叩き台を作れる人はとてもありがたい存在です。したがって、叩き台の内容について意見を述べるのは結構なのですが、作成者を批判するなどしてモチベーションを下げてしまうようなことは避けたほうがよいでしょう。

「叩き台に書かれていないこと」に気をつける

 人は、目の前に存在するものに対しては意見を言えるのですが、そもそも見えないものについては気づくことすらなかったりします。叩き台の内容を検討する際には、そこに書かれている内容だけでなく「作成者が書き漏らしている内容がないか」についても意識してみましょう。

 以上の内容を参考に、ぜひスピード感のある企業を目指してください!

※この記事は、誠ブログ「Think! Think! Think! 〜中小企業診断士イノウエの思考術〜:スピード感のある企業は『叩き台文化』を持っている」より転載しています。

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