習慣、くせ、生い立ちは、その人の“生きてきた歴史”を表しています。他人に指摘されるのは気持ちのよいものではありませんが、わが身を振り返るまたとない機会でもあります。
夫婦間のコミュニケーションは難しいもの。付き合いも長いと、話題もなくなります。年中一緒に暮らしていれば、会話のネタも尽きてきますよね。そこで、ごくごく普通の夫である私が試行錯誤の上に発見した、ちょっと変わった夫婦間の「エクストリームコミュニケーション」をご紹介しています。今回のエクストリームコミュニケーションは「習慣・くせ・生い立ち」です。
「なくて七くせあって四十八くせ」などと昔から言うとおり、くせのない人はいません。くせは単なる行為(貧乏ゆすりなど)だけではなく、モノの考え方にも影響します。どうやらくせや習慣は、その人の生い立ちにも深く関係しているようです。ちなみにテーマの数字は連載記事共通の通し番号。これまでのエクストリームコミュニケーションも参考にしてみてください。
習慣、くせとはちょっと違うかもしれませんが、お互いの恐怖症について話し合いました。病的な恐怖症でなくとも、プチ恐怖症は誰しも持っていると思いますが、それを他人にカミングアウトする機会はめったにないでしょう。
私は、男性から女性に自分の恐怖症を伝えることを、「弱点をさらすようで、女々しい行為」と思っていたので、これまで一度も自分の苦手なモノ(コト)を妻に話したことはありませんでした。
妻 あなたの苦手なものは分かるよ。ゴキブリでしょ?
夫 うん、ゴキブリはぜったいダメ。
妻 あなた、遭遇すると飛んで逃げるもんね……。退治も私に任せるし。
夫 ごめん。でも、生理的にどうしてもダメでさ。もしゴキブリが大群で攻めてきたら恐怖で死ぬね。
妻 男のくせにみっともないなー。
夫 それでいくと、車でスピードを出すのも苦手なんだ。
妻 そういえば、高速道路では走行車線をゆっくり目に走るよね。
夫 スピードを出すのが怖くてさ、心拍数が上がるんだよ。
妻 もしかして、車間距離をすごくとるのはそのせい?
夫 そう。
妻 他の車がガンガン割り込んでくる理由が初めて分かったよ。
夫 追突事故の危険を考えたら、1台2台割り込まれるのなんてたいしたことじゃないかなと。
妻 1台2台どころじゃないけどね。
夫 あと、注射とかの針類も怖い。
妻 いい年こいたオッサンのくせして……。
夫 刺している最中に地震で手元が揺れて針がポキッと折れようものなら……。
妻 かなりレアな状況だよ、それって。
夫 ボ、ボクのことはこれくらいにして、キミだって何かあるだろ? プチ恐怖症が。
妻 ない。(きっぱり)
夫 1つくらいあるでしょ。
妻 いいや、ないよ。私が今まで何かを怖がったことってあった? あったら言ってみてよ。
夫 うーん、思いつかないです……。
かなり問い詰めたのですが、妻は怖いモノがなにもないそうです。女性(母)はかくも強いモノということを、改めて思い知らされました。自分ばっかり弱点をさらしてしまったようで、損をしたような気分です。
異常な車間距離の長さの謎が解けました。ノロノロ運転しがちな夫を、「なんだかなあ」と思う半面、スピード狂であるよりは安全だし、燃費にもよさそうなので、許すことにしました(笑)。
くせを自分以外の人間に指摘されるのは、正直気持ちのいいものではありません。言い方によっては夫婦喧嘩の“燃料”になってしまうテーマです。そこで、公平になるようにお互いに1つずつ交代で挙げるようにしてみました。
行為(例:指をポキポキ鳴らす等)のくせはやっている本人も割と自覚できているもので、指摘されても「そうだね、確かにね」と余裕でいられるものです。
ギクッとさせられるのは口ぐせです。「二言目には○○○って言うよね」と言われると、思考がワンパターン(なんとかの一つ覚え)であることや、条件反射っぽい浅さが露呈してしまうようで、怒りと恥ずかしさが同時にこみ上げてきました。
くせを評価し出すとかなり高い確率で口論になるでしょうから、善し悪しは切り離して、純粋に述べあうだけでよいのではないでしょうか。互いに大いに反省できました。
口ぐせって、言っている本人の自覚が薄いものなんですね……。夫にいくつも挙げられてしまい、うわーってなりました。反論できないのが悔しいです。
ここぞとばかり日ごろのうっぷんを晴らしたくなる――人も多いでしょうが、まずはおさえて気持ちを落ち着かせましょう。たとえ正論でも、相手の心に届くかどうかは、伝え方次第です。
「ダメ出しから入るのは危険すぎる」と察知したわれわれは、個人ではなく、夫婦として改善すべき行動と習慣を探すことから始めました。そうすることで共通の問題として認識でき、タッグを組んで取り組むことができます。
例えば、私も妻も不要なものは「何かに使えるかもしれないから、とりあえずとっておこう」と保管しておく習性があります。典型的な貧乏性です。何年か前の話ですが、引っ越しの荷造りをしていたときのこと、ティッシュの空箱がびっちり詰め込まれた段ボール箱が次々と押入から出てきました。もちろん用途は思い出せません。引っ越し業者さんが「こ、これも新居に運ぶのですか……?」と律儀に聞いてくれて、顔から火がでるほど恥ずかしかったのですが、こういう習性を改めるべく、大掃除をする約束をしました。
ティッシュ箱を保管したのは私です。子供のおもちゃになるかもと、大切に保管していました。われながら何を考えていたのかと。いい機会なので、タンスの中のホコリをかぶったゴミを処分しようと思います。
誰でも自分なりの「信用するに値する人かどうかを判断するためのモノサシ」を持っています。一方、自分以外の人間のモノサシを知る機会は意外にないもので、「そういう観察の仕方があったか」と新しい発見があっておもしろいです。
「信用」という表現がオーバーなら、友達になれる人、なれない人を分ける線引きの基準と言い換えてもよいでしょう。例えば、初対面で会うときに遅刻するような人間はどうなんだとか、レストランの店員さんなど目下の人間への言葉遣いにその人の本性が現れるのではないかとか、催促しないと貸した金を返さないのはどうなんだ、といった話です。
男女で観察ポイントがけっこう違うもので、そういった差を知るだけでも勉強になります。
女性は、男性以上によく人を見て観察しているような気がします。自分のモノサシが間違っている危険性もあるので、そこは気をつけないといけないかも。ですので、意見交換は役に立ったと思います。
日本古来の伝統やしきたりの諸々を、どれくらい重視するのか。善し悪しの問題ではなく、程度の問題です。「たかがしきたり」と笑うかもしれませんが、ここの温度差は実はけっこうな割合でイザコザの原因になります。
カレンダーをめくれば、たいてい毎月**の日というものがあり、しかも和洋折衷でイベントがひんぱんにやってきます。そのたびに関連する装飾や用具をどこまでそろえ、習わしにどれだけ忠実でいるのか、しかも場合によってはお金もかかる話なので、頭の痛い問題なのです。この辺の価値観のズレが発覚するのはたいてい結婚後なのも、やっかいです。
こうしたしきたりや習わしを楽しめるタイプなのか、面倒と感じるタイプなのかで衝突したりするわけですが、正解がないので解決しにくい。すべてを費用対効果で考えるのも味気ないですし、かといって際限なく追いかけるのも現実的ではないです。お金をかける額と追求するレベルの意識合わせをやっておくことをオススメします。
「自分が育った家庭ではこうだった(「だからやろう」もしくは「やらないでおこう」)」という主張は相手にとって何の意味も説得力もないことが分かっているので「それぞれの家庭でどうだったかは一切考慮に入れず、わが家ではどうしていこうか」とゼロベースで考えていくことがうまく会話を進めるコツです。
互いの子供の時の話をしても、くだらないし得るものはない。そう決めつけていました。ところが、パートナーの子供時代の育てられ方、親から受けた躾、熱中した遊び、特技を知らされると、大人である今の行動と物の考え方にリンクしていることが見えて、いろいろと腑に落ちます。生い立ち=その人の生きてきた歴史、なんだなと。
自分の育った家庭と夫の家庭との文化の差って、夫婦の方なら痛感していると思いますが、予想外の慣習やビックリ仰天の常識が山ほど出てきて驚かされます。特に私はウチナーンチュ(沖縄出身)で夫はナイチャー(本土の人間)であることが、その差に輪をかけています……。
大人になると、改まって「今年の抱負」を語る場面がなくなります。でも、目標は人に話すほうが達成しやすくなるものなので、これを機に「なんとなくだけど決心しかけているコト」や「密かに実行しようと思っているけど、どうしようか迷っているコト」を正直に話し合ってみました。不思議なもので、話してみるとグラついていた決心がまとまってくるものです。
一つ屋根の下で暮らすパートナーに抱負を語ってしまうと、実行しているかサボっているかが一目瞭然なので、頑張らざるを得なくなる効果があります。夫婦でダイエットに励んでいるのですが、お互い失敗を指摘されるのが悔しいので、体重も体脂肪率もオープンにしあっています。
No. | 今回のテーマ |
---|---|
42 | 自分の中の恐怖症 |
43 | 互いのくせを指摘しあう |
44 | 行動・習慣で改善してほしいこと |
45 | 信用できる人かどうかの自分なりの判断方法 |
46 | 重視するしきたり、習わし |
47 | 互いの生い立ち |
48 | 身につけたい習慣 |
以上、「習慣・くせ・生い立ち」でした。
かのアインシュタイン博士は、「常識とは、18歳までに身につけた偏見のコレクションのことをいう」と言いましたが、その人の習慣やくせについても当てはまる部分があると思います。数十年かけて築き上げられてきたパートナーの習慣やくせを短期間で矯正しようとしても、たぶん徒労に終わります。
自分にとっては受け入れがたいものであっても、個人的な好き嫌いはいったん脇に置いて、「こう考える(行動する)に至った理由はなんだろう?」と互いの生い立ちをさかのぼるほうが、よほど生産的な話し合いにあります。
ただ、真顔で尋問風にすると相手も話しづらいでしょうから、遊びのノリでやってみることをオススメします。
シックス・アパート株式会社 / スキナヒト製作所 所長。1971年生まれ。Covenant College(米国)卒業後、携帯電話キャリアでマーケティングと営業に携わり、2000年にネット業界に転身。旅行予約サイト(現楽天トラベル)で観光旅行コンテンツビジネスを立ち上げ、その後始めた個人ブログがキッカケで、ブログソフトウェアベンダーのシックス・アパートに(現職)。
2010年12月、フツーの男女のフツーの出会いをプロデュースすることに特化した、世界一マジメな恋愛インキュベーション・プロジェクト「スキナヒト製作所(β)」を設立。
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