心に潜む、得体のしれないお金の恐怖に向き合う――住居・財産・資産夫婦で始める“エクストリームコミュニケーション”

今回は「住居・財産・資産」について。住まいをどう整え、財産をいかに管理するか。日々の生活により密着したテーマであるからこそ、パートナー同士の意識共有が重要になります。

» 2011年01月14日 18時45分 公開
[シックス・アパート 中山順司,Business Media 誠]

 夫婦間のコミュニケーションは難しいもの。付き合いも長いと、話題もなくなります。年中一緒に暮らしていれば、会話のネタも尽きてきますよね。そこで、ごくごく普通の夫である私が試行錯誤の上に発見した、ちょっと変わった夫婦間の「エクストリームコミュニケーション」をご紹介しています。今回のエクストリームコミュニケーションは「住居・財産・資産」です。

  1. 金銭感覚
  2. 教育/育児
  3. 住居/財産/資産←イマココ
  4. 仕事/キャリア
  5. 習慣/くせ/生い立ち
  6. 趣味/嗜好/思考
  7. 健康/病気
  8. 家事/食生活/日常生活
  9. 夫婦/人間関係
  10. 社会問題/政治
  11. 親/家族/親戚
  12. 道徳/倫理
  13. 老後/ライフワーク

 3回目は「住居・財産・資産」についてです。第1回目の「お金・金銭感覚」では、1億円の使い道だとか我慢できる最低限の生活など、やや現実離れしたものでした。今回はその延長線上の「もうちょっとリアルな」テーマになります。

 住居は1年365日の生活に直結する部分。財産・資産は人生という中長期的な日々の過ごし方につながるこれまた大切な部分です。ちなみにテーマの数字は連載記事共通の通し番号。これまでのエクストリームコミュニケーションも参考にしてみてください。

テーマ25:中古でもかまわないモノ、新品でないとガマンできないモノ

 モノに対するこだわりとその理由は人それぞれですが、このこだわりがパートナーとキレイに一致することはありません。双方のギャップがどこに、どれくらいあるのかを知っておくことで、後々のトラブルの種を未然につんでおくことができます。

 そこで、こだわりの強さを計るために、身の回りのモノを「新品購入しないとガマンできない」と「中古でもかまわない」の2つに分けてみることにしました。

 あらゆる所有物、家でも車でも家電でもいいんだけど「買うならぜったい新品でなくちゃダメ」と思うモノってある?

 清潔で品質が保たれてさえいれば、家でも車でも家具でも家電でも中古でかまわない。小さいころからモノへのこだわりがあまりないんだよね。あなたはどう?

 僕も中古でほぼ問題ない。実際、家も家具も中古だし、本やCDはブックオフ。今の車は20万キロ乗りたいし、壊れたら中古でかまわない。強いて言えば、PCやデジカメの精密機械だけは保証の関係で新品がいいけど。

 私はPCとか家電に興味ないから、それさえも中古でオーケー。

 なんでも中古でいいの? これはぜったい中古はヤダってない? 例えば服は?

 清潔なら気にしないよ。ただ、Tシャツとか直接肌に触れるものだけは生理的に受け付けないのでパス。それでいくと食器もイヤだな。

 確かに食器は気持ち悪い。まあ、食器は100均で賄えるから中古の必要性はないね。

 こうやって家の中をあらためて見回してみると、中古品ばかりだね。

 行き当たりばったりの買い物しかしてないから、コーディネートとかこれっぽっちもない。

 カーテンの柄がそろってない部屋もあるし……。他人様に見せられないよ。

 もし僕らの片方がインテリアにこだわるようなタイプだったら、大喧嘩してただろうね……。でも、ふつう女性ってさ、もっとこう壁に絵を飾ったり、棚の材質を吟味したり、食器の模様をそろえたりするのに精を出すものじゃないの?

 そーゆーの、昔からぜんぜん興味ないの。家なんて住めればいいのよ。お金がかからない妻に感謝しなさい。

 ありがとうございます……。

 2人とも物品へのこだわりが薄いので、ラッキーにも平和な話し合いになりました。が、これは極めてレアケースだと思います。

 私の物欲の低さは、女性にしてはかなり珍しいほう。そのせいで世の女性より(男性からモノを買ってもらっていなくて)損をしているのかなと思ったりして、なんだかスッキリしません(苦笑)。


テーマ26:貯蓄スタイル

 貯金しているかどうか、額はいくらなのかの把握も大切ですが、ここで話すのは「貯蓄の方法」について。だいたいの人が、決めた額を給与から引き落として残金でやりくりする堅実派か、金額は決めずに残った額を貯金するおおざっぱ派のどちらかではないかと思います。どのスタイルをチョイスするかは、その人の性格によるところが大きいのではないでしょうか。

 ついでに目標額と目的も話しあってみました。たとえ貯蓄スタイルが異なっても、共通の目標と目的を持つことで二人三脚していけるのではないかと思います。

 男性は電卓を叩き、緻密(ちみつ)に計画を立てていく人が多いような気がしますが、女性としては息が詰まる時もあります。時々ご褒美できる仕組み、例えば500円玉貯金をして、一定額貯まったらデザートを食べに行くとか、仕組みの中に”遊び”を入れたいですね。


テーマ27:収入に対する貯蓄の割合は

 上の貯蓄スタイルからの続きです。いったい収入の何パーセントを貯蓄に充てるべきなのか、これまたルールはなく、考え方は個人次第。ネットで軽く調べてみた結果、死守すべき最低ラインは手取り年収の10パーセント。理想は20パーセントで、それ以上あれば磐石(ばんじゃく)とのこと。通帳と家計簿両方を持ち寄ってメモりながら話し合うと、濃い内容になります。

 蛇足ですが、夫婦そろって通帳と家計簿にじっくり目を通すたびに、お互い「節制しなくちゃ!」と気持ちを引き締められます。こういう効果を得られるだけでも、お金の話し合いは月イチの頻度で行うべきだと思います。

 自慢ではないですが、結婚してから1度も赤字になったことはないばかりか、パーセンテージ的にも文句のつけようのない家計の舵取りをしてきました。そのことを改めて夫にほめられてうれしかった!


テーマ28:資産運用スタイル

 ある程度まとまったお金があると、銀行口座の肥やしにするのがばかばかしくなり、貯金以外の運用も視野に入ってきます。株、FX、先物や金、外貨、土地、マンションなど、選択肢は幅広いですが、この時「いくらを何にどう分配していくか」は、貯金スタイル同様、その人の性格と考え方が反映されるもの。

 この場合、運用手段に加えて「増やしたお金をどうするの」「なんのためにお金が欲しいの」「それで本当に満足感を得られるの」「それを手に入れた後はどうするの」などのそもそもの目的を論じてみましょう。ふと我に返ることができ、より冷静に話し合えます。

 お金の増やし方とか運用については素人なので、あまり私からは言うことはなく……。とにかく危険なことには手を出さないでほしい。それだけです。


テーマ29:マンションか戸建か――“利便性”を定義せよ

 どっちに住みたいかという話です。マンションに慣れた人から、「階段の上り下りが面倒だから戸建は嫌い」という話を聞いた時、2階建ての家育ちの私には「階段がデメリットになるのか」と驚いたことがあります。われわれはお互い2階屋育ちだったこともあり、意見が一致して話し合いは即終了。やはり、子供のころに育った環境が影響しているようです。逆にマンションのメリットを知らないので、先入観で「マンションは不便で住み辛い」と決め付けていたことも分かりました。

 注目したいのは、話し合いの中で何度か出てきた“利便性”というワード。これ、定義が人によってずいぶんズレがありますね。“利便性”の定義を整理してみるだけでも、頭の中を整理できます。例えば、駅近ひとつとっても「公共交通網にすばやくアクセス可能」がメリットにもなれば、「騒音がうるさく不快」がデメリットにもなります。「住環境における利便性」とは何を指すのか、洗い出してみましょう。

 我を出しすぎると結局お互いに不満が残るので、ギブアンドテイクで歩み寄るしかないですね。両者にとっての70点を目指すのがコツかと。


テーマ30:賃貸か持家か

 きっと、住まいにおける永遠のテーマだと思います。結婚生活を始めると、住宅購入の話が自然に出てきます。ですので、この話題を普段から活発にしているご夫婦は多いでしょう。どちらのコストパフォーマンスが高いか、メリットがあるかは専門の情報媒体に任せます。

 すでに購入済の私たちにはあまり関係ない話だったので、代わりに「将来死ぬまでここに住みたいか」「老後引っ越すことに抵抗があるか」「今住んでいるこの市町村(都道府県)に愛着はあるか」「住みたい市町村(都道府県)はどこか」をディスカッション。実際に老人になったら考え方は変わるかもしれませんが、現時点の互いの考え方が知れてよかったです。

 老人になった時に、今の場所に住み続けたいか、移住したいかの話は盛り上がりました。老後の話はたいてい湿っぽいものになってきますが、このテーマについては明るく話せて楽しかったです。


テーマ31:お金以外の財産や資産

 金銭感覚の時に「お金で買えないモノってなに」というのがありました(その時は、「家族、愛情、信用、犯罪歴を消すことなど」を挙げました)。

 ここでの対象は「すでに所有している、お金に換算できない財産」。われわれがまっさきに挙げたのは、健康でした。健康でい続けると医療費が抑えられるといった単純な話だけではなく、人生の一瞬一瞬が充実する、すなわち「Quality of Life」(生活の質)が向上することに価値を見出しました。まさにお金には換算できない価値です。

 私も健康以外に思いつきませんでした。健康であればなんでもできるとは言わないけど、健康でなければしたいことのほとんどに支障が出てしまうので。なにはともあれ、健康第一ですよね。


テーマ32:住みたくない都道府県はどこか

 ばく然と海(山)が好き、緑のある生活が好き、スーパーや病院が近くにあって便利な場所がよい、ゴミゴミした場所は嫌いといったイメージの話からは、表面的な価値観しか見えてきません。緑が嫌いな人は少ないし、便利な場所は誰だって好きだからです。

 そこで、住みたくない都道府県(市町村)とその理由を互いに挙げてみました。嫌いなものの話で盛り上がるのは、行儀が悪い話ですね。行ったこともないのに先入観だけで嫌っている場合もあるのは承知の上で話し合ってみると、われわれは「天候、食べ物、県民性」の3つで好き嫌いをしているのが判明しました。

 「○○人は付き合いにくい(に違いない)」「××は住みづらい(気がする)」と饒舌(じょうぜつ)だったのに、たった3つの要素だけで都道府県を評価していると分かった後は、なんだか自分たちが薄っぺらいところしか見ていない人間のようで、恥ずかしくなりました。特に県民性にいたっては固定観念もいいところ。実に失礼な話です。

 夫が私の出身地(沖縄)を嫌いだったことを知り、ショック。しかもニガウリが不味いというだけで……。許せん。夫がなんと言おうと、ニガウリはおいしいし、沖縄はいいとこです♪



No. 今回のテーマ
25 中古でもかまわないモノ、新品でないとガマンできないモノ
26 貯蓄スタイル
27 収入に対する貯蓄の割合は
28 資産運用スタイル
29 マンションか戸建か
30 賃貸か持家か
31 お金以外の財産や資産
32 住みたくない都道府県はどこか

 以上、「住居・財産・資産」についてでした。

 夫婦で真剣にお金の話をして思い知らされたのは“自分の心に潜む得体のしれない恐怖”。この正体を突き止めていくと結局はお金に行き着きます。自分の行動(外食を控える、こまめに家じゅうの電気を消す、車の代わりに自転車で移動するなど)の因果が見えてきました。

 お金についてじっくり時間をかけて話をする前は、事実を知ってしまうことがイヤで尻込みをしていたようです。しかしいったん理解が進むと、恐怖の膜が1枚1枚と剥がされていくようで、最終的には逆に気持ちのよい話し合いになりました。これは精神衛生上、とてもよいのでオススメ。お金の苦労からはなかなか解放されないものだからこそ、夫婦で気兼ねなく話し合う土壌を作っておきたいものですね。


著者紹介:中山順司(なかやま・じゅんじ)

 シックス・アパート株式会社 / スキナヒト製作所 所長。1971年生まれ。Covenant College(米国)卒業後、携帯電話キャリアでマーケティングと営業に携わり、2000年にネット業界に転身。旅行予約サイト(現楽天トラベル)で観光旅行コンテンツビジネスを立ち上げ、その後始めた個人ブログがキッカケで、ブログソフトウェアベンダーのシックス・アパートに(現職)。

 2010年12月、フツーの男女のフツーの出会いをプロデュースすることに特化した、世界一マジメな恋愛インキュベーション・プロジェクト「スキナヒト製作所(β)」を設立。


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