全文公開! Ustream初出演、池上彰さんの仕事術(後編)Real Time Webな働き方(1/4 ページ)

10月28日に生放送した「my Workstyle on Real Time Web powered by Lotus」の第5回、ゲストはジャーナリストの池上彰さん。後編では会場からの質疑応答の内容を全文公開! 話の引き出し方や話し下手の克服といったハックに加え、池上さんがNHKを辞めた理由、日本のメディアに対する問題点の指摘など盛りだくさんの内容になりました。

» 2011年01月06日 13時00分 公開
[藤村能光Business Media 誠]

 10月28日に生放送した「my Workstyle on Real Time Web powered by Lotus」の第5回。ゲストにジャーナリストの池上彰さんを迎え、同時視聴数は1700人にも及びました。今回、全放送内容をテキスト化。後編は番組後の質疑応答をフォーカスしました。話の引き出し方や話し下手の克服といったハックに加え、池上さんがNHKを辞めた理由、日本のメディアに対する問題点の指摘など、多岐にわたる質問に池上さんが答えました。前編中編もあわせてご覧下さい。


池上さん(左)と津田さん(右)

相手の息遣いを同期して、話を引き出す【1時間6分0秒前後】

津田大介(以下、津田) では会場の質疑応答を受けたいと思います。一番後ろの方。

質問1 お話が聞きたくて仙台から参りました(会場拍手)、石井力重と申します。貴重なお話ありがとうございました。池上さんは自分のペースで話されているようでいて、実に相手のペースを引き出す形でしゃべられているように見えます。若干緊張されている津田さんが徐々にペースを取り戻していました。

津田 それは緊張しますよ(笑)

質問1 相手のペースを引き出すこつはありますでしょうか?

池上彰(以下、池上) それは津田さんの息づかいにどれだけあわせるかだと思うんですよ。相手の話を引き出そうとする時に、無意識に津田さんの息づかいを見て、同じような呼吸にしながらどうですかと聞いていくと、何となく(話が)出てくるのかなと思うのです。

津田 息づかいを見るというのは、より具体的に言うとどういうことでしょうか?

池上 うんと早口でどきどきどきどきして、はっはっはっはと(呼吸を)しながら最初は速いペースでやりとりをしていき、少しずつペースをゆっくりしていくと、津田さんの話し方も緩やかになってくるのかなと。まずは同調、同期させてペースを落としていく。結局私の話のペースに巻き込むということでもあるんですけれども。

津田 池上さんが一番話しやすいペースはどれくらいですか?

池上 今より早いくらいですね。実際私はとっても早口です。何でもあーっと言って、口がついていかないよということもあるのですが、それは(話の流れに)ついていけない方もいるだろうということで、意図的にゆっくりしゃべるようにしています。あるいは緩急をつけるというところです。わあっと早口で話しながら、ここはどうしても聞いてもらいたいというところで、一呼吸をおいてゆっくりしゃべる。一呼吸おくと(相手が)「おっ」となる。そこからゆっくりしゃべると聞いてくれるのです。

津田 トレーニングを受けたのではなく、自分で編み出したテクニックなのですか?

池上 NHKでアナウンサー採用されると、そういうことを徹底的に教えてくれるのですが、私は記者(採用)でしたから。取材の仕方や原稿の書き方は教わりましたが、そういう(指導)ことは一切、一切(力を込めて)受けませんでした。ある日突然キャスターをやれと言われて。まあアバウトなもので、その程度のゆるゆるの組織なんですよ。外からみるほどがちがちなものじゃないんです。

津田 はじめてキャスターをやれと言われた時はどうでしたか?

池上 「ええー」ですよ、まさにそれは。「何で」って。ある時突然、「おまえ4月からキャスターな」って言われて「えっ」っていったら、「決まったことだから文句を言わないように」と言ってすっと行っちゃって、それでおしまいです。

津田 そのキャスターで学ばれたことが、ご自分の著作活動にも相当生きているのですね。

池上 ニュースをやる時に気付いたんですよ。私はアナウンサーではなく記者なんだと。上手にきれいにしゃべるならアナウンサーで良いだろうと。何で俺がキャスターをやることになったのか。アナウンサーにはないこと、それは取材体験であり、ニュースが出てきた裏側が分かっているからだろうと。だから、それを伝えようと。

 それを毎日毎日生放送でやっていたら、生放送では伝えきれないことがいっぱいでてくるんですよ。これをいっそのこと模型を使えば分かりやすくなるのに、そんな時間がないなという不満が溜まっていたら、「こどもニュースをやりませんか」ということになりました。いや「こどもニュースをやってくれないか」ということを報道局長から言われて。文字にすると依頼疑問系なのですけど、世間で言うと業務命令です(笑)。やらざるを得なかったのですが、これは1つのチャンスだなと思ったということですよ。

津田 思いがけずいい話が聞けましたね。

池上 それは良い質問があったからなのです(会場拍手)。

津田 本当にいい質問でしたよね。

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