コストと業務効率の折り合い新入社員が挑戦! ビジネスプリンタ/複合機の選び方

「それぞれの組織で必要なビジネスプリンタ/複合機を選んでください」。総務部からの指令を受けた新入社員のダイチ、クミ、リエは、それぞれが所属する組織に最適な機器を選びました。3人と実際に導入の最終決定をする総務部イーノさんの選び方には少し違いがあるようです。

» 2010年11月17日 12時30分 公開
[藤村能光,Business Media 誠]

 2010年にアイティメディア……もとい、イットメディアに入社したダイチ、クミ、リエは、所属する組織に導入するビジネスプリンタ/複合機を20万円という予算内で選ぶことになりました(新入社員が挑戦! ビジネスプリンタ/複合機の選び方)。

 新規事業を手掛けるダイチは使い勝手を重視し、導入後も迷いなくチームのメンバーが使えるよう従来メーカーのバージョンアップ製品を、時に1000枚もの資料を印刷するイベント運営部のクミは「高速」「大量」がキーのビジネスプリンタを、編集部に所属するリエはオフィスワークが多い編集部の仕事の妨げにならないように、稼働音などの静音性を判断軸に、複合機の候補を挙げました


名前 担当部署 新規/買い替えの経緯 選んだ機種 選定理由
ダイチ 新規事業部(10人) 10人が働く事務所では、プリンタやファクスを個別に導入していた。今回を機に、オフィススペースを圧迫しないコンパクトサイズの複合機を選択 ブラザー工業:複合機「MFC-9840CDW 使い勝手を重視し、従来使っていたメーカーの新機種を選択
クミ イベント運営部(8人) 主に数十人から1000人規模のイベント企画を手掛け、印刷物が多い。チームの印刷効率を上げるためのプリンタ/複合機の新規導入を検討中 京セラミタ:A4モノクロプリンタ「Ecosys LS-4020DN 印刷枚数が多いため、印刷速度を重視
リエ 編集部(3人) 一人当たりの仕事量が多く、事務作業などで業務時間が圧迫される日々。機械にできる部分は機械に任せようという合理的視点でプリンタ/複合機の新規導入を考える キヤノン:A4カラー複合機「Satera MF8350Cdn」およびコニカミノルタ:A4カラー複合機「magicolor 1690MF 業務を妨げないために、稼働音の小さいモデルを選定

 3人はそれぞれの所属組織において最適と判断したプリンタ/複合機を選びました。一方、実勢価格や業務効率を比較しながら実際の導入を検討する総務部の視点は、3人とは少し異なっています。最終回では、3人の考え方に対する総務部イーノさんのフィードバックを伝えます。

総務部はどうみるか

イーノ まずはイットメディアの総務部が、ビジネスプリンタ/複合機を選ぶ上で検討するポイントを伝えましょう。

  • 用途……営業、研修、管理といった業務ごとに主な用途が変わるため、それを踏まえてビジネスプリンタ/複合機を選ぶ
  • トータルコスト……本体価格に加え、紙やトナー、メンテナンスといったランニングコストがどれだけ安くなるかという総合的な視点を持つ
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 ダイチさん、クミさん、リエさんの3人とも、所属する組織の課題を解決する視点でビジネスプリンタ/複合機を選びましたね。選定の理由はそれぞれ「使い勝手やアフターサービスを担保するため、これまで使っていた機種のバージョンアップ版」(ダイチ)、「短時間の大量印刷を実現するための印刷速度やファーストプリントタイム」(クミ)、「1台でコンテンツ作成に寄与する機能、仕事の邪魔にならない静音性」(リエ)でしたね。総務の視点でいうと、最初のポイントである「用途」の部分はすべてOKです。

 ですが、会社全体では「ビジネスプリンタ/複合機を導入することで、どれだけのコストが掛かるか」をつぶさに検討しないといけません。

 企業導入の場合、人数が10人程度の場合でも、まずはレーザープリンタの導入を考えるのが一般的といえます。なぜなら、ランニングコストの1要素であるトナー代がインクジェットプリンタに比べて安いからです。また、モノクロ/カラーのどちらにすべきかも熟考しましょう。一般的にカラーのトナー代はモノクロの2.5〜3倍程度です。いくら本体価格が安くても、ランニングコストがかさむようではいけません。

 会社全体で単一メーカーの機種を導入している場合は、そのメーカーの製品を選ぶという視点は「アリ」です。ボリュームアカウントによってトータルコストが抑えられるからです。この点では、従来使っていたメーカーの新機種を選んだダイチさんは、総務部からの決裁がおりやすい選び方といえるでしょいう。

 またオフィススペースを有効活用するという視点で、3人とも卓上プリンタを検討しましたね。ですが、複合機などに比べて、1枚当たりの印刷コストが高くなる場合もあるので注意が必要です。本体が安いプリンタを購入しても、総務部がプリントコストの削減を全社に周知し、現場の業務が滞るようではいけません。せっかく導入したプリンタを「塩漬け」にしてしまっては、本末転倒です。最初にも伝えた通り、10人以下の組織でも使える安価な複合機はあるのです。

メーカー プリンタ 種類 ランニングコスト
ブラザー工業 MFC-9840CDW A4カラー複合機 カラー15円、モノクロ3円
京セラミタ Ecosys LS-4020DN A4モノクロ複合機 モノクロ0.6円
キヤノン Satera MF8350Cdn A4カラー複合機 カラー約16円、モノクロ約3.1円
コニカミノルタ magicolor 1690MF A4カラー複合機 カラー15.5円、モノクロ3.3円

どれを選べばいいか分からない場合

価格.comで「プリンタ」を検索 実勢価格を調べるためには、価格比較サイトを参考にしてみよう

イーノ もし「種類がありすぎて、どれを選べばいいか分からない」という場合には、比較サイト「価格.com」などで実勢価格をチェックしてみてください。3人が選んだ機器はどれも本体価格が10万円を超えていました。確かに予算は20万円までとしましたが、10人以下の部署で使うには少しハイスペックなのでは、という印象です。検討の対象になった製品の本体価格と実勢価格は以下の通りでした。


製品名 選定者 本体価格 実勢価格
MFC-9840CDW ダイチ 10万9980円 7万9999円前後
Ecosys LS-4020DN クミ 15万5400円 10万6562円前後
Satera MF8350Cdn リエ オープンプライス 7万1605円前後
magicolor 1690MF リエ 13万1040円 6万1912円前後

 また、大手メーカーの製品から検討してみるのもいいでしょう。市場において一定のシェアを獲得している企業は価格競争力があり、本体・消耗品ともに安く提供しています。富士ゼロックスやキヤノン、リコー、エプソン、ブラザー工業、それに追随する沖データや京セラミタの製品から絞り込むというのも1つの手といえます。

業務効率を訴求する場合の注意点

イーノ 選んでもらった製品を導入することで、業務効率がどれだけ上がるかという点は、3人とももう少し検討が必要といえるでしょう。「職場の生産性が上がる」というロジックは理解できますが、そのためにプリンタ/複合機を導入するとなると、少し話が違ってきます。

 総務部の立場としては、業務効率の改善というポイントも分かるのですが、機器の導入にはなるべくコストを掛けたくないものです。場合によっては、「空いている時間を有効活用するなりして、効率改善の方法を考えてみてはどうか」とアドバイスしてしまうこともあるでしょう。

リアルタイム印刷:「ファーストプリントタイム」を意識

 ここは個別にコメントをしていきましょうか。まずはリアルタイムの印刷業務が多く、プリント枚数が少ないリエんさんの場合は、1枚目の印刷時間を示す「ファーストプリントタイム」を意識するといいでしょう。印刷を実行してから用紙が出てくるまでに時間がかかるなら、「イットメディアにある複合機を使ってください」ということになりかねません。

大量印刷:「印刷速度」「給紙枚数」を判断材料に

 大量印刷の場合はカセットの容量、つまりプリンタの給紙枚数を考えるといいでしょう。この点はクミさんが検討してくれましたね。例えば1部30枚の資料を10セット印刷する場合、用紙は300枚必要です。一方、一般的なビジネスプリンタは給紙枚数が200枚のタイプが多いです。何度も用紙を補充するのは手間になりますね。

 クミさんの場合、イベント運営部が実施するイベントの頻度、平均の印刷枚数を月当たりで算出し、共用の複合機と新たに導入する機器で印刷枚数をどう配分するかを考えてみましょう。その数値に現実性があり、業務効率の向上と掛かるコストのバランスが取れれば、決裁を取りやすくなりますね。

使い勝手:従来のメーカーを選ぶという視点

 ダイチさんは、従来事務所で活用していたメーカーの複合機を選びましたね。印刷速度や枚数に対する検討は少なかったと思いますが、実はこの視点、大事なのです。業務効率という観点では、「今までと同じ操作性」がキーになります。使い勝手が変わるととまどってしまうユーザーも少なくありません。


 ビジネスプリンタ/複合機の選定には、ダイチ、クミ、リエのような「現場で働く人」の用途が第一ですが、企業として導入コストや業務効率の観点がうまく折り合わなければいけません。職場でのビジネスプリンタ/複合機の導入、あなたも上記のポイントを参考に進めてみてはいかがでしょうか?

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