Twitterやブログ、Wikipediaなど、数多くの情報発信が、ほとんど無償の“Webボランティア”によって行われています。金を払えば動くという単純な問題でもないようですし、どのようなモチベーションで活動しているのでしょうか。
一体、彼らのモチベーションの源泉は何なのでしょうか?
Twitterによると世界で毎日5000万回以上、140文字のつぶやき情報が発信されています。日本国内のブログだけでも、毎月4000〜5000万件程度のエントリーが投稿されていると言われています。Wikipedia、オープンソース、言語の翻訳、Q&Aサイト、SNSなど数多くの情報発信やクリエイティブが、ほとんど無償の“Webボランティア”。一体、彼らのモチベーションの源泉は何なのでしょうか?
ダニエル・ピンク氏が自著『モチベーション3.0』で唱えているように、情報を発信したり、編さんするというクリエイティブなタスクは、金を払えば動くという単純な問題でもないようです。
「ドゥンカーのろうそく問題」という洞察力を試す有名な実験がありますが、金を払ったグループは、払わないグループよりも逆に成績が悪くなりました。さらに金額を増やせば増やすほど、成績は悪くなったそうです。
野村総研によればマスコミ関係者がおよそ30万人いる一方で、ブロガーは1800万人、それを読む人が8000万人にもなる見込みだそうです(2011年度末見込み)。このうち、マスコミ関係者以外は基本的に無償で情報を発信、編さんしているボランティアたちです。
ダニエル・ピンク氏は、20世紀のタスク、すなわちゴールが明確でルーティンワークがメインの時代には従来のインセンティブ方式が効果を発揮したが、21世紀のような洞察力を要する創造的なタスクには「アメとムチ」が逆効果なのだと言います。
この事実は、行動科学の世界では常識的であるにも関わらず、ビジネスの世界ではいまだ当たり前のこととして、あらゆる面で活用されています。「もっと働け!そしたら、ボーナスあげてやる!」しかし、こうした誤解のせいでマイクロソフトは大失敗を犯しました。
例えば、大きな予算をつぎ込んだマイクロソフトの百科事典「Encarta」。これが無償のボランティアが参加するWikipediaが見事に打ち負かしたことを考えれば、いかにビジネスの常識と人々との行動に大きなギャップがあることを納得できるのではないでしょうか。
今の時代にWebサービスや情報コミュニケーションはどうあるべきなのか、とても悩ましいところです。わたし自身は、その鍵は「貢献と賞賛」にあると思っています。
ある大いなる目的に賛同し、それに「貢献」したいという気持ち。そして、自分以外の誰かに貢献した見返りとして「賞賛」されるということ。大いなる目的が、しっかり共有され、賞賛がしっかりフィードバックされるシステムが、これからのWebボランティアたちの根源的なモチベーションとなるのだと思います。
金銭的なインセンティブによらずに人々のモチベーションに火を灯すノウハウがあるとすれば、それこそ究極の錬金術――かもしれませんね。ああ、またカネの話をしてしまった……。
知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。
リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。その後、デジタル業界に興味を持ち、デスクトップパブリッシングやコンピュータグラフィックスの専門誌創刊や、CGキャラクターの版権管理ビジネスなどを構築。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。
近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』(中経出版刊)がある。
連絡先: nagata@showcase-tv.com
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