部下や後輩を営業のスランプから脱出させる「お客様プロフィール」作り研修に行ってこい!

営業目標や社内競争は、恐らく成果が出ている限りあまり気にはならないはずですが、多くの人がストレスを感じるほど気にしている模様。こうした内向きのエネルギーをお客様のプロフィール作りに変えることで新しい営業のきっかけができるのではないでしょうか。

» 2010年07月22日 10時00分 公開
[原田由美子,Business Media 誠]

 2009年8月〜9月にかけて産業能率大学が営業職5年以下の男女500名を対象に調査しました。調査結果によると、営業活動上ストレスに感じることの上位は、

  1. 営業目標(79.4%)
  2. 社内の競争(70.8%)
  3. 顧客の新規開拓(65.4%)

 ――となっています。営業目標や社内競争は、恐らく成果が出ている限りあまり気にはならないはずです。それでも7割以上が営業目標や社内競争を気にしているのは「安定的に成果がでないこと」に対する漠然とした不安を感じているからなのかもしれません。

スランプをチャンスに変えるコツ

 筆者も営業歴約20年ですが、営業目標を自分で作り取り組んでいるものの「なぜ、こんなに大変なことを続けているんだろう?」と思う時があります。特に環境が大きく変わり、何をやっても成果が出ない時や、お客様の要望が変化し、それに対応できていない時などは、スランプに陥って「もっと楽な道を選べなかったものだろうか……」と悲観的な気持ちになります。

 しかし、そのようなときほど基本に戻り、情報を整理することにしています。というのも整理した情報から、お客様が必要としているサービスや商品の糸口が見え始めるからです。こうした糸口を元に、自社の商品やサービスの切り口(見せ方)を変えて情報提供すると、「興味があるので資料を送ってください」、あるいは「詳しい話を聞かせてください」と言う流れになることが多いのです。

 スランプ脱出のきっかけとなる“流れ”を作り出すための情報整理とは、「お客様プロフィール」の作成。ほとんどの企業ですでに顧客データはありますが、あえて「お客様プロフィール」を自分で作ります。作成するプロフィールは、取引を拡大したいお客様ですので、自分が担当するお客様全てということではありません。大体10社前後です。今では「手応えがないな」と感じると、お客様プロフィール作りをします。そうすることで、スランプの兆しがチャンスに変わっています。

お客様プロフィール作成のポイント

 さて、それではお客様プロフィールをご紹介します。作成するプロフィールは2種類です。1つは企業情報、もう1つは担当者の情報です。情報は、インターネットで企業のWebサイトのIRや新卒採用のページなどを確認。担当者情報は、既に取引のある企業であれば、過去の訪問履歴や前任者からの情報を元にします。

企業情報

  • 会社名(かな文字の読み方)
  • 代表者名
  • 住所
  • 主要拠点(拠点数)
  • 組織図
  • 設立
  • 従業員数(平均年齢)
  • 資本金
  • 決算期
  • 主要取引銀行
  • 企業理念・方針
  • 経営目標(中長期経営計画など)
  • 主要商品
  • 主要取引先
  • 競合となる企業(業界内順位)
  • 核となるビジネスモデル、技術など
  • 備考新製品情報、新聞や雑誌などメディア情報、体験情報

担当者情報

  • 事業部門の責任者名
  • 担当部署名(かな文字の読み方)
  • 担当者役職・名前(かな文字の読み方)
  • 電話/ファックス番号
  • メールアドレス
  • 取引に至った背景(自社への期待)
  • 現在の取引状況
  • 仕事を進める上での留意点
  • 担当者の特徴(繰り返しおっしゃっていることなど)
  • そのほかの情報(経理部門、営業事務担当者から得た情報など)

変化を読み取り、対応策を準備する

 太字の部分は、特におさえておきたいポイントです。自分で記入してみると、意識できていなかったことやお客様の変化に気がつきます。「変だな?」と感じる時の多くは、トップやその事業に関わる責任者が変わったタイミングだったり、新しく会社を買収していたり、海外進出等の方針が出ていたりと、変化していることが多いものです。新規開拓であれば、自社サービスを紹介するきっかけにもなります。

 そして、変化していることが分かれば、「なぜ変化したのか」「今後どうしていこうとしているのか」など、直接聞かなければ分からないことが出てくるはず。「お客様に直接聞かなくてはならないこと」が出てきたらチャンス。知りたいことを整理して、質問を準備します。

 とはいえ、このままではお客様にとって「会う理由」は生まれません。

 そこで、もう1つやらなければならないことがあります。同じ業界、あるいは違う業界で、似たように変化した企業の事例を探し、それに対して自社がどのような対応をしたのか社内に事例がないかを探します。自社に事例がなければ、新聞や雑誌の記事などで探してもよいでしょう。それも見つからなければ、“こういうことが必要なのではないか”という仮説を立てます。これは、既に取引がある場合、新規でお客様を開拓する場合も同様です。

 一見手間がかかりますが、1社で準備したことは多くの場合、同様の課題を抱えるほかの企業の攻略にも役立ちます。やみくもに電話や訪問をして、印象を悪化させるよりも建設的で効果的です。

 部下や後輩がスランプに陥っていると感じたら、「お客様プロフィールの作成」をさせてみて、提案の糸口がないか、アドバイスしてみてください。なお、「お客様プロフィール」は、マネジメントや営業同士の引き継ぎ、営業アシスタントなどほかの部署との情報共有にも効果的。なるべくリアルなお客様プロフィールを作って、活用してみてください。

 次回は、お客様プロフィールを元にした、「アポイントのためのスクリプト作成術」を紹介します。


著者紹介:原田由美子(はらだ・ゆみこ)

 大手生命保険会社、人材育成コンサルティング会社の仕事を通じ、組織におけるリーダー育成力(中堅層 30代〜40代)が低下しているという問題意識から、2006年Six Stars Consultingを設立、代表取締役に就任。現在と将来のリーダーを育成するための、企業内研修の体系構築、プログラム開発から運営までを提供する。

 社名であるSix Starsは、仕事をする上での信条として、サービスの最高品質5つ星を越える=クライアントの期待を越える仕事をし続けようとの想いから名付けた。リーダーを育成することで、組織力が強化され、好循環が生まれるような仕組みを含めた提案が評価されている。


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