それでは解説です。
部長のせいでみんなの元気がなくなったことは確かです。しかし、ストレートに「部長のせいです」と言うのはやめたほうが無難。
必要以上に批判をしてくる人は、心の深いところで、「自分が一番優秀だと認めてほしい」と思っている場合があります。ですから、ストレートに「部長は間違えています」と言ってしまうと、部長は傷ついてしまうか、または、あなたに対しても批判の矛先を向けてくる可能性があります。
ストレートに伝えることは、「ケンカになっても構わない」と思うときや、「もはや万策尽きた」となった場合にとる最終手段として考えて下さい。
批判してくる人に対しては、まずはその批判を認めてあげることが大事。ほんのわずかでも、「もっともだな」と思った個所について、「確かにご指摘の部分は考えないといけないかもしれませんね」と、批判してくる人を立ててあげて下さい。
認めてあげることで、「オレの意見を聞いてくれた」と満足感が出るので、少しずつですが、無駄な批判が減ってきます。
そして批判してくる人を認めたあとも言葉を続け、「でも、最初にアイデアを下さった○○さんの意見も、とっても斬新でいいとわたしは思いました」と、批判をされた側もフォローしましょう。
こうして、『批判してくる人』も、『批判された人』も、どっちもいい意見を言ってくれたという風にしてしまうのです。すると会議の雰囲気は停滞しにくくなります。続けて、「では、他にアイデアはありませんか?」と問いかければ、また新たなアイデアが出るのです。
批判された人を慰めるのは止めておきましょう。
そうしてしまうと批判した人が悪者になってしまい、「オレは悪人か?」と、機嫌を損ねて、会議室にピリピリした雰囲気が蔓延(まんえん)します。
わたしの乗ったマグロ船が赤道付近で漁をしていたある日、ひとりの漁師から、「今日は暑いの」と言われました。わたしはそのとき、「赤道ですから当たり前です」と、つれない返事をして注意をされたことがあります。
漁師から、「お前の答えは合っているが、人の話を否定するようなことを言うと、 場の雰囲気は悪くなることを覚えておけ」と教わりました。
場の雰囲気を良好に保つには、相手の意見を否定せず、その代わりに、「その考えもアリだけど、こんな考えもアリじゃないか?」と、“アンド”で話をつなげること。他人の意見に対し、「わたしの意見の方が正しい!」と主張するのも、「あなたの考えもいいけど、こんな考えもあるよね?」と主張するのも、言っている意味は同じだからです。
でも、後者の「こんな考えもあるよね?」という姿勢のほうが、ケンカにならずに相手とアイデアを交換しあえます。
会議でアイデアを交換し合う段階においては、どの意見が正しくて、どの意見が間違っているというのはありません。どれもみなアイデアのタネであり、必要な意見です。
ですから、結論を絞る段階にくるまでは、どの意見も否定をせず、かといって褒め称えすぎず、「そういう考えもありますよね」と受け止めてから「こんな考えもありですよね」と“アンド”で話を広げていくと、活発な意見交換ができるようになります。
今日から、会議やミーティングなどで試してみて下さい。
ネクストスタンダード代表。1976年東京生まれ。北里大学水産学部卒。大学卒業後、民間企業の研究所に入社し、「マグロの保存剤」の開発に携わる。
入社2年目のとき、上司から「マグロの保存剤の開発を成功させるには、お前は一回マグロ船に乗ってこい」と理不尽な命令をされるも、断りきれずマグロ船に乗せられる。
嫌々乗ったマグロ船であったが、人間関係がギスギスしやすい閉ざされた空間だからこそ、素晴らしいコミュニケーション術がたくさんあり、笑顔で働く漁師たちに感銘を受ける。
マグロ船を降りたあと、漁船での体験を元にファシリテーション術を自社に導入し成功。その後独立し今に至る。代表著書に『活きのいい案がとれる!とれる!マグロ船式会議ドリル』(こう書房)、『会社人生で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ』(マイコミ新書)がある。雑誌などの掲載多数。
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