意見が出ない、話題がそれる――あなたの会社では、会議が時間の無駄になっていないでしょうか? そこで注目されるのがファシリテーションスキル。会議をスムーズにし、かつ必ず結果を出す進行の仕方を『会社人生で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ』の著者、齊藤正明氏が教えます。
初めまして、齊藤正明です。
わたしは現在、ファシリテーションの技術を企業研修などで教えています。
しかし前職では「マグロの鮮度保持剤」などの開発をしており、ファシリテーションとはまったく無縁の世界にいました。そんなわたしがなぜファシリテーションのコンサルタントになったかをまずお話したいと思います。
マグロの鮮度保持剤を開発していた8年前、上司から突如、「おまえは一度、マグロのすべてを知ってきたほうがいい」と言われ、断ることができず、嫌々ながらマグロ船に乗せられたことがあります。
そこでは全く実験の環境が整わず、製品開発の研究はあまりはかどりませんでしたが、 会議のやり方を含め、職場の雰囲気をよくするファシリテーションの基礎を学ぶことができました。
マグロ船というと、過酷で厳しい職場のイメージがありますが、実は、漁師たちが笑顔で生き生きと働く職場だったのです。
マグロ船という職場では、漁師たちが、逃げ場のない狭い船内で40日間以上顔を合わせて仕事をしています。人間関係を良好にして仕事をしないと、マグロが捕れないどころか、死亡につながる事故や事件が起こるのです。ですから、漁師たちは職場のコミュニケーションを円滑にする達人なのです。
今の仕事に移ったのは、漁師たちのすばらしいコミュニケーション術などを伝えていきたいと思ったのが理由の1つになっています。
さて、そんな漁師たちの仕事の1つに“釣り針磨き”というものがあります。
これは、マグロを釣るための人差し指ほどの大きさの針を、海中に投げたときにマグロに見えにくくするため、1つずつ丁寧に磨いていく作業です。この釣り針磨きのときは、漁師全員が車座になり、とある「会議」を開きながら作業を行います。
マグロ船における重要な議題の1つは「入港先のキャバクラにいる、アケミちゃんをどうしたら落とせるか?」というものでした。
活発な議論が飛び交っている「アケミちゃん対策会議」の最中、「齊藤は、どげーしたらエエと思う?」と話をふられました。しかし、わたしはアケミちゃんに会ったこともなく、いいアイディアは当然思いつきません。
漁師の雑談と侮らず、会社の重要な会議だと思って回答してみてください。
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