課題解決の提案をロジカルに行う手書きでマスター【図解思考編】

特集「手書きでマスター」では、メモをとる、情報を整理する、アイデアを展開する、商品イメージを描く――などに効果的な手書きの方法をご紹介します。まずは「図解思考」を手書きしてみましょう。

» 2010年07月05日 10時00分 公開
[永田豊志,Business Media 誠]

 7月は4回に渡って特集「手書きでマスター【図解思考編】」をお届けします。メモをとる、情報を整理する、アイデアを展開する、商品イメージを描く、など日常生活で情報を記録する場合に手書きは欠かせません。もちろん、ノートPCやポメラを使ってテキストをバシバシ打ち込むのも良いのですが、フリーハンドによる自由度には勝てません。特に「図解メモ」をとる場合には、不可欠です。

 わたしの場合は、提案書や商品開発にも「図解メモ」が欠かせません。日常生活用品は別として、筆者のようなIT関連のサービスはほとんどの場合、なんらかの課題を解決する商品あるいはサービスなのです。

 今回は、この課題解決型の提案をまとめるために、手書きによる図解を行ってみたいと思います。

 筆者の会社の商品は企業のマーケティングご担当者にASP(あるいはクラウド)的に導入してもらうサービスです。ですから、企業において現在の課題を導入後に解決するものでなければいけません。つまり、うちの商品を提案する際に必要な要素は大きく分けて、

  • 現在(導入前)の課題
  • 未来(導入後)の解決
  • 提案(商品の導入)

 の3つだけ。シンプルでしょ?

 この3つの要素を、ひたすらドリルダウンすれば提案のできあがり。ドリルダウンとは、ある物事の原因や課題などを絞り込むために、さらに1段階深く、分解するという意味です。

 さて、具体的に書いていきたいと思います。

今回の題材

 今回は、わたしの会社で最近出したiPhone用の商品「ナビキャスト for iPhone」を題材にしてみます。

 この商品は、通常のWebサイトにiPhoneからアクセスしたときに、Flashの代わりにリンク付の代替画像を配信したり、iAdのようなフローティングバナーを追加で設置できるASPなのです。

 ご存知のとおり、iPhoneではFlashが再生できないので、トップページでしゃれたFlashなどを置いている企業サイトなどはiPhoneから見ると、残念な感じになってます。また、画面が小さいから見てほしいバナーなどが訴求しづらいという面もあります。とはいえ「iPhone専用のサイトを作るのもコストがかかりすぎるし……」とお悩みのサイト担当者の方向けに提供するサービスです。どんなサービスかは動画でチェックください。


 まず、この商品提案における「現在の課題」を明確にしましょう。現在の課題は「サイトに対するiPhoneユーザーの不満」が入ります。そして、さらに課題をドリルダウンします。「不満」をさらに具体化するわけです。

 「Flashが非表示」「画面が小さい」。そして、不満の高まりを裏付けるため「増え続けるユーザー」というのも付け加えておきます。この際、なるべく客観的なデータを添えると説得力が増します。例えば、一般的なPC画面サイズ1024×768ピクセルに対して「iPhoneは320×480」ピクセル、一説によればユーザー数は「300万人以上」という具合です。

 次に、「未来(導入後)の解決」です。「現在の課題」は「サイトに対するiPhoneユーザーの不満」ですから、解決された状態は、「iPhoneユーザーの満足度向上」とします。具体的には、「すべての情報が閲覧可能」「小さい画面でもアクセスしやすい」です。未来のあるべき姿は、現在の課題を解決した状態であるはずなので、簡単ですよね。

 さあ、いよいよここで「提案(商品の導入)」です。ここでは「ナビキャスト for iPhoneの導入」となります。提案は、現在の課題と未来のあるべき姿とのギャップを埋めるものでなければいけません。そのために必要な機能(つまり「What」の部分)、そして実現するための方法(つまり「How」の部分)を提示しなければいけません。提案には「必ずWhatとHowがセット」です。これらを「提案」のサブトピックとして枝分かれさせて追加していきます。

 まずWhatの部分。この商品の機能としては、「Flashの代わりに静止画を自動配信」「小画面サイズに最適化したフローティングバナーを追加」「iPhone/iPadユーザーのアクセス解析」があります。

 一方、Howつまり、実現方法に関するサブトピックには、必要なコストや導入方法、必要な期間などの情報を入れます。5W2Hのうち、不足している情報を補えばよいでしょう。ここでは、「タグを貼るだけの簡単導入」「月額3万円」「申込から1営業日以内に納品」というサブトピックが入ります。これで「提案」部分が完成しました。

 最後に、全体像をながめてみます。現在の課題、それが提案によって、未来において解決されているかどうかを俯瞰(ふかん)してチェックしましょう。プレゼンの骨組みがしっかりしていれば、後はスライドを作成するだけ。逆に、骨組みをおろそかにして、いきなりスライドのデザインなんかに凝っていると、ろくな資料は作れません。ぜひ、みなさんの今後のプレゼンに使ってみてください。

著者紹介 永田豊志(ながた・とよし)

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 知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。

 リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。その後、デジタル業界に興味を持ち、デスクトップパブリッシングやコンピュータグラフィックスの専門誌創刊や、CGキャラクターの版権管理ビジネスなどを構築。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。

 近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』(中経出版刊)がある。

連絡先: nagata@showcase-tv.com

Webサイト: www.showcase-tv.com

Twitterアカウント:@nagatameister


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