人生の前半では時間を売り、後半では時間を買う結果を出して定時に帰る時短仕事術

どのような資産運用もハイリターンを狙えば、ハイリスクになりますが、自分自身の“労働資本”だけは確実。リスクは、業務続行が難しくなった時と能力の市場価値がなくなった場合だけなのです。

» 2010年06月24日 18時34分 公開
[永田豊志,Business Media 誠]

 サラリーマン男性の平均年収は533万円(2008年度調べ)。そこで、この金額を金融商品の利回りを考え、仮に2%で割ると2億6650万円になります。これは何を意味するのかといえば、誰もが2億円以上の目には見えない「労働資本」という財産を持っていることにほかならないのです。

年収に関するデータは、「年収ラボ」より2008年の平均額。
収入は資本の利回りであると考えれば、年収を保険や投信などの金融商品の平均的な利回りで割ると、元手の資産額が計算できます。この計算結果から、男性サラリーマンの労働資本は2億円以上あることが分かります

 資産運用には、不動産や株式、FX、保険などさまざまな手法がありますが、利回りの低い時期には、「種銭」が少ないとまったくインカムゲインが狙えません。ですから、金融商品による資産運用が有効なのは、ある程度の金融資産を持っていることが前提になるのです。

 しかし、気に病む必要はありません。なにせ、わたしたちは2億円以上もの「労働資本」を持っているのですから。景気が上向けば、企業の雇用競争が激化し、自然と給与水準が上がります。これは景気の上昇によって、労働資本の利回りが上がっていることと同じことです。ただし、景気の後退局面では、その逆の現象が起こります。

お金の増え方は右肩上がり、時間の減り方は右肩下がり

 どのような資産運用も、ハイリターンを狙えば、ハイリスクになります。しかし、労働資本の運用だけは、リターンが大きく、しかも確実です。唯一のリスクは、体調不良で業務続行が難しくなった時と、その人の労働資本価値(=能力)が、市場から見て無価値になる場合だけです。ですから、自己投資と自己管理さえしっかりしていれば、この労働資本は長期間にわたって、お金を生んでくれます。この点をしっかり考えず、目先の資産運用にうつつを抜かすのは大変危険なことなのです。

労働資本も普通の金融資本と同様に、その利回りは景気の影響を受けます。景気がよければ、労働資本へのニーズが高まり、収入が増えます(つまり、利回りが上がる)。景気が悪ければ逆の現象が起こります。利回りに左右されないためには、労働資本の強化、つまり、自己投資が最重要課題になるのです

 生まれた時に、自分の自由になる資産を持っている人はまれです。親が資産家だったりする場合もありますが、所詮、自分のお金ではありません。生まれた時には誰かの保護下にあり、実質的には無一文です。

 しかし、年を重ねてアルバイトをやったり、就職して会社に入ると、少しずつ自分が管理できるお金が増えていきます。結婚や家を買う、子供が生まれるなど人生のイベントに応じてお金は増えたり、減ったりしますが、基本的に定年などでリタイヤするまでは、金融資産は増えていく傾向でしょう。

 一方、持ち時間は生まれた時に最大値で、死ぬ時にはゼロになるため、右肩下がりで減少していきます。お金と違って運用によって増やすこともできませんし、努力によって、その減少を食い止めることもできません。代替のない貴重な天然資源のような存在なのです。天然資源ですから、なるべく、無駄使いをしないようにしなければいけません。

大卒で22歳から60歳の定年まで働き、その後は年金等で過ごし、78歳まで生きるとした場合の、時間の減り方とお金の増え方をグラフにしたもの。お金と時間は反比例の関係にあることが分かります

人生の前半では時間を売り、後半では時間を買う

 お金の増え方と時間の減り方をグラフにすると以下の図のようになります。この図を見るとお分かりのように、人生の前半は時間は潤沢だが、お金がない状態。したがって、自分の時間を時間がない他人に売って、他人のお金を得るという状態です。

 しかし、お金に多少余裕が出てくる頃には、時間を使いすぎて、残り時間が減ってきます。ここでは、お金を払ってでも、なるべく自分の時間消費を抑えなければなりません。人生の後半では、時間が最重要資源になりますので、時間を有効活用するためには、お金や努力を惜しんではいけないのです。

人生の前半はお金を稼ぐことが重要ですから、自分の時間を販売して、お金を得ます。しかし、人生の後半では、時間の希少性が高くなり、お金を払ってでも時間の消費を抑えることになります。つまり、他人時間を買う、ということです。

 仕事を始めた当初は、仕事の基礎を固める段階です。自分の専門領域を定め、知識や経験を蓄え、さらに仕事効率化のテクニックを実践します。

 生産性が高まると自然に仕事が増えていきます。しかし、この段階では増えた仕事を他人にふるような環境はありません。そのためにも、自分の生産性を究極に高めるために思考ツール(フレームワークやロジカルシンキング)、ITツール(PCやアプリケーションの使いこなし)の徹底活用によって、急増する仕事を乗り越えましょう。さらに、この段階では、専門領域や職種に応じたスキルを磨くことはもちろん、専門バカにならないように、幅広く、他人との交流を持つことを心がけましょう。

 生産性が高いと、昇進も早く、仕事の守備範囲はさらに広がります。しかし、それらをすべて自分1人でこなそうとするのは無理です。やったとしても、品質が低下してしまいます。そこで、今度は、自分の生産性を向上させながらも、一部の仕事はアウトソーシングし、その結果をチェックするという仕事のスタイルに切り替える必要があります。

 さらに生産性を高めるためには、自分の意図で動かすことのできる組織や仕組み作りが必要になってきます。この段階では、もはやプレイヤーとしての生産性よりは、マネジメント力が重要になってきます。プレイヤーとして蓄積したノウハウを組織で共有しつつも、組織内の他人をどうモチベートするのか、どう教育していくのか、マネジメントを学びましょう。常に、個人の生産性ではなく、組織の生産性を考えて、課題解決をはかります。

年齢とともに変化する、時間の売り方・買い方

集中連載「結果を出して定時に帰る時短仕事術」について

 本連載は、6月26日発売の書籍『結果を出して定時に帰る時短仕事術』(ソフトバンククリエイティブ刊)から抜粋・再編集したものです。

 残業ゼロで成果を倍増する仕事効率化術――。と言っても、単に効率化だけではダメ。人生の価値マネジメントから始めるタスク管理と仕組み作りを実践しましょう。「ワークライフバランス」と言っても単に時間バランスだけとっても意味はありません。

 ビジネスパーソンは、顧客の要望を上回る成果を出しながらも、自分の時間をしっかり確保して、プライベートの充実と自分の付加価値を高めるための将来に向けた事故投資を両立する必要があります。

 本書は、しっかり結果を出しながらも、将来の自分価値を高めるための「時短仕事術」を紹介しています。人生の価値感管理から日常生活のタスク管理まで、生産性戦争に打ち勝つためのテクニック満載です。

  • 1時間目:残された時間を価値あるものに
  • 2時間目:仕事も人生もうまくいく! 理想の時間割
  • 3時間目:最少の労力で最大の成果を上げる知的生産の方程式
  • 4時間目:必ず目標を実現する! スケジュール&タスク管理術
  • 5時間目:集中力が劇的にアップする!すきまアクションとじっくりアクション
  • 6時間目:時短の達人が教える! 生産性を高める小さな習慣
  • 7時間目:ITを味方につけなければ、生産性戦争に勝てない!
  • 8時間目:最短で問題解決するための時短思考のツール
  • 9時間目:チームの生産性が飛躍的に高まる! 時短会議のススメ
  • 資料編:時短の達人になるためのチェックリスト

著者紹介 永田豊志(ながた・とよし)

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 知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。

 リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。その後、デジタル業界に興味を持ち、デスクトップパブリッシングやコンピュータグラフィックスの専門誌創刊や、CGキャラクターの版権管理ビジネスなどを構築。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。

 近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』(中経出版刊)がある。

連絡先: nagata@showcase-tv.com

Webサイト: www.showcase-tv.com

Twitterアカウント:@nagatameister


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