「名刺を100枚集めてこい」「アポイントが取れるまで、手を受話器にテープで巻き付けてでもかけ続けろ」。1990年代に営業の進め方を学んだ人が受けてきた営業トレーニング方法です。果たしてこの方法は今も効果があるのでしょうか?
「名刺を100枚集めてこい」「アポイントが取れるまで、手を受話器にテープで巻き付けてでもかけ続けろ」。1990年代に営業の進め方を学んだ人が受けてきた営業トレーニング方法です。果たしてこの方法は今も効果があるのでしょうか? 今回は、利益につながる営業の考え方のヒントをご紹介します。
ITがビジネスで一般化するに従って、営業の進め方にも変化が起きています。広告業界でよく使われる、人がモノを買うプロセス(購買行動)のフレームワークに、その変化の大きさが端的に現れているのでご紹介します。
IT普及前:AIDMAの法則 | IT普及後:AISASの法則 | |
---|---|---|
1 | Attention(注目・注意喚起) | Attention(注目・注意喚起) |
2 | Interest(興味・関心) | Interest(興味・関心) |
3 | Desire(欲求) | Search(検索・情報収集・調べる) |
4 | Memory(記憶) | Action(購買行動) |
5 | Action(購買行動) | Share(情報共有) |
上図では、その変化のポイントを2つのプロセスで読み取ることができます。1つは、人がモノやサービスを買う時は、興味・関心を持った後に、「Search(検索)する」点。もう1つは、購買後の満足度を、口コミだけでなく、個人が持つブログやTwitterなどの情報媒体や、専門サイト(旅行、飲食、ブックレビュー、比較サイト)への書き込みなどにより、「Share(情報発信・共有)する行動を取る」点です。
さて、誠 Biz.IDの読者が見落としてはならないのは、前述のフレームワークはあくまで「売る側」(広告を作る側、仕掛ける側)の発想で整理されたものであること。わたしたちにとって最も重要なのは、こうしたフレームワークを元に、自分の立場(利用者)に置き換えて考えてみることです。
参考まで、筆者の購買プロセスをご紹介します。下図をご覧ください。
さらに、AISASの法則に自分なりの考えや行動をポイントとして付加すると次のようになります。
プロセス | ポイント |
---|---|
Attention | 何かしらの目的(やりたいこと、やらなければならないこと) |
Interest | 目的を達成するための方法を考える |
Search | 情報収集(インターネット以外も含む)。価値観に合うかも見極める |
Action | 意思決定するまでの過程で、価値観の一致点、共感、感動などが決め手になることも多い |
Share | ・満足度が高く、ほかの人と一緒に利用できる場合は一緒に体験する ・満足度が著しく高い場合は、不特定多数に実名で情報発信 ・不満な場合は、親しい知人に口コミ |
いかがでしょうか? フレームワークで大雑把に切り分けたところに、
があることがご理解いただけるのではないでしょうか。
このように、「情報を発信する側」から見たフレームワークと、「情報を活用する側」から見たフレームワークでは同じフレームワークでも、微妙な違いが出てきます。そのため、フレームワークを活用する際には、一度自分の立場(利用者)で、日常の思考や行動に落とし込んで考えることが大事なのです。また、それを自分の身の周りの人の考えや行動と照らして検証すると、さらに精度が増すでしょう。
因みに、AIDMAやAISASのようなフレームワークには、AIDCAなどの異なった切り口も多数あります。しかし、自分や周囲の人の考えや行動を検証する習慣があれば、フレームワークに振り回されることなく、フレームワークそのものを自ら作り出すことできます。
さて、こうしたIT普及後の変化を前提として、冒頭の「100枚名刺を集める」や「アポイントが取れるまで」は現在でも通用するのか――を考察してみましょう。
「自分の立場」の視点で考えれば、簡単ですよね。いい方法とは言えないことはお分かりいただけると思います。私見を述べると、次の2つの点が問題だと思っています。1つは、訪問される側に何の利益もないこと。もう1つは、「訪問される側が嫌がっている」ことをさせられるために、会社に人が定着しないこと。そのため、採用と教育のコストが売上を上回り、利益が減るからです。
それでは、利益につながる営業活動とはどのようなものでしょうか? 次回以降でご紹介していきます。
大手生命保険会社、人材育成コンサルティング会社の仕事を通じ、組織におけるリーダー育成力(中堅層 30代〜40代)が低下しているという問題意識から、2006年Six Stars Consultingを設立、代表取締役に就任。現在と将来のリーダーを育成するための、企業内研修の体系構築、プログラム開発から運営までを提供する。
社名であるSix Starsは、仕事をする上での信条として、サービスの最高品質5つ星を越える=クライアントの期待を越える仕事をし続けようとの想いから名付けた。リーダーを育成することで、組織力が強化され、好循環が生まれるような仕組みを含めた提案が評価されている。
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