「ブックバイブックシステム」のドイツ手帳をみんなで触ってみた手帳オフ2010

2007年からわたしが不定期に主催しているイベント「手帳オフ」。今回は、ドイツの手帳メーカー「X47&X17」のサンプルを囲んで参加者に感想を述べてもらう企画を実施した。

» 2010年06月11日 13時28分 公開
[舘神龍彦,Business Media 誠]

 2007年からわたしが不定期に主催しているイベント「手帳オフ」。わたしの著書や誠 Biz.IDの連載、ブログなどの読者が集まり、手帳の使い方やスマートフォン、ガジェットなどの情報を交換する会である。

 今回は、ドイツの手帳メーカー「X47&X17」のサンプル製品を囲んで参加者に感想を述べてもらう企画を実施した。そのリポートをお届けしよう。

独自思想“システム手帳”の構造と特徴

X17バラクロン。モレスキン風でやや厚みのあるカバーの中に数冊の冊子が含まれる。

 きっかけは、ドイツからのメール。4月中旬、わたしのGmailアカウントに「X47&X17」のハルツ香織氏からの依頼メールが届いた。同社は日本での本格展開を考えており、モニターを募集しているとのこと。手帳のことを専門にしているわたしは検索で見つけたらしく、「サンプルを送るのでアンケートに答えてほしい」という。

 さっそく「X47&X17」の手帳について簡単に紹介しておこう。今回サンプルで届いた「X17バラクロン」は、同社のX17シリーズの中でも比較的安価な、いわばエントリーモデルという位置づけの製品だ。

 その特徴は「ブックバイブックシステム」だろう。独自の樹脂バンドで複数のノートを保持している構造だ。同社ではシステム手帳のような機能性を中央部のリングなしで実現したいと考えてこのしくみを発案したという。これはバラクロン以外のX17シリーズ全体にも共通する。

 今回のサンプルでは、無地、罫線、方眼の3種類の冊子(A6)が含まれていたが、シリーズにはダイアリーリフィルも用意されている。また各ページにはミシン目が入っており、不要になったページは切り取って捨てられる。

 また、黒い梨地のカバーはモレスキンなどと同様のもの。堅牢かつ質実剛健で、ステッカーを貼るなどのカスタマイズがしやすい。


冊子とカバーはゴムのような伸縮するバンドで固定。冊子・カバーの双方に切りかきを施し、バンドが安定するようになっている。日本で流通しているA5、A6サイズの手帳よりもやや小ぶり。冊子は、無地、方眼、横罫などのダイアリーも用意している

「紙質」「綴じ方」「質感」――参加者の感想は?

 今回の参加者は全部で10人。そのうち過去の手帳オフに参加経験があるリピーターが4人。残り6人もいずれも手帳や文房具には一家言ある方々ばかりだった。ひとつの手帳をテーマにじっくり語り合うのは、今までの手帳オフにはない試みだったが、議論は白熱した。

 まず、冊子を複数冊保持する構造について。システム手帳に比べれば、ボディも小さく、同時に軽くなる。ただ、サイズ自体については参加者からやや厳しい意見が寄せられた。今回用意されたサンプルは、A5、A6の2種類だったのだが、双方とも日本で流通しているサイズより微妙に小さかった。

 これは単体で持ち歩くときには軽さと小ささというメリットになるが、例えば日本で発売されているA6サイズの製品と組み合わせようとすると、サイズの違いが気になる。

 紙質にも注文がついた。参加者のみなさまはそれぞれお気に入りの筆記具を持参してくださったのだが、どうも日本製の手帳とは、インクの定着具合や書き心地などの筆記特性が違うようだ。

 ただ、この紙質は同社の試行錯誤の結果だ。X17のコンセプトとして「リングブック(システム手帳などのバインダータイプのもの)よりも書き込み容量を増やし、かつコンパクトにする」という狙いがある。その上で、

  1. A5サイズとA6サイズはそれぞれ見開きにしたときに紙が浮かず(これにより、より書き込み容量が増える)
  2. 手帳を閉じたときに開かない(スマートな見た目とコンパクトさの追求)

 という上記2点を追求した結果、A5サイズのリフィルの紙は80グラム毎平方メートル、A6サイズのリフィルの紙は60グラム毎平方メートルの厚さが最適だということにたどり着いたという。現在X17のセットに含まれるリフィルはその結果だとのことだ。

 また、筆記特性についても、同社製のペンのインクに、明るめのグレーや青などを用意することで対応したいそうだ。

カバーは好評

 黒い梨地のカバーについてはおおむね好評だった。例えばモレスキンの場合、表紙をカスタマイズしても、使い切ったら新しいものの表紙にまたいろいろ貼ったりすることになる。これは1冊ごとに気分を変えるメリットだろうが、カスタマイズした部分への愛着があった場合は後ろ髪をひかれるかもしれない。

 X17バラクロンの場合は、リフィル冊子のみを交換すればいい。愛着を持ってカバー部分を使い続けられるのは、システム手帳のバインダーにも共通するポイントだ。

 実物をよく見ると分かるが、このブックバイブックシステムは、複数冊子を無理なくカバー内に収める工夫をしている。カバーと冊子の背には、それぞれバンドを通したときに無理なくホールドできるような溝がある。ここにバンドが収まることで確実にホールドし、また手に持ったときにゴツゴツしないようになっているわけだ。

 またリフィルには、スケジュール用のものもある。今回提供されたサンプルには含まれていなかったが、ウィークリー、デイリーのリフィルも用意されている。とくにA6サイズのX17バラクロンに対しては、「このサイズでデイリーと横罫などが持ち歩けるのは便利」だとの意見も出ていた。

 サイズについては、とくにA6版の小ささを評価する方もいた。システム手帳のミニ6穴サイズと比較するとサイズも小さく、金具がないのは好ましいポイントだったようだ。

 X47&X17には、上位ラインのX47がある。こちらは冊子を金具で止める機構を持っている。我々日本人が簡単に想像しうる“ドイツらしさ”を持っている。この普及版というべきX17は、フレンドリーな価格であるがゆえに、金具で止めるようなドイツっぽいムードがやや足りない印象があるという意見もあった。

開催中ドイツからのメール着信

 手帳オフ開催中の19時半ごろ、わたしのiPhoneに、X47&X17のハルツ香織氏から参加者へのあいさつを述べたメールが届いた。同社のあるドイツ・ザールブリュッケンは、ちょうどお昼の12時頃だったはず。

 ちなみに現地時間の水曜日と木曜日の9時〜17時は日本語対応が可能な担当者もいるという。国内代理店は不二越。興味のある読者はアクセスしてみてほしい。

著者紹介 舘神龍彦(たてがみ・たつひこ)

 アスキー勤務を経て独立。手帳やPCに関する豊富な知識を生かし、執筆・講演活動を行う。手帳オフ会や「手帳の学校」も主宰。主な著書に『手帳進化論』(PHP研究所)『くらべて選ぶ手帳の図鑑』(えい出版社)『システム手帳新入門!』(岩波書店)『システム手帳の極意』(技術評論社)『パソコンでムダに忙しくならない50の方法』(岩波書店)など。


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