フランクリン・プランナーが“メイドインジャパン”に――ナカバヤシはどう作る?

独自コンセプトのシステム手帳「フランクリン・プランナー」。国内事業については先日、老舗の文具メーカーであるナカバヤシが譲渡を受けた。ナカバヤシが作るフランクリン・プランナーはどうなるのか。フランクリン・プランナー・ジャパンに聞いた。

» 2010年06月02日 19時47分 公開
[舘神龍彦,Business Media 誠]

 アルバムや事務機器、オフィス家具、手帳などの事業で知られるナカバヤシが、独自コンセプトのシステム手帳「フランクリン・プランナー」の事業会社を設立。フランクリン・コヴィー・ジャパンのプランナー事業を引き継ぐことになった。5月14日、ナカバヤシのWebサイトでニュースリリースとして発表。フランクリン・コヴィー・ジャパンでも同日、事業譲渡に関する発表をしている。

独自コンセプトのシステム手帳

フランクリン・プランナー コンパクト

 ナカバヤシが設立した会社名は、「フランクリン・プランナー・ジャパン株式会社」である。

 フランクリン・プランナーは、独自のコンセプトを持つシステム手帳ブランドだ。これまでの手帳は、単なる時間管理の道具として考えられていた。フランクリン・プランナーは、まず人生で達成すべき「目標=ミッション・ステートメント」を自ら定めることをユーザーに求める。そして、その実現のためのツールとして作られているのだ。

 夢を実現する手帳――。国内でもここ数年で定着した“夢手帳”コンセプトを、1990年代後半にいち早く日本に持ち込んだのもフランクリン・プランナーであった。あの勝間和代氏もかつては使っていたことでも知られている。

 フランクリン・コヴィー・ジャパンではこれまで、フランクリン・プランナーを単なる手帳とせず、『7つの習慣』などをはじめとする一連の自己啓発書の実現ツールと位置付けた。このため、手帳活用のセミナーも主催してきたのだ。

 そして今回は、この手帳事業の部分が別会社になり、ナカバヤシの設立した会社が引き継ぐことになった。

背景は“手帳とセミナー事業の分離”

 フランクリン・プランナー・ジャパンの伊東賢児アシスタントマネージャー(マーチャンダイジングチーム)によれば、今回の事業譲渡の背景にあるのは、本国である米国をはじめとした、セミナー事業とプランナー事業の切り離しだという。

 「フランクリン・コヴィーは、約20年間の歴史を保有するコヴィー・リーダーシップ・センターとフランクリン・エクセレンスという2つの株式会社が1997年に合併して設立した会社。元々、コヴィー・リーダーシップ・センターが『7つの習慣』を基にしたセミナー事業を、フランクリン・エクセレンスがプランナー事業を担当していた」(伊藤氏)

 そして、米国ではすでに再びセミナー事業とプランナー事業を切り離している。また世界各国で展開しているフランクリン・コヴィーでもセミナー事業とプランナー事業を再び分離する動きになっている。

 今回の事業譲渡は、この流れに沿うことだという。すなわち、セミナー事業とプランナー事業を分割し、後者をナカバヤシが事業譲渡、展開することになる。

 ナカバヤシは、綴じ手帳自体は制作しているが、システム手帳事業は展開していない。今回の事業会社設立によってナカバヤシは、定評あるフランクリン・プランナーのブランドを手に入れ、自社工場の製造技術を生かし、これまではアプローチしきれていなかった個人ユーザーに訴求できるようになるのだ。

 もっともユーザーにとっては、あまり変化を感じないかもしれない。新会社名(フランクリン・プランナー・ジャパン)もそうだが、手帳のブランド名やロゴ羅針盤のマークなどはそのままだからだ。またセミナー事業を行うフランクリン・コヴィー・ジャパンとは今までのように連携して事業を行っていくという。

 同時にフランクリン・コヴィー・ジャパンが今まで提供してきたシステム手帳各種製品や、本国版のリフィル提供も新会社が継続。リフィルの紙質やシステム手帳としての規格もほぼそのままだという。なお、ショールームはこれまでの麹町から台東区浅草橋に移転する。

日本品質の“フランクリン”に期待

 ユーザーがもっとも期待しているのは、日本の手帳メーカーが手がけることによる品質改良だろう。これにはナカバヤシも意欲的だ。「フランクリンのコンテンツを(ナカバヤシの従来からの顧客層である)法人向けに提供していく。また、綴じ手帳版フランクリン・プランナーのラインアップ拡充を検討している」(伊藤氏)。国内ユーザーからの要望に応じる可能性もありそうだ。

 セミナー事業とプランナー事業の関係性はそのまま、まずは現状の製品を売っていく――だが、「紙質の選定を慎重に行い、新しいものを提供していくことも検討している」とも。綴じ手帳の分野では定評のあるナカバヤシの品質が、フランクリン・プランナーのコンセプトに生かされる。単なるローカライズではない、メイドインジャパンならではの高品質な手帳誕生につながるかもしれない。

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