「1日1箱」は、仕事量を見積もり、1日にできる仕事を1つの箱に入れるイメージの仕事術。今日やれる分だけの仕事を箱に入れ、それ以上はどんな仕事も実行しないという考え方です。ところが実際には何が何でも仕上げなければいけない仕事も舞い込んできます――。
ここ数回、「1日1箱」という仕事術を紹介してきました。仕事量を見積もり、1日にできる仕事を1つの箱に入れるイメージです。4月30日の記事でわたしは、
ポイントは、今日やれる分だけの仕事を箱に入れ、それ以上はどんな仕事が舞い込んできてもその箱には入れない、つまりその日のタスクにしないという考え方です。
と書きましたが、それに対して次のようなコメントをいただきました。
確かにそうです。若者は規則を知っているが、老人は例外を知っている、と言います。「1日1箱」も最初は原理主義的にこだわって運用した方が体得しやすいと思いますが、(これはどんな技術についてもほぼ同じことが言えます)慣れてくれば柔軟に現実対応するのがベターです。
「1日1箱」の考え方に対して、「どんな仕事が舞い込んできてもその箱に入れない」が成立しないのであれば、次のいずれかの方法で対応するしかありません。
1の方法の場合、翌日以後にタスクを先送りして大丈夫かどうかを知ることが重要です。そのためわたしは、5月6日に記事にあるとおり、「xfy Planner」の「山積みスケジューラー」を使うのです。どこに先送りするかを全く検討せず、安易に先送りすると、どこかにしわ寄せがきて大変なことになります。
2の方法は、これはいわゆる「力業」です。根性を出してこれをやり遂げれば、翌日以後のスケジュールにダメージは及びません。ただ、これを頻繁に使っていると、疲れがたまります。ストレスも蓄積します。ですから、これはひんぱんには使えません。もし行った場合、その事実を記録しておくことをおすすめします。
どれほど無理をしているのか。何のために無理をしたのか。無理をすることで例えば睡眠時間がどうなっているのか。知っておくとその後の調整を合理的に行えます。
3ですが、残りのタスクが多いときには、この方法は有効です。ただし、残っているタスクにかける時間を切り詰めるわけですから、その仕事の質が低下するリスクが発生するかもしれません。
このように、原則に対する例外を設けることは、なんらかのデメリットを発生させることになるわけですから、どのデメリットを受け入れるか、受け入れやすいかを検討するのがよいでしょう。検討できる体制が整っていれば、受け入れるデメリットを選択することもできるのです。
心理学ジャーナリスト。専門は認知心理学。1973年北海道生まれ。1997年獨協大学卒業後、ドコモサービスに派遣社員として入社。2001年アヴィラ大学心理学科に留学。同大学卒業後、2004年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。2005年に帰国。著書に、『スピードハックス』『チームハックス』のほか『ブレインハックス』、『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』、『やる気ハックス』などがある。「シゴタノ!−仕事を楽しくする研究日誌」にて「心理ハック」を連載中。ブログ「ライフハックス心理学」主宰。
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