本来は簡単なはずの一文も、長い文章の中に埋め込まれるととたんに難しくなるものです。複雑な情報を鮮やかに図解してみせるには、表現したい「違い」をまず1つだけ見つけてみましょう。
前回の出題を再掲します。課題テキスト原文はこれ。
小売業のチェーン組織形態は大まかにレギュラー・チェーン、ボランタリー・チェーン、フランチャイズ・チェーンの3種類に分けられます。
レギュラー・チェーンは、百貨店やスーパーマーケットのように、本店が力をつけてきた段階で本店からの直接投資で支店を増やす形態です。
ボランタリー・チェーンは、それぞれ独立している複数の小売業者が集まって形成する協同組合的なチェーン組織です。
フランチャイズ・チェーンは、個々の店舗への投資はフランチャイズ本部ではなく加盟店が行い、本部は加盟店に対して契約に応じて「ノウハウ」や「物流」などのサービスを提供する対価として収益を得る仕組みです。
この原文から、「レギュラーチェーンとフランチャイズチェーンの違い」つまり
というこの違い一点だけを説明しようとすると、こんな図になりました。
ここまでは前回出ていましたが、さてそれではここに、
(A)通常、フランチャイズ・チェーンの「加盟店」はレギュラー・チェーンの「支店」よりも数が多く小規模である
(B)フランチャイズ・チェーンでは、「加盟店がバラバラに本部と契約する」のに対して、ボランタリー・チェーンでは「加盟各社が一致協力して本部をつくる」形になる
の2点を書き足すなら、どうしますか? というのが今回の問題です。
こんなふうに、
ようにすると、いきなり書くのが難しいような複雑なチャートも案外書けるものです。それではまずは(A)項から書いてみましょう。(A)項をよく読むと、下記2つの情報を読み取れます(FCはフランチャイズ・チェーン、RCはレギュラー・チェーンを意味します)。
これを表すことを考えるとそれぞれこう書けば通じますね。
あまりにも発想が単純というか安直というかベタな感じに見えるかもしれませんが、これでいいんです。「違い」を1つだけに絞ってそれを表現しようとすると、こんな単純な発想で十分いけます。気をつけるのは、「何が違うのかがハッキリ目立つようにすること」。例えば、「FCの加盟店はRCの支店よりも数が多い」を表現するのにこんな図ではいけません。
確かに多く書かれてますが、3つと4つの違い程度じゃ、それに意味があると気がつく人は少ないでしょう。そもそも数が違うことさえ見落とされるかもしれません。
同じように、これもダメですね。
確かに「支店」のほうが微妙に大きく書かれてますが「微妙」は通じません。「差がある」ことを伝えたいなら、差をハッキリ見せましょう。
特に、図版の作成を他人に任せる場合はこのあたり気をつける必要があります。キレイな図を作りたい、と考えて、自分が書いたラフ案をデザイナーに渡して書き直してもらうと、気を利かしてその美的センスで「大きさや配置を調整」してくれることがあります。それはそれでありがたいことですし、デザイナーという職種上、するべき仕事なのですが、そこで書き手の意図とズレが出るケースがあります。わたしもそれで何度か失敗しました。最終チェックは必ず自分でやりましょう。
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