“多ノート派”における情報のすみ分け情報生態系を考える(2/2 ページ)

» 2010年04月16日 18時15分 公開
[舘神龍彦,Business Media 誠]
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 まずツイストリング・ノートは各種プロジェクトの暫定的な管理だ。アイデアを製品に昇華するために、製品イメージや展開、マーケティングプランなどを思いつくままに書き込む。システム手帳と同じで、中身をどんどん入れ替えられるのもメリット。とっくに終わったものや中止になったものは、ノスタルジーに浸るのでもなければほとんど邪魔だからだ。

 そしてカバーノートに入れたもう1冊のノート、エッジタイトルは打ち合わせの議事録専用だ。綴じたノートの最大のメリットはページをめくる方向と時系列が一致していること。日付が大きなファクターとなる記録に向いているのだ。そしてエッジタイトルはページのノドに工夫があり、日付と項目を記入して複数項目の情報を管理するのに向いている。

 ここまで読んでくれた人には、上記の手帳とノートの運用方法に共通のルールが見えるのが分かるはず。すなわち、

  • 時系列を重視した記録には綴じられた手帳やノートを利用
  • 複数項目を管理したり、どんどん入れ替えたりするメモ・記録には差し替え可能なシステム手帳やルーズリーフタイプを利用することだ。

 わたしは、形態に合わせてこのようにノート・手帳を使い分けている。なお、同じことはPCに入力しても構わない。だが、ノートとペンの組み合わせにしかないメリットは多々ある。例えば、複数色のペンを使い分けながらアイデアを展開することだったり、フリーハンドで自由にイメージを展開することだったりする(わたしはやっていないが人によっては、ノートとペンでマインドマップを書いたりするのだろう)。

多ノート派が普通になっている

 手帳に関しては、以前から1冊にすべてを集約すべきである旨のことが言われてきた。曰く「2冊だとダブルブッキングが起こる」「1カ所に集約することで情報同士のつながりが分かる」――。

 確かにその通りだし、原則としては無視できない。ただし本当にすべてのことを1冊に集めるのはあまり現実的ではないとも考えている。例えば議事録やToDoリスト、それに仕事のメモなどをすべて1冊のノートに集約すると後から探すのに大変そうだ。インデックスをつけてPCで管理する方法や、インデックスを付けやすいノートなども出ているが、面倒くさがりのわたしには向かなさそうなため、手を出さずに今に至っている。

 わたしの知り合いなどを見ていると、現実的には多ノート派が解になりそうだ。多ノート派とは、目的ごとに別々のノートを使うという考え方だ。信頼文具舗を運営する文具評論家・和田哲哉氏がその著書『文房具を楽しく使う(ノート・手帳編)』(早川書房)において提唱した。現在は文庫版も刊行されている同書中から引用しよう。

 同じ時期に二冊以上のノートを並行して使う人、そういった人たちをわたしは「多ノート派」と呼称しています。(中略)付け加えるならば、複数のノートは同じものではなくて、書かれる内容や使われる場面に合わせて異なったタイプやサイズであると、なおよろしいかと思います。(同書66ページ)

 またこんな記述もある

 こんな考え方はいかがでしょう。パソコン、PDA、携帯電話、これらも情報をストックする「一種のノート」と考えれば、すでに三冊と数えることができます。ここにブロックメモとダイアリーの二冊が加わっただけで合計五冊のノートをハンドリングしていることになります。「一か多か」を議論するまでもなく、情報の所在は今のところ着実に分散化しているようです。(同書68ページ)

 上記のPDAをスマートフォンに置き換えれば、このとらえ方は今でもそのまま通用するだろう。『文房具を〜』が刊行されたのは2004年だったが、気がつけばみな多ノート派になっているのではないか。ノート的な情報記録媒体を複数使い分けるのはめずらしくないのではないだろうか。

 違う点があるとすれば、それはEvernoteやDropboxのようなクラウドツールの存在だろう。これらは、PCやiPhoneを入力/閲覧の手段としつつも情報の事実上の一元化に役立っている。

 だがこれらに入らない情報があるのも事実だ。

 なんでも、1カ所に集めるのも1つの方法だ。だが目的とツールが適切に関係付けられていて重複がなければ、そして無理のない運用ができれば、複数冊のノートを使うことにはほとんど問題がないと考える。

 念のために断っておくと以上のツール群の組み合わせ、使い方はあくまでわたしの実例である。もし、ほかにも面白いツールや活用方法をご存じなら、はてなブックマークやトラックバックなどを通じてぜひ教えてほしい。

著者紹介 舘神龍彦(たてがみ・たつひこ)

 アスキー勤務を経て独立。手帳やPCに関する豊富な知識を生かし、執筆・講演活動を行う。手帳オフ会や「手帳の学校」も主宰。主な著書に『手帳進化論』(PHP研究所)『くらべて選ぶ手帳の図鑑』(えい出版社)『システム手帳新入門!』(岩波書店)『システム手帳の極意』(技術評論社)『パソコンでムダに忙しくならない50の方法』(岩波書店)など。


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