わたしがKindleに飛びつかない理由あなたの不安、見積もります

AmazonのKindleやAppleのiPadの登場で、にわかに盛り上がりを見せる電子書籍市場。もちろんわたしも注目していますが、今のままのデバイスでは購入に踏み切れません。

» 2010年04月01日 12時00分 公開
[佐々木正悟,Business Media 誠]

 2010年は電子書籍元年と言われています。わたしも共著者の一人として『Evernoteハンドブック』を3月に刊行し、バージョンアップにもこぎ着けました。どうにか時代の流れにも付いていけそうで、ほっと一息というところです。

ビジネスパーソンの気になる疑問

佐々木さんは、AmazonのKindleについてどう思われますか?


 興味はかなりあるのですが、まだ購入には至っていません。ちょっと悩んでいるところです。まもなく発売されるiPadは買う予定なのですが、以前から悩んでいたkindleについては、いっそう悩みが深くなってきました。

 やはり気になるのは、日本語の書籍の扱いです。ダウンロードして、買って、読む。どんな本でも、買って、読める。手続きにも利用にも、なんら面倒なところはない。そうなってこそのツールだと思っています。手元で音楽をダウンロードして、すぐに音楽を聴き始められる、iPhoneのようであって欲しいのです。

 誤解のないように断っておきますと、わたしは明日にもKindleを買いそうなところまではきています。洋書だって読みますし、『Evernoteハンドブック』をこれで読みたいという気持ちも強くあります。ただ、このようなツールは、当然できるはずだということが、何も考えずにできて、初めてそれまでにあったものの代替になる、と思うのです。

 例えば、携帯用ヘッドフォンステレオに対するiPhoneがそうです。CDでもMDでもそれほど苦労せず音楽は聴けるけれど、iPhoneならばよりいっそう手軽に音楽が聴けるのです。その上、CDやMDをたくさん購入したときには避けられなくなる、「モノの整理」から解放されます。だから素晴らしいのです。

 紙の書籍は、手軽に買えて手軽に読めます。読むというだけの行為を取り出せば、電子書籍のアドバンテージは、それほど大きいとは思えません。だからこの部分での利便性が、紙に劣るようであっては手を出しにくいわけです。紙の本のように苦もなく買えて、苦もなくめくれて、苦もなく持てて、苦もなく読めるようでなければ、わざわざ変更したいとは考えられないのです。

 しかし、読みやすさが同等になれば、電子書籍は明らかに紙の書籍に対して有利です。キーワード検索可能というポイントと、何冊買ってもモノは増えないし整理も要求しないからです。

 それにわたしは最近になって、書籍の95%以上をアマゾンから購入しています。これは努力してそうなったのではなくて、自然とこうなっていったのです。つまりこれがわたしにとっての現実です。そう考えると、Kindleは素晴らしいのです。何しろ購入スタイルを変えないままに、本を家に持つことができて、読んだ内容を検索できて、本の整理と書棚が不要になるのですから。

 残り5%の書店で買う本だけであれば、整理や売却など、扱いがより容易になるでしょう。紙の本が「うんと減る」という意味でも電子書籍には大きな魅力を感じます。

筆者:佐々木正悟

 心理学ジャーナリスト。専門は認知心理学。1973年北海道生まれ。1997年獨協大学卒業後、ドコモサービスに派遣社員として入社。2001年アヴィラ大学心理学科に留学。同大学卒業後、2004年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。2005年に帰国。著書に、『スピードハックス』『チームハックス』のほか『ブレインハックス』、『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』、『やる気ハックス』などがある。「シゴタノ!−仕事を楽しくする研究日誌」にて「心理ハック」を連載中。ブログ「ライフハックス心理学」主宰。


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