異動や転職の「節目」で縁をつなぐいくつかのコツ研修に行ってこい!

4月は昇進や昇格、異動や転勤、転職の時期。とはいえ年度の終わりや始まりは忙しいものです。お付き合いがあった人へあいさつもできないままとなってしまうことも多いはず。こんなやり方でうまく“縁”をつなげてみてはいかがでしょう。

» 2010年03月30日 11時20分 公開
[原田由美子,Business Media 誠]

 4月は昇進や昇格、異動や転勤、転職の時期です。最近は、急な異動や転職なども多くなり、お付き合いがあった人へあいさつもできないままとなってしまうことも多いようです。そこで今回は、お付き合いがあった人とのご縁をつなぐコツをご紹介しましょう。

「節目のあいさつ」で知った、人付き合いの妙

 部下が退職するため、担当企業の引き継ぎをしていたときのことです。部下に「いくつかの会社には、実際にお会いして、ごあいさつしましょう」と伝えると驚いた表情をしていました。

 お客様の下に向かう目的は、日ごろの取引への感謝、今まで部下がお世話になったお礼、引き継ぐ担当の紹介――などのごあいさつです。訪問先との関係性によって違いはありますが、ねぎらいや今後の展望を聞くなど、世間話をした上で訪問を終えるという流れになります。

 取引の実績がなく、部下が訪問し始めて間もない企業にあいさつに行ったときのこと。お会いしたのは、50代の部長さんです。大変忙しい部長でしたが、快くごあいさつに応じてくれました。これまでのお礼や今後の引き継ぎなどをお伝えし、そろそろおいとまするというタイミングで、

 「これからが楽しみですね。またいつでも遊びに来てください。世の中は広いようで、狭いです。きっとまたご縁がありますよ」

 そう言って、部長はゆっくりと深くおじぎしました。どちらが客か分からないほどの丁寧な対応に、部下もわたしもとても恐縮しましたのを覚えています。先方の会社を出るとすぐに部下がこう言いました。「あのように言ってもらえるとは……。うれしいです、今までそんなことを言ってもらったことなかったので」

 その後分かったことですが、部下が以前いた会社では、人が入っては辞めていくような環境で、引き継ぎという考え方がない。社内でさえその状況なので、社外の相手に節目のごあいさつをすることすら知らなかったというのです。その部下に対して日ごろ「ドライだな〜」と感じていたわたしですが、なるほど、彼がなぜドライになったのかが分かった気がしました。

 人間関係を築くプロセスや人として大事にされる経験をすることで、喜びの感情が生まれ、人付き合いの大事さが少しずつ分かってきます。今の若い人たちは「人付き合いが下手」と言われていますが、人付き合いを深める経験ができる機会そのものが減っているのかもしれません。まずは節目のあいさつを上手く使って彼らにそういう機会を経験してもらうのもいいでしょう。

ご縁をつなぐヒント

 好不況に関係なくビジネスで活躍している人を見ていると、人とのご縁を大切にしています。そこで、昇進や異動、転勤、退職した人に今までのお礼を兼ねてメッセージを送る方法をご紹介しましょう。もちろん、ご縁を大切にする方法は人それぞれですが、わたしのお勧めは「絵はがき」+「ひとことメッセージ」です。

 絵はがきを選ぶ理由は、絵はがきがその人のパーソナリティーを表現しやすいからです。例えばわたしの場合は、会社が横浜にあるので、誰でもよく知っている横浜の風景の絵はがきを活用しています。というのも、初めてお会いした人のほとんどが「御社は横浜にあるんですね」と言うからです。すると、その人の横浜での思い出話や横浜に対する印象などの“横浜話”で話がしばらく盛り上がり、そこからビジネスの話に入ることが多く、実際に仕事につながったこともありました。

 なので、異動する時や退職する時に、最初の印象を生かした絵はがきを送ることで、もう一度初対面のインパクトを思い出させる効果があります。また、仕事までつながった人であれば、そうした記憶からもう一度仕事がやってくる可能性もあるのです。こうしてつながりを持たせておくと「横浜コンサルティング会社に、なんとかスターという会社があったな……」と覚えておいてもらえるのです。

 誠 Biz.IDの連載「感動のイルカ」でも活躍している森川滋之さんから届いた絵はがきもインパクトがありました。“森”を想起させる大きな木。その画は、森川さんが懇意にしている画家のはせがわいさおさんのもので、森川さんとはせがわさんのつながりも感じましたし、送ってくれた森川さんの世界観が伝わってくるものでした。このように絵はがきは、パーソナリティーを伝え、つながりを表現するのに大変有効です。

(C)ISAO HASEGAWA

 自分自身で撮影した写真や手描きの絵だったらもっと素敵ですよね。表現に自信のある人は、自分のセンスを活かせる機会になりますよ。

喜ばれるメッセージの工夫

 わたしは、もともとはメッセージを書くのがあまり得意でありません。ある研修で講師が紹介していた方法をそのまま真似ています。それは、講師自身が海外のエグゼクティブからもらったメッセージでした。

 親愛なるYUへ

 今回日本で、あなたと仕事ができて本当によかった。特に、あの大変な局面であなたが下した判断は素晴らしかった。あの時、君が機転をきかせてくれなかったら、今日笑顔でここにいることはできなかっただろう。本当にありがとう。

 成田にて、Smithより

 追伸:Enkai Geiの写真は封印しておいてくれるかな。特に、私の家族の前では極秘扱いで頼むよ。

 このメッセージのポイントは次の6つです。感謝の言葉に加え、

  • 1:相手の素晴らしい面を表現していること
  • 2:お互いしか知らない秘密の関係を想起させること
  • 3:ユーモアを感じること
  • 4:今後の関係性の継続も感じられること
  • 5:短い文章で印象的であること
  • 6:時間を感じられること

 目上の人にお送りする場合は、少しアレンジが必要ですが、仕事の仲間や後輩に送るメッセージとしては、このポイントは非常に有効です。最初は上手くまとまらないかもしれませんが、繰り返しチャレンジしているうちにコンパクトで印象的なメッセージが作れるようになるでしょう。


著者紹介:原田由美子(はらだ・ゆみこ)

 大手生命保険会社、人材育成コンサルティング会社の仕事を通じ、組織におけるリーダー育成力(中堅層 30代〜40代)が低下しているという問題意識から、2006年Six Stars Consultingを設立、代表取締役に就任。現在と将来のリーダーを育成するための、企業内研修の体系構築、プログラム開発から運営までを提供する。

 社名であるSix Starsは、仕事をする上での信条として、サービスの最高品質5つ星を越える=クライアントの期待を越える仕事をし続けようとの想いから名付けた。リーダーを育成することで、組織力が強化され、好循環が生まれるような仕組みを含めた提案が評価されている。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ