インタビュー
» 2010年03月25日 13時15分 UPDATE

Amazon Kindle DTP:僕から出版社にお金を分配する未来――電子書籍出版秘話 (2/3)

[山口真弘,Business Media 誠]

誠 Biz.ID 絶版にして塩漬けの状態にしているという。

小沢氏 そうですね、権利だけ持っていってて。一般的な出版契約書っていうのは、3年後か5年後くらいでどっちかが更新しないよと言えば契約関係を破棄できるんですね。なのでそこで破棄してしまえば、出版権を次どこに委ねるかというのは自由で、出版社を自分で見つけてアピールして売ったっていいわけですし、もちろん電子書籍化したいといったっていいわけです。ここ5年か10年くらいの間に結んだ出版契約書というのは実は電子出版に関する契約はほとんど書いてあるんですよね。(印税率は)たいていは15%ですね。それでも一般の書籍(の印税率10%)に比べたら高いんだからいいじゃんという話なんですが、これは実売ベースの数字なので、ぜんぜんお金の入り方が違うわけです。

 いろんなところの法務にも確認したんですが、Kindleの場合、オプションつけて70%もらう場合でも、著者にはやっぱり15%しか払えない、いまの契約のままだとそうなります、という話で。Kindleとかを想定していない段階で作っている契約書なんで、もちろんそこは今後改善されていくとは思うんですが、Kindleで出すのはそんなに難しいの、出版社に絶対代わってもらわなくちゃいけないのっていう疑問があって。

 選択肢としてもちろん出版社にそういうふうな法務の部分も含めてお願いしたいという人もいれば、それはそれでいいと思うんですね。でも、個人で出したいという人もいっぱいいると思うんですよ。で、そのために誰でもできることだよというのを明らかにしたかったというのが、今回の動機として実はいちばんあって。少なくとも誰かがやっちゃえば、でも個人で出してる作家さんいますよねって言えるわけで、それだけでも違うと思うんですよ。なのでどんどんそこは発信していって自由にしたいなという思いがありますね。そういう意味で新しい関係というか、そういうのを作れればいいじゃないかなというところです。

誠 Biz.ID 大同団結してない出版社の方が面白い気がしますね。

小沢氏 僕がいま持ちかけているのも、入ってないところです。せっかく入ってないんだからやりましょうよ、っていう。入っちゃったら負けですよという。横並びで何もしないよーと言ってるだけですから。

 もちろんお金うんぬんの話はあるんですが、それ以上にマンガ界はちょっと問題がいろいろ多いので。とくにマンガ家と編集の問題というのはほんとに根深いところなので。佐藤秀峰さんの件だったり雷句さんの件だったり、竹熊さんもよく言っているように作家と編集の信頼性が壊れてるというのが多いですね。

 うちも勝手にセリフを直されたりとか。担当が2人いたんですけど片方の担当が具合が悪いと言ってもう1人の担当と打ち合わせをして、その翌日にネームを送ったらその日出席していなかった担当からクレームが来るんですね。ほぼ打ち合わせ通りなんですが、打ち合わせの内容を聞いていないと言うんです。こういう打ち合わせをしたんだという著者経由で伝言をしたりするんですね、それで、いやそれじゃダメだからやり直しって、なに? って。普通の社会人的にはダメな慣習がまかり通っちゃってるんですよ。

 ただそれでもやっぱりマンガってどこか「憧れの産業」的なところがあるので、「お前がいなくてもほかに描く人いるよ」と買い叩かれているんですよね。

電子化をやりたい一番の理由は、面白いものをどんどん描きたいから

st_kd11.jpg うめ著『大東京トイボックス』

小沢氏 もちろんそうでない編集さんもいっぱいいて、いまはもうそうじゃない人たちとしか仕事はしていません。ちゃんと最後に著者の味方ができる人とじゃないと仕事をしたくないんですね。出版できる力というのをこちらも持てば、いろんな意味で、正しい意味で対等になれる。そのうえじゃないといいコンテンツが作れないと思うんですね。そうすると結果おもしろいものがどんどん出てくるだろうし、実は電子化をやりたい一番の理由は、面白いものをどんどん描きたいという、そこにあったりします。

誠 Biz.ID 意思疎通ができなかったり作品が市場に出るまでに自分の意思が通らないことがあって、それに対して市場と直接パイプを持つことによって健全化を図っていく、自分が作りたいものを作っていくということですね。

小沢氏 セリフを勝手に直されるというのは、平気でやられましたよ。直してやってるからこれだけ見れるものになるんだ、感謝しろ、と真顔で言われたこともあります。でもそれってネットで言えば他人のブログに文章を書いてお前の発言だって言ってるようなものですよね。編集って一部の雑誌を除いて表に名前が出ないじゃないですか。それで最終的なアカウントの乗っ取りみたいなことをやられてしまうと、こちらは名前出してるわけなんで、どうなの、というのがありますよね。こっちの方がいいと思ったからといってどんどん変えちゃうんですよ。好きを嫌いに変えるくらいのことは平気でしますね。

誠 Biz.ID ストーリー変わっちゃわないんですか。

小沢氏 変わっちゃいますよ。例えば、すねた顔で嫌いと言うことで好きという気持ちを表すという表現がありますよね。それを分かりにくいから好きに変えちゃう。そういう感じなんですよ。

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