インタビュー
» 2010年03月24日 12時30分 UPDATE

Amazon Kindle DTP:Kindle初の日本語マンガはいかにして誕生したか――電子書籍出版秘話 (1/3)

AmazonのKindleやAppleのiPadなど、電子書籍に関する動きが活発になってきた。日本語のマンガでいち早く電子出版を試みた小沢高広氏に話を聞いた。

[山口真弘,Business Media 誠]
st_kd01.jpg 小沢氏

 Amazon KindleAppleiPadなど、電子書籍に関する動きが今年に入ってから盛んだ。そんな中、1月下旬にKindle Store初となる日本語マンガ「AOZORA Finder Rock(青空ファインダーロック)」が登場し、Kindleへのダウンロードが可能になった。

 著者はコミックバーズの「大東京トイボックス」などで知られるうめ氏。今回は、2人の漫画ユニット「うめ」として活動し、原作/演出を担当する小沢高広氏に、Kindle DTPでの電子書籍出版のきっかけや経緯、さらには現在のマンガ業界が抱える問題点、今後のマンガ家と出版社の関係などについて聞いた。

st_kd02.jpg

最初は出す気も何にもなかった

誠 Biz.ID 早速ですが、うめさんはマンガ家さんの中でもちょっと先を行く、新しいことにチャレンジされる傾向が強いという印象を受けるのですが、そのへんはご自身ではいかがですか。

小沢氏 そうですね、好きなんでしょうねきっと(笑)。いまメインで「大東京トイボックス」を描いてるんですが、あれが柱で動いている時に、ほかにいろんなことやってみたいという。

誠 Biz.ID マンガ原稿のデジタル化への取り組みは早かった方なんでしょうか。

小沢氏 僕はデビューがモーニングだったんですが、モーニングでは(デジタル化は)いちばんでした。担当編集があまりそちらの知識がなくて、製版所のデジタル入稿の担当者と直接話してくれということで製版所に行ったら、製版所に来たマンガ家は初めてだということで上を下への大騒ぎになって。すごくえらい人たちがいっぱい名刺をくれました(笑)

誠 Biz.ID なるほど。それはいつごろの話ですか。

小沢氏 トイボ(注:大東京トイボックスの前身に当たる「東京トイボックス」)を始めた時なので、2005年ですね。なのでわりと最近です。ただ、モーニングは正直デジタル化は遅かったです。それまでもカラーCGをデータ入稿という方はいたんですが、モノクロ原稿で出した方はいなくて。データを紙に出して入稿という方は結構いらっしゃったんですけど。ただポストスクリプト対応のプリンタだと何十万にもなっちゃって初期投資が高くなるので、じゃあデータでいいじゃんと。逆にもっと部数が少ない月刊誌の方がデジタル化は進んでましたね。作家さんも若かったりするんで。

誠 Biz.ID それは編集部さんの方が労力を削減したいというのもあるんでしょうか。

小沢氏 ですね。コストの問題もたぶんあったと思います。そういう意味では同業者の中ではそんなに早い方ではないと思うんですが、モーニングの(執筆陣の)中では早かったです。

誠 Biz.ID ということは、今回Kindleで出版するにあたって、マンガ家さんの仲間うちでの情報交換はなく、まずはやってみようという形だったわけでしょうか。

小沢氏 そうです。それだけです。ただ、Kindleを持っている人は周りにわりといました。最初に買ったのはゲームデザイナーの飯田和敏さん(※注1)で、そこから米光一成さん(※注2)のところに電話があって、もうPCはいらないよ、PCおわったよという話があって。米光さんは出たばかりのモノはキリがないのですぐには買わないらしいんですが、そんなに飯田くんが言うんだから買ってみようと。それで、米光さんの手元に届いた翌日くらいに僕が見せられたんです。

 で、やっぱり日本語対応してねーじゃん、右と左のページボタンがズレてるし、とか文句を言ってたんですが、すごい、E Inkがいいんだよとかいろいろ言われて。そういう意味では自分で買う気はなくて、いまだに買ってはいないんですが(笑)、最初は出す気も何にもなかったですね。ただ、Kindleとの出会い自体はわりと早い方でした。日本で正式に買えるようになって1カ月も経っていないころですから、去年の11月くらいですね。

※注1:飯田和敏氏=ゲームデザイナー。「ディシプリン*帝国の誕生」が、2009年度の文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門の審査委員会推薦作品に選出
※注2:米光一成氏=ゲームクリエイター。コンパイル在籍時に「ぷよぷよ」を企画したことで知られる。立命館大学映像学部教授

承認が下りるまで48時間もかかっていない

st_kd08.jpg 「AOZORA Finder Rock(青空ファインダーロック)」

誠 Biz.ID 今回電子書籍化した青空ファインダーロック(AOZORA Finder Rock)は、以前「日経エンタテインメント!」に単発で掲載された作品とのことですが、これを選んだきっかけは。

小沢氏 もちろん描き下ろすと言う手もあったんですが、権利関係が自由なものを出すというのが何より大事だなと。過去によそで描いた短編はあったんですが、そちらからはもう少し描き足して単行本にしたいねというオファーをいただいていたので、そうそう勝手に動かせない。日経BPさんの方でまとめて単行本を出そうという気はまったくない状態だったので、ちょっと相談させてもらって。あと読者の人から見たいという声があったのも合わせて、じゃあちょうどいいし、やってみようかという形ですね。

誠 Biz.ID 編集部の対応はいかがでしたか。理解を示したんでしょうか。

小沢氏 もうぜひぜひ、ぜんぜんOKという姿勢です。

誠 Biz.ID 例えば誌名を入れてくれといった要望は。

小沢氏 特になかったですね。ただ、そのへんは抜かったなと思って、最新の第三版では最後に著作権の表記とか、初出とかをぜんぶ入れるようにしました。当時の編集さんの名前も許可を取って入れてます。

誠 Biz.ID ということは、最初は奥付が存在しなかったんですね。

小沢氏 はい、あれはうっかりしていました(笑)。プロとしてダメだなと思っています。

誠 Biz.ID でも最初はどうなるか分からないですよね。

小沢氏 分かんなかったですね。登録フォームに著者データを入れるところがあったので、そこに入れたら勝手に奥付になるのかなと思ってました。入稿自体も、どういう形式でやっていいかほんとに曖昧だったので。

st_kd03.jpg Kindle DTP登録フォーム

誠 Biz.ID 実際のKindle DTPへの登録作業はぜんぶ小沢さんがやったんでしょうか。

小沢氏 そうです。基本的に自分でやっています。ただ、友達のエンジニアの人にうちに来てもらって、横に座ってもらって「どうしようか」「ああしようか」といろいろ相談しながらやるという形です。

誠 Biz.ID Kindle DTPは現時点では英語のインタフェースですが、そのあたりのハンデはどうでしたか。

小沢氏 エンジニアの友達が翻訳などをしていて英語は普通にできるので、出版関係であればまあまあ分かるね、という感じで。ただ、作者だったらAuthorとか、そんなに難しい単語を使っているわけではないです。強いて言えば、本の紹介のところの英文が、難しくすればいくらでも難しくできるというくらいですかね。

誠 Biz.ID Kindle DTPには検索用のキーワードを登録する項目があったと思うんですが、どうされましたか。

小沢氏 いや、適当に「japanese manga」とか「comic」とか「photographer」とか「idol」とか、そんな感じで入れました。

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