苦しんでいる営業担当者は、焦らず顧客の欲しい情報を提供し続けることが重要です。そして、営業担当者でなくても営業に役立つ情報を提供する。こうして全社一丸となって“営業”することで、会社の業績が上向く可能性に差が出ます。
前回の記事では、調査対象企業の約7割が「顧客の課題が抽出できない」ことが悩みであること、現実にはクライアントも課題が特定しきれないことなどの問題点を指摘。また、そのような状況下の営業活動とは、まず世の中の動きなどの情報を収集し、クライアントを取り巻く環境や今後の方向性といった共通認識を持つことの必要性をお伝えしました。
今回は、実際の客との接点となる営業担当者の役割と、周囲のサポートがいかに大切であるかについて、考えていきましょう。
少し肩の力を抜いて、営業の苦労話にお付き合いください。営業活動をしていると、クライアントを取り巻く環境が本当に厳しい現状を目の当たりにします。潤沢とはいえない予算、厳しい納期、限られた人員、質・量ともに求められる高い水準、その全てに折り合いをつけながら、成果を上げることが求められる。まさに至難の業です。
そんなクライアントを相手に営業は、求められているはずの売上を上げることが難しいと感じているのが本音です。それでも黙って営業活動を続けているのは、数を当たることができれば、結果に繋がることを経験則で知っているからです。
しかし、数を当たったとしても、会社が求める水準の結果を満たせる人はわずか。そこで責められでもしたら、モチベーションが下がるだけでなく、その気持ちを引きずったままクライアントへ訪問することとなります。自分のことしか考えられなくなっている営業担当の訪問を喜ぶクライアントがいないことは、想像に難くないと思います。そのために、低くなったモチベーションを、何とか立て直し、一縷(いちる)の望みにかけながら営業をしているのが、多くの営業担当者の現状です。
それでは、この状況はいつまで続くのでしょうか? 個人的な考えをお伝えすると、この厳しい状況は当分続きそうです。ですが、次のような考え方や行動ができる担当者には、チャンスが来ています。
2008年からの急激な業績悪化を受けて、社内で実施あるいは検討していたありとあらゆる案件を、多くの企業がストップしました。そのストップしている期間、企業内では今までのことをゼロベースで見直し、再構築していたのです。多くの案件では予算も割り当てられていないので、現実的に案件を動かすまでに少し時間がかかるかもしれませんが、意欲や実行力のある担当者は、その期間で検討していたことを形にしたいと考え始めています。
ただし、大きな失敗は許されません。慎重に事を運んでいます。そのため、提案依頼のような形で情報発信することはなく、自社に対して親身に接してくれる営業担当者に対して、漠然とした自分の考えやアイデアを伝えています。そして、その考えやアイデアに対して、共感を態度で示したり、アイデアや情報を提供してくれる――いわば担当者自身のサポーターとなってくれる営業担当者を求める傾向にあります。
こうしたタイミングは、その仕事が動き始めた時に大きなチャンス。その営業担当者にとっても比較的大きな仕事になるはずです。
ただし、このタイミングをしっかりキャッチするためには、最低限やっておきたいことがあります。
まずは、こうした情報をとことん収集しておくのです。
営業以外の人にもお願いがあります。情報を広範囲に集めようとすると、どうしても1人の力では限界があります。読んでいる新聞、購入した雑誌の記事、目にしたインターネット上の情報などを営業担当者に“こんな情報があったよ”と口頭でもメモでも、伝えてあげてほしいのです。
その情報がすぐに役立つかどうかは分かりませんが、営業担当者が客先に訪問したときのちょっとした話材となり、話が進むきっかけとなることが往々にしてあります。そのイメージを“提案機会が生かせる営業のイメージ”として図にしてみました。
わたし自身も、アシスタントが提供してくれた雑誌の記事を営業時に持参したところ「よくうちのことを理解してくださっていますね」と言われ、大きな仕事につながったケースがあります。それは、一度だけではありません。特に担当者が変わったとき、新しい取り引きを検討しているときなどは、このような営業姿勢がその後の取り引きにつながるケースが多々あります。
あなたが直接的に営業していなくても、業績に対して大きな貢献になる可能性があるのです。ちょっと古臭いかもしれませんが、顧客の役に立つには“全社一丸となって”とまではいかないまでも、“チーム一丸となって”仕事を担当する気持ちを、求められているのではないでしょうか?
会社の業績が下がっているときは、ややもすると営業担当者の文句を言いがちですが、実は営業担当者も苦しんでいるのです。苦しんでいるからこそ営業担当者は顧客の欲しい情報を提供するべきですし、営業担当者でなくても営業に役立つ情報を提供する。そんなことを実行することで、会社の業績が上向くかもしれませんよ。
大手生命保険会社、人材育成コンサルティング会社の仕事を通じ、組織におけるリーダー育成力(中堅層 30代〜40代)が低下しているという問題意識から、2006年Six Stars Consultingを設立、代表取締役に就任。現在と将来のリーダーを育成するための、企業内研修の体系構築、プログラム開発から運営までを提供する。
社名であるSix Starsは、仕事をする上での信条として、サービスの最高品質5つ星を越える=クライアントの期待を越える仕事をし続けようとの想いから名付けた。リーダーを育成することで、組織力が強化され、好循環が生まれるような仕組みを含めた提案が評価されている。
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