iPhoneを使いはじめて早2カ月。これまで紙の手帳もPDAも数多く試してきた筆者だが、「超手帳」とでもいうべきiPhoneの使用感に驚いている。
ひょんなことからiPhoneを使うようになって、2カ月が経とうとしている。
筆者はこれまでに数々のPDAを使ってきた。モバイルギア(MS-DOS版/WindowsCE版、NEC)やジョルナダ(HP)、さかのぼればオアシスポケット3(富士通)、シグマリオン(NTTドコモ)などなど。
しかし、iPhoneを使ってみて感じるのは、それらPDAのどの機種とも違う「世界が手のひらに収まっているような感覚」だ。今回は“超手帳”とも言うべきiPhoneと、PDAや紙の手帳の関係性について考えてみたい。
まずは、かつて電子的な手帳の役割を期待されていたPDAについて。筆者が使っていた当時のPDAは、瞬時に起動し、キーボードでのタイピング≒文字の高速入力を外出先でも可能にするという点で、現在でいう「ポメラ」のような便利さを持っていた。さらに言うと、キーボードを装備しないPalmOS搭載の製品も含めて、PDAは等しく手帳を“擬態”していたといえる。
PDAにおける手帳への擬態は、以下の3点に表れている。
まずは内蔵ソフトだ。PDAには必ずと言っていいほど、アドレス帳やスケジュール管理機能、ToDoリストなどが用意されていた。そしてPC側のOutlookなどとケーブル経由でシンクロすることができた。
次に、スタイラスと呼ばれる入力用ペンの存在だ。これを使って液晶画面に手書きで文字を入力すると、文字認識ソフトでテキスト化される。
最後に、純正/サードパーティーの革製カバーだ。このカバーを装着することで、PDAは電子手帳としての擬態を完成していたのだ。
この3つの点で、PDAは手帳に擬態し、古いハードウェアである手帳のユーザーからのスムーズな乗り換え=市場の獲得を目的としていたと考えられる。しかし、実際にはPDAは手帳に取って代わることはなかった。便利であったのは確かだが、商業的に成功しなかったからだ。原因は、単機能の小型デジタル機器や携帯電話が普及したからだろう(詳しくは拙著『システム手帳の極意』を参照)。
では、iPhoneはPDAとどう違うのか。多機能ガジェットという点では同じだが、多機能性を実現している仕組みを、ユーザーにほとんど意識させることがないという点が大きく異なっているのだ。無線LANや3G通信、多様なWebアプリなどの各種インフラが積み重なり、使用感を「iPhone体験」とでも言うべきレベルにまで高めている。
例えば、PDAを道案内用デバイスとして使いたいのなら、GPSアンテナユニットを搭載し、PCまたはコンパクトフラッシュ経由で地図アプリをインストールする必要がある。これがiPhoneであれば、標準搭載の、あるいは好みの地図アプリをネットワーク経由でダウンロードすればいいだけだ。PDAに比べ、要求される投資と努力と知識の量は格段に少なくて済む。
では、iPhoneと紙の手帳を比較するとどうだろう。
まず、当然ながら閲覧できる情報量に大きな違いがある。筆者の例を挙げよう。昨年12月に取材とテレビ出演のために大阪に行ったときのことだ。宿泊先のホテルへの行き方を調べるため、Webサイトで地図を探した。今までなら見つけた地図ページを紙にプリントして、手帳に挟んだだろう。しかしこのときは、地図ページをPDFファイルとして保存し、オンラインストレージ「Dropbox」のフォルダに置いた。これならいつでもiPhoneから見られるし、マルチタッチでの地図の拡大なども簡単に行える。
情報を紙の形で挟む手帳やノートと比較すると、クラウド上に保存したデータに簡単にアクセスできるiPhoneは閲覧・保持できる情報の上限が飛躍的に増大した(いや事実上無限というべきか)のである。
ファイルにアクセスできるのはデジタルファイルに限らない。スキャナを使って紙を取り込めば、ほとんど無制限といえる情報の閲覧が可能だ。文書や音声、動画などあらゆる情報を一元管理できるWebサービス「Evernote」は、PFUの「ScanSnap」やキヤノンの「imageFORMULA」などのドキュメントスキャナと連携し、スキャンしたデータを直接取り込める。
月齢や六曜、はては外国の休日などをすべて手帳の記入欄に表記することはできない。これは手帳の記入欄には面積の物理的な限界があるからだ。
だがiPhoneでは、アプリ「日めくり2010年版」などを使えば、六曜や二十四節気、旧暦、ユリウス暦、各種記念日や皇紀、毎日の日の出や日没の時刻まで、およそ考え得る限りの暦情報を表示できる。
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