わたしがポメラを買わない理由あなたの不安、見積もります

話題のデジタルメモツール「ポメラ」。わたしは持っていないのですが、それには理由があります。

» 2010年02月26日 15時21分 公開
[佐々木正悟,Business Media 誠]
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 キングジムのデジタルメモツール、ポメラ。わたしは持っていないのですが、時折「物書きなのに、なぜ?」と尋ねられることがあります。それほど幅広く認知され、人気が高いガジェットなのですね。


 わたしがポメラを買わない理由は2つあります。

 1つ目は、いつでもどこでも仕事を“しない”ようにするためです。

 確かに、ポメラの軽さと入力のしやすさは便利でしょう。しかし、いつでもどこでも文章が書ける環境を用意することが、それほど良いことだとは思えないのです。わたしがポメラを買った場合、もしかすると起きている時間のほとんどを、原稿書きに費やしてしまうことにもなりかねません。

 工夫して時間を作っても、その時間を何に使うかは、大事な問題です。集中するための時間管理術を駆使して捻出した余暇時間を、また文章入力につぎ込むというのは、何とも残念なことだと思えます。喫茶店と電車の中くらいは、眠ったり音楽を聴いたりしていたいという思いがあります。

 2つ目は、こちらが特に重要なのですが、「ポメラのシンプルさ」と「私の考えるシンプルさ」に隔たりがあることです。

 ポメラは、楽に持ち歩けて、メモを取ることだけに特化したシンプルさが特徴。そのために、ネットワーク機能などをあえて省き、本体サイズやコストを抑えたということは分かります。しかし、ポメラで書き終えた原稿が、それだけで“完結”することは少ないでしょう。ほとんどの場合は、最終的にPCに取り込んで整形し、PCのローカルやクラウドに保存されるはずです。

 わたしが考えるシンプルさとは、「何もしなくても」この最終形の状態になっていることです。つまり、書き終えた瞬間に(あるいは書いている最中にも)、自動でテキストがPCに転送され、「保存」の1アクションを取る必要がないこと。

 書くだけで完結する。これこそが「シンプル」なのだと思えます。そのためには、やはりWi-FiやBluetoothによるワイヤレス接続機能が必要でしょう。さらに欲を言えば、無線でネットワークにつながったらすぐに、Evernoteと同期を取るようになってくれたら理想的です。

 現行機種では、USB接続やQRコードを使ってテキストを転送する仕組みです。「この転送作業にだって、大して手間がかかるわけでもないじゃないか」と思われる人もいるかもしれません。しかし、どんなに簡単な作業であったとしても、「手間が少ない」と「手間がかからない」は大きく異なるものなのです。

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筆者:佐々木正悟

 心理学ジャーナリスト。専門は認知心理学。1973年北海道生まれ。1997年獨協大学卒業後、ドコモサービスに派遣社員として入社。2001年アヴィラ大学心理学科に留学。同大学卒業後、2004年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。2005年に帰国。著書に、『スピードハックス』『チームハックス』のほか『ブレインハックス』、『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』、『やる気ハックス』などがある。「シゴタノ!−仕事を楽しくする研究日誌」にて「心理ハック」を連載中。ブログ「ライフハックス心理学」主宰。


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