フラット化し、一見自由が進むかに見えた世界。その一方、既存コミュニティは崩壊し、きずなを作る飲み会のような場も減少した。コミュニティから放り出された個人は、不安を抱えたまま生きざるを得なくなったと『不安な経済/漂流する個人』の著者であるリチャード・セネットは言う。
フラット化し、一見自由が進むかに見えた世界。しかし、自由は同時に不安を抱きながら生きることを強いることに……。ロンドン在住の社会学者リチャード・セネットは、そんな現代社会を『不安な経済/漂流する個人』で批判。社会主義でも個人主義でもない、第三の方向性を指し示した。
結束度は強いが個人は抑圧されがちなのが20世紀社会(図表左上)。軍隊・工場に象徴され、官僚をトップにおいた合理的なピラミッド社会であった。その完成形は日本だろう。終身雇用・年功序列によって社内の結束を高め、高い工場生産性を保ちながら世界経済を席巻した。
20世紀も後半に進むと、図表の右側、すなわち自由の方向へと進む。市場と個人に重きがおかれ、情報技術の進展とともに既存コミュニティは崩壊していった。流動性が高まるゆえに、個人の帰属心(ロイヤリティ)は低下。飲み会のようなスタッフ同士のきずなを作るインフォーマルな場も減少。組織もフラット化して中間層がいなくなったから、組織への知識を持つ人物も減ってしまう。コミュニティから放り出された個人は、不安を抱えたまま生きざるを得なくなったと著者は言う。
こうした社会の変化への対策は3つあるという。
21世紀は個人が主役になるのは間違いない。国でも企業でも家族でもなく、個人の尊厳を高め、個人の物語を支える新しい仕組みが必要になるのだろう。
RCF代表取締役。一橋大学卒業後、バー経営、マッキンゼーを経て独立。「100年続く事業を創る」をテーマに講演・コンサルティング活動に従事。創業前の若者に1億円投資するスキームを企画運営し、話題を呼ぶ。「雇われ経営参謀」として500人以上の経営・企業相談を受けてきた。ブログに毎日書評を掲載し、現在1200冊超。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.