ディックのオルガン、ベッドの乙女Biz.ID Weekly Top10

フィリップ・K・ディックのSF小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』に、「ムードオルガン」というガジェットが出てきた。筆者はあれが大変気になる。

» 2010年02月18日 15時56分 公開
[杉本吏,Business Media 誠]

 先週のBiz.IDで最も読まれたのは、「Twilog」や「※ただイケ」などの人気Webサービスをひとりで作るロプロスさんへのインタビュー記事。「歯医者の診療台の上で天啓のようにアイデアがひらめいた」「ほっといたら朝から晩までコードを書いている」というロプロスさんの発言からは、斬新なアイデアをぱっと思いつける瞬発力と、成果をコツコツと積み重ねていける継続力の両面が伝わってくる。


 先日、海外SF作品の翻訳で著名な浅倉久志氏の訃報を聞いた。学生時代から氏の翻訳作品に親しみ、ことあるごとに読み返しては楽しませてもらっていた者としては、大変に残念だ。謹んでお悔やみ申し上げる。

 数々の名作を翻訳されてきた浅倉氏だが、筆者にとって最も思い出深い作品となると、やはりフィリップ・K・ディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』になる。ディック得意の悪夢的なストーリーテリング、登場人物が徐々に自我を喪失していく展開。初読からずいぶん経つが、読了後の何ともいえない感覚は強く印象に残っている。

 ディック作品と言えば、独特の魅力を放つガジェットも世界観の構築に一役買っているわけで、『アンドロイド〜』でいうと「ムードオルガン」がその一例だ。これは一言でいえば「感情調節マシーン」であり、特定のチャンネルにダイヤルをセットして眠りにつくと、意図的に自虐的な気持ちになったり、逆に晴れやかな気持ちになったりできる。「ムードオルガンを使いたくなるチャンネル」まで用意されているというのが、オソロしく、かつ実に魅力的だ。仕事中など、「これが実在していたらいいのに……」と思うこと数知れず、である。

 そんなことを考えながら今日もニュースのネタ探しをしていたら、2月18日付けの日経トレンディネットでこんな記事を見つけてしまった(【ついに発売】音や明かり、振動で眠りを誘う“100万円ベッド”、専門家の評価は?)。記事によると、快適な眠りのために証明や音楽を自動調節してくれるベッドだそうで、

 面白いのは、内蔵された専用音楽を利用者の気分によって選べる点。例えば、「憂うつなときは少し暗めの曲から始まり、徐々に明るい曲に変わることで、聴く人の気持ちも同調して明るくなる」(パナソニック電工)という。

 起床時間の10分前からも照明が少しずつ明るくなり、5分前からは専用音楽も流れて、目覚めをサポートする。

 こんなことが書いてある。気になるだろ、これは気になるだろ――と思っていたところ、ひさびさ登場の乙女な人が「あたしこれ体験したよ!」などと言い出すではないか。おお、見落としていたが確かに記事が上がっていた

パナソニック電光のSFベッド(?)「シモンズ レスティーノ」。枕元のコントローラーで起床時間を設定するそうだ。ちなみに、この美しい女性はもちろん乙女な人ではない

 気になる筆者は、さっそく彼女に感想を聞いてみたわけだが。

スギモト どうだった? やっぱ感情動いたか?

乙女 んー、ふかふかしてた。あと、この日はいてた靴下に穴が開いてて、横たわるときに恥ずかしかった!

 貴重な体験者からのリポートはこんな感じで終わってしまったので、ぜひ金持ちになって自分で試してみてやろうと思う。

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