「自社専用辞書」を共有、ジャストシステムが法人向け「ATOK CE」

法人向け日本語入力「ATOK CE」では、「現場でよく使われている単語を吸い上げ、企業内辞書を生成し、現場にフィードバックする」というサイクルを構築できるという。

» 2010年02月17日 18時19分 公開
[杉本吏,Business Media 誠]

 ジャストシステムは2月17日、法人向け日本語入力システム「ATOK CE for Windows」(以下「ATOK CE」)を発表した。3月12日発売で、価格は1ライセンス当たり9450円。動作環境はWindows XP/Vista/7、Server 2003/2008。

よく使われる単語を吸い上げ、共有辞書データベースを作成

植松繁ライセンス事業部長

 ATOK CEは、業務文書作成時の用事用語の統一や、入力ミスの軽減などに効果を発揮するという法人向けの日本語入力システム。製品名のCEはCorporate Editionを意味している。

 「これまでの法人向けATOKは、通常の(コンシューマー向けと同じ)ATOKに、企業専用のオプション辞書を付けて売っていただけだった」(ジャストシステムの植松繁ライセンス事業部長)。

 ATOK CEは、辞書一括配信システム「ATOK Business Solution」(ABS)や文書校正システム「Just Right!」などと組み合わせることで、「組織全体の文章品質と作業効率を向上する」ための入力・校正ソリューションとして提供していくという。

 ATOK CEでは、各端末で入力した言葉を収集し、企業内の共有辞書システムに自動送信する機能を搭載。管理者は収集した単語から辞書システムに登録すべき言葉を選び、現場の端末に一括配信できる。「現場でよく使われている単語を吸い上げ、企業内辞書を生成し、現場にフィードバックする」というサイクルを構築できるのが売りだ。

 このサイクルを通じて、企業内のローカル用語や業界用語を網羅したデータベースを作成し、「文書の入力、閲覧、校正、検索効率を向上できる」(植松氏)。

 ATOK CE導入による効果を可視化する機能も備えた。導入後の打鍵数や確定文字数などを集計し、ほかの日本語入力システム利用時と比べ、文書作成効率が改善したかを分析できる。また、管理者がプロパティやメニューをカスタマイズし、自社に不要なメニューをデフォルトで非表示にするといった操作も可能だ。このほか、Excelファイル形式で作成した辞書データを、入力変換時に参照できる「ATOKダイレクト for Excel」機能も搭載した。

ジャストシステム社内で、MS-IMEとATOK CEをそれぞれ9日間使用したデータ。ATOK利用時は入力効率が高く、確定文字数の合計や確定文字数に対する[Backspace]キー/[Delete]キーの利用割合も良い結果が出たという

Google日本語入力は「企業のニーズにはマッチしない」

 植松氏は、法人向けATOK製品の利用状況として「医療機関での利用」「新聞社や通信社での利用」「自治体での利用」の各事例を紹介。医療機関での電子カルテ入力や、新聞社の記者端末への導入、自治体の公文書作成時の利用などについて説明した。

 「これまでは、ジャストシステムと言えばコンシューマー向けのパッケージソフトを販売するメーカーというイメージが強かった」。今後はATOKを軸にした日本語処理分野、フィルタリングソフト「Tri-De」などを含むセキュリティ分野、業務アプリケーション分野、業種特化アプリケーション分野などを中心に、さらに法人向けの商品とサービスを強化していくという。

 また、話題の「Google日本語入力」については「コンシューマー分野は担当外なので分からないが、エンタープライズ分野に限って言えば、ほとんど意識していない」と回答。Googleの膨大な検索クエリを基にした辞書データは「企業内で使うにはノイズが多すぎる」とし、「法人向けはむしろ“閉じた”辞書データの方がニーズにマッチする」とATOK CEのメリットを強調した。

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