会社を立ち上げ、新しいオフィスを開くことになった。20年前なら電話回線を一本用意すれば十分だったが、インターネット時代のいま、最低限準備しなければならないネットワークインフラは何だろうか?
一昔前なら、「会社を立ち上げてオフィスを開設する際に、まず準備すべきものは何か」という質問をすると、10人中10人が「電話」と答えたはずです。
しかし現在では、事業の内容にもよりますが、インターネット接続のほうが重要だと考える人が増えてきました。電話はIP化して、インターネットサービスの一環として導入することもできる時代になりました。
新会社のオフィスを開設したら、IT環境を整えるために何をすべきでしょうか。まとめると、次のことが必要になるでしょう。
オフィスのインターネット接続といっても、インターネットを利用する人が少数であれば、家庭のインターネット接続と基本的には同じサービスを利用できます。ブロードバンド接続サービスが成熟している日本では、オフィスにおける数人のWebやメールの利用にも、家庭用のサービスは十分耐えられます。
インターネット接続プロバイダ(ISP)の選択は、おもに下に述べるようなサービスをどう使いたいかによって変わってくると思います。では、ISPが提供している「ビジネス向けのインターネット接続サービス」は、家庭向けと何が違うのでしょうか。
通常、ビジネス向けのブロードバンド接続サービスでは固定のグローバルIPアドレスが利用できる点に1つの違いがあります。家庭用のブロードバンド接続サービスでも、インターネットを利用する限りは通常1個のグローバルIPアドレスがブロードバンドルータに割り当てられます。
しかしこちらは固定ではなく、時々変わる可能性があります。家庭でインターネットを利用している読者の方はお分かりのように、固定のIPアドレスが割り当てられなくとも、Webブラウザやメールソフトの利用にはまったく支障ありません。
企業で固定IPアドレスが必要になるのは、オフィス内でDNS、メールサーバやWebサーバなど、インターネット経由でほかのコンピュータからアクセスされるサーバを運用する場合です。これらの、インターネット上で何らかのサーバ機能を果たすコンピュータは、人でいえば住所に当たるグローバルIPアドレスが決まっていないと、ほかのコンピュータからのアクセスができません。
企業向けのインターネット接続サービスは固定グローバルIPアドレスをいくつ利用できるかにより、月額利用料金が異なります。オフィス内でWebサーバや電子メールサーバを立てず、外部のサービスでまかなう場合なら、固定IPアドレスは要らないと考えがちですが、後述のようにDNSを自社で運用するのか、外部に依頼するのかという問題が残ります。自社で運用するなら固定グローバルIPアドレスが必要です。
家庭でインターネットを使う際、無線LANなどで複数のPCから利用できるようになっている家庭も多いことと思います。通常、家庭に設置するブロードバンドルータがこれに必要なさまざまな役割を果たしています。ブロードバンドルータが搭載している機能を考えると、LANをインターネットに接続するのに何が必要なのかよく分かります。
ブロードバンドルータには複数のLANポート(イーサネットポート)がついていて、有線のLANが使えたり、無線LANのアクセスポイント機能がついていたりすることが多いと思います。LANを利用する場合には、まずこのようにネットワークを集線する機能が必要です。
PCをつなげてすぐに、インターネットや家庭内のサーバ、プリンタなどにアクセスできるようにするために、家庭用のブロードバンドルータにはDHCPという機能がついています。これは接続されたPCに対して、IPアドレスを割り当てる機能です。
この場合に割り当てられるアドレスはプライベートIPアドレスというもので、各端末はこのIPアドレスで直接インターネットと通信することはできません。ブロードバンドルータはNAT(ネットワークアドレス変換)という機能を備えていて、LAN内の端末のプライベートIPアドレスを、自分に割り当てられているグローバルIPアドレスに変換することでインターネットとの通信を可能にしています。
ブロードバンドルータは基本的なIPフィルタリング機能を備えています。これはLAN内に対して特定のIP通信ができないようにブロックすることで、セキュリティを高める機能です。
しかしこれはあくまでも最低限の機能です。オフィスのように、社外に流出しては困る情報がある場合には、ファイアウォールをはじめとしたより本格的なセキュリティ機器が必要です。各PCにウイルス対策ソフトをインストールすることも必須です。
LANの規模が大きくなるほど、上記の機能をすべてブロードバンドルータ1台にまかせるわけにいかなくなってきます。LANスイッチやDHCPサーバ、ファイアウォール/UTMなどを導入していく必要があります。
少人数なら、一般加入電話サービスに、家庭用と同じ電話機を使っても十分事足ります。家庭用電話機でも子機を複数台追加できるものがあり、こうした電話機には保留や転送の機能がついていますので、1つの電話番号で受けた電話をほかの人に回すなどが簡単にできます。
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