リコーは、デジタル複合機「imagio MPシリーズ」を活用するためのソリューション「App2Me(アップトゥミー)」を開始。PCから複合機の機能を利用するためのウィジェットを公開した。
プリンタ、ファクス、コピー、スキャナ――複数の機能が1つになった複合機は便利だが、すべての機能を使いこなせている人は少ない。そんな多機能な複合機を使いこなすためのウィジェットをリコーが無償公開した。
このウィジェットは、デジタル複合機「imagio MPシリーズ」を活用するためのソリューション「App2Me(アップトゥミー)」の第1弾。いずれもApp2Me専用サイトからPCにダウンロードして利用し、複合機(MFP)のスキャン、プリントなどの機能を簡単に操作できる。
ウィジェット名 | 内容 |
---|---|
Scan2Me plus(スキャントゥミー プラス) | PCであらかじめ宛先(フォルダ、メールアドレス)を設定できるウィジェット |
Printin'4Me plus(プリンティングフォーミー プラス) | 対応するMFPでオンデマンド印刷とロケーションフリー印刷を同時にできるウィジェット |
ecoフレンドリープリント | TCO削減に有効な「両面集約印刷」「中とじ印刷」が、プリンタドライバで設定済みの状態で使用できるウィジェット |
中とじ製本プリント | |
プリンターモニター | トナーや紙など、MFPの状態を常に確認できるウィジェット |
ONE Sheet(ワンシート) | PC内のデータやWebサイトの情報を切り抜いて、1枚の紙にまとめられるウィジェット。2010年春提供予定 |
例えばPrintin'4me plusは仮想プリンタドライバとして動作。ウィジェットを動作させて、通常のプリントアウトを行なうといったんウィジェット上で保留。対応MFPの操作画面から自分のPCを選択してウィジェット上のプリントアウトジョブを実行する。対応するMFPであればどこでもプリントアウトできるロケーションフリー印刷が可能だ。出力先のMFPが込んでいるときに、ほかのMFPから出力できるというわけだ。
特定のMFPのみに捕われないだけでなく、プリントジョブいったん保留できるので、ミスプリントの印刷も防げる。複合機の前でジョブの最終的な実行を決めるので、印刷した機密情報の放置なども抑制できる。こうした機能は従来、専用サーバやICカード認証が必要だった。リコーの大田哲史氏(グローバルマーケティング本部商品マーケティングセンター)によれば、「大手の導入は進んでいたが、中小にはコストの障壁があった。ICカードによる認証システムは高価で導入できないという中小企業向けの簡易的な認証システムとしても利用可能だ」という。
2010年春に提供予定だというONE Sheetは、複数の画像データを1枚の印刷用紙に自動レイアウト、PDFファイルに変換する。切り抜いた画像をウィジェットにドラッグ&ドロップすると自動的に画像を配置。レイアウトパターンも何種類か用意し、クリック1つで変更できる。
なおこれらのウィジェットを利用するには「Yahoo!ウィジェットエンジン」か「Googleデスクトップ」が必要(Windows XP/Vistaに対応)。またPC用の「App2Me Manager」とMFP用の「App2Me Provider」という2つのソフトをあらかじめダウンロードしておく必要がある。いずれも無償だが、PCのApp2Me ManagerとMFPの通信を行い、MFPの操作パネルにウィジェットを表示させるApp2Me Providerを利用するには、リコーの「Remote Install Manager」(無償)と「Imagio VMカード」(バージョン4.19以上、価格2万1000円)が必要。対応する複合機は2007年秋以降に発売したリコーの複合機(imagio MP C5000/C4000/C3300/C2800シリーズ)。
リコーの武田健一氏(グローバルマーケティング本部商品マーケティングセンター)によると、「さまざまな機能をMFPに搭載してきたが、それらの機能の存在がなかなか実際の利用者に伝わっていない。たとえ機能を知っていても、設定が難しいなどといった声もある」という。「例えばスキャナだ。スキャナの利用頻度が高い利用者は満足度も高まる傾向がある。営業マンは担当者や決定権者には機能をアピールするが、担当者からは利用者に周知できていない。いざ使いたくても設定が分からない」。つまり「周知の壁」「設定の壁」があるというわけだ。
今回のウィジェットは、こうした周知・設定の壁を越えるべく開発したという。「これまでは事前にメールアドレスを設定したり、共有アドレスを設定したりと、小難しい設定が必要だった。App2Meは最初にインストールが必要だが、いつでも好きなときに好きな機能をダウンロードできる。また、スキャナなどの設定は通常複合機の操作パネルで行っていたが、こうした設定もPCでゆっくり焦らずできるのがメリットだ」(大田氏)
今回のウィジェットによるPCとの連係は、あくまで第1ステップ。第2ステップではシステムと連係し、2010年内には第3ステップとしてクラウド連係を視野に入れている。もちろん、iPhoneなどのスマートフォンとの連係も開発が進んでいるという。
「これまで複合機を利用したソリューションを提供しようとすると、複合機側の開発が必要だった。オペレーションパネルの設計や実機での検証など、リコー以外のサードパーティーが開発するには障壁が高かった」(大田氏)。今回のウィジェットについては開発者向けにAPIも公開する。今後はファクス系機能や簡易的なOCR機能を活用するウィジェットを予定。また、「第1ステップ1は、本来MFPが持っている機能をより使いこなすもの。第2ステップは、もっと深い機能を提供する。Windowsサイドバーガジェットにも対応を検討している」
リコーによると、国内複合機・複写機市場は2008年秋のサブプライム危機以降出荷台数を大幅に減らしている。2009年第3四半期は前年同期比で82%まで縮小した。MFPの需要が落ち込み、「とりわけカラー出力の抑制も顕著」(武田氏)の中、同社が活路を見いだしたのは、ESA(Embedded Software Architecture)やICカードなどの機能拡張オプション対応のMFP。こうしたMFPは2008年度が前年比245%の増加。2009年度も125%の増加を見込んでいる。
だがICカードのような高付加価値の機能はMFPそのものに機能を追加したり、連係するサーバに機能を実装させたりする必要があったのに対して、今回のApp2MeはPCや携帯電話など個人で利用する機器との連係がメイン。ソフトウェアとして簡単に利用できるため、リコーでは「ビジネス領域を拡大できる」としている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.