『最底辺の10億人』――アフリカが貧困から抜け出せない4つの理由藤沢烈の3秒で読めるブックレビュー

中国・インドなどかつての発展途上国が世界経済をリードする時代、アフリカは貧困から抜け出せない。『最底辺の10億人』ではアフリカを取り巻く4つの罠を指摘する。

» 2010年01月22日 13時19分 公開
[藤沢烈,Business Media 誠]
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 中国・インドなどかつての発展途上国が世界経済をリードする時代。その一方、最貧国を抜け出せない国々がある。アフリカである。そこに住む10億人がなぜ貧困に追いやられているかを分析し、その対策をまとめた1冊。著者は世界銀行出身のアフリカ経済の世界的権威だ。

アフリカを取り巻く4つの罠(わな)

 著者は4つの罠(わな)を指摘する。

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  1. 紛争の罠。内戦による損失は600億ドルを超すという。ソマリアやコンゴ共和国など、内戦とクーデターの繰り返しにより、平和時の経済成長を消してしまっている。一時的に停戦しても、武器は残るから治安は劣化したままだ。
  2. 天然資源の罠。ナイジェリアやセネガルなど、豊かな資源によって安易に利益を得られることで、むしろ経済は停滞するという。コーヒーブーム時のケニアでは国家予算を何倍も振る舞うが、その後の暴落時に支出を減らせなかった。
  3. 内陸国の罠。中央アフリカ・ウガンダなど、資源のない内陸国は隣国にチャンスがない限り、停滞を余儀なくされる。アフリカの人口の30%は内陸国に住んでいる。
  4. ガバナンス(統治)の罠。ジンバブエ、マラウィなどは国の政策が最低レベルにあったため、低所得を脱することができなかった。

援助をいかに行うべきか

 4つの罠からアフリカを離すためには、賢く援助する必要があるという。闇雲な援助は武器となって紛争を悪化させることもある。技術支援を行い、産業が生まれるためのリスクマネーを供給し、経済成長につなげる。そのことで、4つの罠を和らげることができる。

 技術力を持ち、武器を輸出することのない日本が、アフリカに果たせる役割は、きっと大きいはずだ。

著者紹介 藤沢烈(ふじさわ・れつ)

 RCF代表取締役。一橋大学卒業後、バー経営、マッキンゼーを経て独立。「100年続く事業を創る」をテーマに講演・コンサルティング活動に従事。創業前の若者に1億円投資するスキームを企画運営し、話題を呼ぶ。「雇われ経営参謀」として500人以上の経営・企業相談を受けてきた。ブログに毎日書評を掲載し、現在1200冊超。


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