しっくりこないのはなぜ? 今こそ手帳との相性を考える時期2009手帳特集“超”入門編

1月もそろそろ終わりである。2010年版手帳がしっくりなじんだころだろうか。それとも使いにくさに悩んでいるだろうか。

» 2010年01月21日 19時27分 公開
[舘神龍彦,Business Media 誠]
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 1月もそろそろ終わりである。2010年版手帳がしっくりなじんだころだろうか。それとも使いにくさに悩んでいるだろうか。「変えて(買って)よかった」「いまひとつしっくりこない」など感想もそれぞれだろう。こういう実感にはそれぞれ理由がある。

 それは、相性だ――。

しっくり来ない手帳の原因とは?

 前回は“情報生態系”という考え方の枠組みを利用して、自分なりの手帳システムの組み立てについて触れた。また、2種類の手帳を例にとって既製品の手帳における情報生態系の実際を紹介した。

 そして、自分ルールの組み立て方や、手帳術のインストール方法など、手帳はハードウェアだけのことを指すのではなく、とくに現時点においては使い方と利用習慣がセットになった、いわば“習慣として身につける道具”であることに触れたのである。

 相性は、手帳を習慣にする(=ずっと使う)ときに、自分ルールとか情報生態系の考え方などとは違った観点で大切なポイントだ。手にして触れて記入して見直す。ある意味で服装以上に肉体にフィットした手帳にとって実はもっとも重視すべきポイントかもしれない。

 手帳に限らないが、相性は無視できない。そして道具ならば自分にフィットしたものを使えばそれだけで心地よいはずだ。相性は、人によって異なる。今回は、それを見極めるためのガイドとして、いくつかの相性ポイントを考えてみたい。

サイズも相性である

文庫本サイズといえば「ほぼ日手帳」(写真は「ほぼ日ストア」より。2010年版)

 手帳の大きさは、最近では、記入スペースの量やA4のプリントアウトとの親和性などで語られることが多い。なので、サイズも実は相性ではないかと考える。しっくりくる判型は、手帳に限らずあるものだ。

 例えば文庫本サイズ(A6)の手帳はここ数年で人気が定着している感がある。これは、ほぼ日手帳がその先鞭(せんべん)を付けたと言われている(さらにその先駆として、筑摩文庫、角川書店などの文庫手帳があった)が、文庫本というサイズが本として多くの人になじみがあったことが理由として大きい。

 そこにスケジュール記入欄なり罫線なりの記入ページが含まれ、紙質が見直され、カバーがついたことで手帳の判型としても使えることが発見されたと言うこともできるだろう。

 また50代以上の人でずっと手帳を使ってきた人ならば、幅が95ミリ前後のスリムタイプを好むはずだ。能率手帳(日本能率協会マネジメントセンター)や地方自治体の年玉手帳に多い。国会手帖もこのサイズだ。幅が95ミリ程度だと、ドレスシャツのポケットやスーツの内ポケットにすっと入る。常に身につけていつでも参照できるのは、手帳の絶対条件ではないかもしれないが、なれると便利だ。

 このサイズと比較すると前述の文庫サイズの場合、幅は110ミリ前後であり、カバーがつくともっと大きくなる。わずか1センチ程度の差が、使い勝手の決定的な違いにつながるわけだ。

システム手帳は好き嫌いが分かれる

 手帳のとじ方で分類すると、とじ手帳、システム手帳、モジュール型手帳の3タイプ。市販品の9割を占めるとじ手帳に抵抗を感じる人は少ないだろう。カバーの内側に2冊以上の冊子を内蔵したモジュール型は、構造的にはとじ手帳と大差ない。

 問題はシステム手帳だ。

 システム手帳は好き嫌いが分かれる。自作リフィルや収納力、カスタマイズの自由度などは確かに魅力だ。だがリングに手があたるのになじめない人は少なくなさそうだ。これもまた好みの問題なので仕方がない。ちなみに、左側のページに記入するときにリングに手があたる問題は、スケジュール系のリフィルを後ろのほうに持ってくること。具体的な解決策は拙著『システム手帳の極意』(技術評論社)に記した。興味がある人は参考にしてほしい。

 システム手帳はリングによって、ほかの手帳にはないカスタマイズの幅を実現している。その一方でこれがほかの手帳にはない違和感を生んでいることも事実。スケジュール専用のとじ手帳と組み合わせて「メモ帳+収納ポーチ」として使うなど、割り切った併用方法を編み出すのも1つの手だろう。

堅実さかファッション性か

 国内の大手手帳メーカーの製品は、同時に会社が社員に支給する年玉手帳のベース的な役割も担っている。見返しや便覧ページを法人向けに編集したものに差し替え、社名や社訓などを表紙や内部に入れることで特定の会社向けに供されることがある。

 言いかえればこれらメーカーの手帳は「会社っぽい」のだ。職種を選ばずにビジネスに使える代わりに、しゃれた感じに乏しい。機能的には非の打ち所がないのにどこか杓子定規で、面白味に欠ける。

 大手メーカーの製品ラインアップには、こういう伝統的な製品とは別に、女性ユーザーにフォーカスを合わせたものや、ファッション性を前面に打ち出したものが用意されているのは、その辺を踏まえてのことだ。

 独自のテイストを持つのは、有名人プロデュースの各種手帳も同様だ。独自の判型や欄外に書かれたオリジナルの名言(または単なる文言)などは、その有名人にシンパシーを感じていれば深くしみこんでくるだろう。だが、記入欄のパターンとか便覧の内容が便利だからとその手帳を選んだ場合には、記入欄以外のこういう文言が目障りに感じるかもしれない。

 最近人気の輸入品テイストの手帳も好みが分かれる部分があるだろう。A5版やB5版のこれらの手帳は、たいていの場合、曜日表記が英文字で英仏独伊の4カ国語で表示がある。その代わり、漢字による曜日表記がない。週の何日目かは見れば分かるから、曜日は直感的に把握できるかもしれない。それでも漢字での表記がないのは不便と感じる人も多いだろう。

 記入ページの紙質や色なども重要だ。おおざっぱに分類すると、紙が白いかクリーム色か、また罫線の有無と濃さ、さらに横罫なのか方眼罫なのかも手帳で異なる。そして例えば、メモ欄が無地の手帳から方眼の手帳に変えただけでも違和感がある。罫の太さや間隔が変わってもそれは同様だ。

使い続けるために乗り換えも視野に入れる

 手帳をずっと使っていたものから違うものに変えた場合に気がつくのが、こうした“相性問題”だ。解決策は2つある。使い続けるか乗り換えるかだ。

 後者の場合、2月はまたとないチャンス。2月末から文具店・雑貨店の店頭に並ぶ4月始まりの手帳に乗り換えてしまうのである。今使っている手帳のどこが気に入っており、どこが我慢ならないのか、そのポイントをきっちり列挙し、条件に合致するものを購入しよう。

 手帳は日常的に使うものだ。また簡単に買い換えるものでもないと思われているふしがある。実際手帳が文具店・雑貨店の店頭で手に入る時期は限られている。だが、手帳を買い換えることと手帳を使い続けることは矛盾しない。。

 大切なのは、どんな製品でもいいから手帳を使い続けることだ。そして、もし乗り換えるのなら、4月はじまりの手帳が店頭に並ぶこれからの時期がちょうどいいタイミングなのである。

 手帳を使い続けるのなら、まず自分ルールを確立し、各種手帳術を無理なく取り入れる。さらに、相性が気になったら乗り換えも視野に入れること。手帳は、購入できる時期が限られている。もし今使っている手帳にどこか違和感を感じているのなら、乗り換えの可能性も含めて早めに検討しよう。4月始まりの手帳に乗り換えるなら、今はまたとないチャンスなのだから。

著者紹介 舘神龍彦(たてがみ・たつひこ)

 アスキー勤務を経て独立。手帳やPCに関する豊富な知識を生かし、執筆・講演活動を行う。手帳オフ会や「手帳の学校」も主宰。主な著書に『手帳進化論』(PHP研究所)『くらべて選ぶ手帳の図鑑』(えい出版社)『システム手帳新入門!』(岩波書店)『システム手帳の極意』(技術評論社)『パソコンでムダに忙しくならない50の方法』(岩波書店)など。


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