「電子書籍でしか味わえない読書体験」に皆が夢中になるそのとき、「電子書籍」と「書籍」は、まったく別のメディアとして認識されているのかもしれない。
2010年01月12日〜2010年01月18日
先週のBiz.IDで最も読まれた記事は「職場でのネット利用、4割が『ブラウザの履歴消したことある』」。後から消すくらいなら、最初から履歴を残さないシークレットモードでブラウジングしたらどうですか――という記事を以前書いた。しかし、シークレットモードだとブラウザの拡張機能が無効になってしまうので、やはり「履歴消し」が便利な場合もあるのかも、と最近は思い直していたりもする。
このところ、電子書籍界隈が盛り上がっている。AppleのタブレットPCに関する噂は連日のように飛び込んでくるし、市場拡大のけん引役であるAmazonのKindleも、負けじと「印税7割」や「コンテンツ開発キット」を発表して存在感を示している。
アート・ユニット「明和電機」の土佐信道氏は、ブログエントリー「キンドルに負けない、『本』の作り方」で、Twitterで募集したという「(紙の)本でしかできないこと」を独特のタッチでイラストに起こしている(ネタ系のアイデアがほとんどなのだが、「ブックオフに出せない」はちょっと考えさせられますな)。
また、TechWaveの湯川鶴章氏は、Appleタブレットが「読書を超える『超読書』とでも呼ぶべきコンテンツ消費の形を提案してくるのでは」とし、Webの特性を生かした新しい読書の形として、
といった例を挙げた。
筆者も読書好きとして、ぜひとも「電子書籍でしか実現できない読書体験」というのを味わってみたい。ということで、「普段の読書でどんな点に不満を感じているか」から逆算して考えてみたところ、1つ思いついたアイデアがある。名付けて「終わりの見えない読書」(なんだかネガティブっぽい響きだが)というやつだ。
紙の書籍では、デジタルデータと違って物質的な縛りがある以上、どうしても「残りの未読ページはどれくらいか」という情報が読書そのものに組み込まれてしまう。最高に面白いミステリー小説を読みながら、「残り50ページくらいだからそろそろ犯人が分かるはずだよな……」などという予測を立ててしまうと、一気に気持ちが冷めてしまったりするものだ。
その点、電子書籍は工夫次第で完全に「物語の長さ」の情報を隠し通せる。「この話、一体どう転がっていくんだ……!」と手に汗を握りながら読み進めていたら、次のページでいきなり完結していてびっくり(拍子抜け)したり、目次を信用して全10章構成と思っていたら、意表をついて11章以降があったり――と、紙ではできないような仕掛けがいろいろと打てそうな気がするのだ。
電子書籍ならではの仕掛けは、これから次々に発明されていくだろう。湯川氏の言う「超読書」体験に皆が夢中になるそのとき、「電子書籍」と「書籍」は、まったく別のメディアとして認識されているのかもしれない。
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