ユニット営業の落とし穴――似たもの同士では「コンビ」にならない?「ユニット式営業組織」のススメ

2人で客先を訪問することを基本にする「ユニット営業」の効果は、私自身が試してみて予想外の成果に驚いたのですが、世の中いいことづくめというのはありえません。役割分担で力を発揮するユニット営業ですが、うまく機能しないときもあります。それは……。

» 2010年01月15日 15時00分 公開
[吉見範一,Business Media 誠]

まだ1人で営業に行っているんですか? 〜2人で始める「ユニット式営業組織」のススメ〜

 ほとんどの会社で「営業」は単独行動が基本になっています。しかし著者はあるとき、2人で営業に行くほうが、はるかに契約を取りやすいことに気がつきました。それは決して偶然ではなく、現代の「営業」現場の持つ本質的な理由がそこにはあったのです。


 こんにちは。営業一筋で35年やってきたくせに、今では「中小企業のための、営業を不要にする営業コンサルタント」という矛盾した自己紹介が気に入っている吉見範一です。

 すいません、新年早々、大ポカをやらかしてしまいました!

 この連載の前回でお知らせした「333(トリプルスリー)営業塾」ですが、なんと記事公開の時点ではリニューアル準備中のため受付停止中だったんです。せっかく見に来てくれたのに空振りさせてしまいましてごめんなさい。今はちゃんと全12回の連続メール講座、登録可能になってますので、よろしくお願いします!

新規顧客開拓をしたいけれどどうしていいかよく分からない中小企業経営者のための

「3時間で打ち手が分かり、3週間で手応えがあり、3カ月で成果が出る」

333営業塾!

連続メール講座全12回(無料)受付中!


 さてそれでは気を取り直して本題といきましょう。前回まで、6話にわたってユニット営業のメリットを熱く力説してきたわけですが……え? 誰ですか「暑苦しくの間違いだろう」なんて言ってるのは! これでも一部の若い女性には人気があるんですから、いやホント。

 それはそうと先日ある方にこんな質問をもらったんです。

 ユニット営業の落とし穴というか、うまくいかないパターンってありますか?

 いーい質問ですね! そうですよね、世の中いいことづくめの話なんてそうそうないわけで、どんな高性能なひみつ道具も、弱点を知っておかないと、とんでもない落とし穴にはまってしまいますよね。

 というわけでユニット営業の落とし穴ですが……実はお答えしようとしてちょっと考え込みました。というのも、あんまりダメだった記憶がないんです。なにしろ良かったことだけしか覚えようとしない能天気な性格なもので、あらためてダメ事例を挙げようとするとすぐには出てこなかったんです。

 でもそこは営業一筋35年、営業を不要にする営業コンサルタントの沽券(こけん)にかけて負けられません!

 そういえば、ありました。

 「似たもの同士を組ませてはいけない」


 これが一番のダメパターンですね。

 考えてみれば当たり前の話です。思えば当連載の第1回でも、第3回第4回でも「役割分担」の重要さについて書いていましたが、

 「役割分担をするなら、得意技は違っていた方がいい」


 じゃないですか。漫才コンビでもたいていボケとツッコミが分かれているから面白いので、ボケ同士ツッコミ同士じゃ漫才になりません。

 そもそも私が最初にユニット営業の効果に気がついた第1話の事例を思い出してみても、あのとき営業に行くのがとても楽しかった理由の1つには、「自分の苦手なことをしなくていい」ということもあったんです。

 例えば、私は何しろ事務的な仕事が苦手なので、営業に行くと同行するパートナーにメモをとってもらい、自分はヒアリングに集中して、会社に提出する日報などもパートナーに書いてもらうというパターンが多かったものです。

 これがもし「吉見範一が2人になってユニットを組んだら」というありえないシーンを想像したら、とてもじゃないけどやってられません。自慢じゃないけど私は自分のコピーをパートナーにして営業に出かける気にはなれませんね。そのぐらい、この吉見って男はパートナーとしては当てにならないヤツなんです。なんて、自虐ギャグっぽくなってきましたが、真面目な話、私が営業所長をしていた時も、そういえば似たもの同士は組まないように無意識のうちに気を使っていましたね。

 逆に、似たもの同士を組ませて失敗してしまったこともありました。ある営業所でそこそこの成績をあげていた2人にユニットを組ませてみたところ、ぜんぜん売れなくなってしまったことがあったんです。

 それまでの私の経験上、ユニットにすればそれなりの効果があるのは分かっていたので、「そこそこの成績」が「上々の成績」になることを期待してちょっと無理を言って組ませてみたのですが、とたんにまったく売れなくなりました。ど、どうしよう、俺ナミダ目、な展開ですよね。どちらも個人ではそれなりに売れていたのにユニットにするとダメでした。

 このときは両方とも「物怖じせずによくしゃべる、ちょっと強引な性格」の2人でした。普通の人がイメージする典型的な営業マンタイプだと思います。このタイプの2人を組ませたときに何が起こったかというと、お客さんの前でお互いに競いあうようにして説明合戦をしちゃってたんですね。やはり少なくとも1人はじっくりサポートに徹するようなタイプでなければいけないのです。

 この「似たもの同士はダメ」ということは、前回の「たった1人で『思考のデフレスパイラル』から抜けられますか?」という観点からも言えます。

 前回では、「1人では思考の悪循環にハマったときになかなか抜けられない。同じ現場を見ているパートナーの視点があると、事態を客観視する意識をキープできる」ということを書きました。これも、パートナーが「似たもの」だったら同じところで同じように思考の悪循環にハマりやすく、2人でデフレのワナに落ちかねません。せっかくユニットを組んでも「だからウチの会社はダメなんだ」と2人で愚痴をこぼしあうだけになってしまったら何の意味もないですよね。

 そんなわけで、似たもの同士で組んではいけないのです。2人で客先を訪問するユニット営業を実践するときは、くれぐれもこのことにはご注意ください!

著者紹介 吉見範一(よしみ のりかず)

 初対面の人を前にすると極度に緊張して全身に汗をかくほどのあがり症で上手く話せないなど営業には不向きな性格で、営業成績は最下位だった。だがツールを多用する独自の方法を発見し、初年度から全国でトップクラスの成績を収める。現在、キカクウル戦略で「営業を不要にする」営業コンサルタントとして全国の講演で活躍中。著書に『「売れる営業」のカバンの中身が見たい!』がある。

キカクウル戦略とは?

 私が提唱している「聞いて・書いて・売る」というコンセプトから生まれた「営業不要の販売戦略」です。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ